『救世主』と相棒の危機、のはずだった。
「知ってたよ」
そう言えば、目の前の見慣れた顔が、驚愕の色に染まった。
……一瞬前までの、痛々しいまでに必死な、全ての感情を塗り込めるような表情よりは、ずっといい。
「……知って、いた?」
「うん」
何でもないことのように答える。実際、私にとっては、それは当たり前の事実だった。『知っている』ことを当人に伝えなかっただけで。
「いつ、から」
「ずっと前。……とりあえずさ、シリアス話には状況が向いてるけど向かないから、この腐れ外道倒しちゃってからにしない?」
仲間割れを狙って衝撃の事実を披露したはずなのに、衝撃を受けるはずの私が平然としてるから戸惑ってるらしい、腐りきった性根の外道魔法士を指す。指すついでに結界魔法を発動させて身動きできないよう閉じ込めて、プラス中の空気を高山レベルまで薄めてみた。酸素欠乏症だったかなんだったか、とりあえず無力化出来るんじゃないかと思って。
しばらく結界を破ろうと奮闘していた外道は、だんだん動きが鈍くなって、最終的に気絶(?)した。死なせるつもりはないので拘束魔法と眠りの魔法をかけてから結界を解く。
「ごめんうっかりひとりでやっちゃった」
「え、え……?」
混乱極まってる感じの相棒に、まあ今までの猫被ってた私なら、この腐れ外道もひとりじゃ倒せなかったもんなぁ、と納得する。
「で、ええと――何か聞きたいことある?」
話を戻そうと思ったのものの、ずっと前から知ってたっていうのは伝えたので他に何を言えばいいやらわからなかった。なので相棒に振ってみる。
「何か、って、――何から訊けばいいのか……」
「適当な順番で訊いてくれていいよ。答えられることなら答えるし」
「答えられないこともあるってことだろ、それ」
「当たり前じゃん。全部答えるとかそんな無責任発言はできないよ。知らないことだったら答えようもないし」
少し調子が戻ってきたらしい相棒に密かにほっとしつつ、「それで?」と促す。
「……まず、君、俺が思惑があって近づいたの知ってたの?」
「うん」
「それなのに何で受け入れたの?」
「受け入れない理由なかったし」
「良いように利用されたの、わかってるんだよね?」
「そこまで馬鹿じゃないよ」
頭が痛いと言わんばかりに相棒がこめかみを抑えた。そんなリアクションされるとちょっと傷つく。
「俺、善人じゃないよ」
「どっちかっていうと悪党の側だよね」
「君に情とか、ないし」
「へえ、そうなんだ」
多分それ自覚してないだけでわりと情うつってるよ、とは言わないであげておいた。武士(じゃないけど)の情けだ。
「さっきアイツ――君曰くの『腐れ外道』が言ったこと、知ってたなら。何で協力してたの?」
「別に私に不利な話でも無かったし。最終的にどうするかは様子見してから決めようと思って」
流石に世界を滅ぼすお手伝いとかはできないけど、ある程度は利用されてもいいかなと思っていた。
「……お人好しっていうか、おおらかすぎるっていうか……」
深くため息をついて頭を抱えた相棒に、心の中でそっと、お人好しは君の方だよ、と呟く。
『救世主』の力があるだけの小娘を利用しようとして良心の呵責だかなんだかでしきれなくて、最終的にかばって死んだ――『前』の君の方がよほど、お人好しだった。
そんなどうでもいい私の事情は、伝えないけれど。
罪滅ぼしに利用されてもいいかなとは、まだ思ってたりすることは、違う形で伝えようかなぁ、とぼんやり思った。
お題:暴かれた使命 制限時間:30分 で挑戦したもの。微妙に加筆修正済み。
親友の思惑に焦点当ててもっとお題に沿わせた感じにする予定が、気付いたら何かズレてたんですがそのままです。
つくづくループとか既定事実を『知っている』とかのイレギュラーな主人公(?)設定が好きだな、としみじみしました。
眠ってる持ちネタとかぶらないように、と思いながら書いてたら全体的にふわっとしすぎた自覚はあります……。




