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第1章 - パート2:怪物と共に訪れる崩壊(カタストロフ)

観測室――事件発生の直前

「……だいぶ小さくなりましたね。直径は、約30キロほどでしょうか」

静かに報告したのは観測員の一人。

だが、その落ち着いた声とは裏腹に、室内の空気は張り詰めていた。

「でも……見た目より、こっちの方が何倍も恐ろしい気がするんです、エリス主任」

副局長のエイラ・アテナティアス博士が低く呟いた。

主任のエリスは無言でスクリーンを見つめている。

その瞳に映るのは、ただ一つ――地球に迫る謎の白い球体。

次の瞬間、施設全体が激しく揺れ始めた。

棚が軋み、ファイルが床に散らばる。まるで大地そのものが呻くように。

……そして、揺れが収まる。

同時に、センチネル・ドームが自動で開いた。

「主任、中国支部からスクリーン共有の要請です!」

「繋いで」

スクリーンに映し出されたその映像を見た瞬間――

室内の誰もが言葉を失った。

そこには、火山灰の巨大な柱がいくつも立ち上り、真紅の溶岩が地表を這っていた。

そして太平洋を取り囲むように出現した、“炎の龍”――。

それはまるで、地獄そのものが地上へと這い上がってきたかのようだった。

三ヶ月前――GASA中国支部・ジンウェイ・ノード

 重苦しい沈黙が、会議室全体を支配していた。

 ここはGASAの中国支部――ジンウェイ・ノード。責任者の許寒峰が、プロジェクターに映し出された火山活動の映像を見つめている。

「最新の観測と分析によると、複数の火山が異常活性化しています。特に太平洋火山帯の状態は極めて危険です」

 技術主任が、抑えた声で報告する。

 映像には、脈打つように赤く点滅する火山群が表示されていた。最悪の場合、450を超える火山が連鎖的に噴火する可能性がある――。

「つまり、手を打たなければ、人類の未来はないということですね」

 別の職員がつぶやいた。

「止めなくてはならない。そうでしょう、局長?」

 そう言って、全員の視線が通信モニターへと向けられる。

 そこには、GASA本部から中継で接続されたエリス・マーロウ局長の姿があった。冷静なまなざしが、強く画面越しに突き刺さる。

「……許可します。すぐに行動を開始して」

 その言葉とともに、作戦は始動した。

AI無人機部隊、展開準備

 滑走路には、大型の無人機が列を成して並んでいた。いずれもAIによる完全自律型で、空気中の有毒粒子を吸収し、ミニブラックホールによって火山灰を除去するよう設計されている。

 同時に、避難命令が発令された。

 対象地域は日本、フィリピン、インドネシア、ニュージーランド、アラスカ、アメリカ西海岸、チリ、ペルー。住民たちは国外、もしくは安全地域への避難を余儀なくされた。

 GASA日本支部も本部への統合を決定。主要拠点には最新の耐震構造が導入され、かつてない規模の準備が進められていく。

現在――監視室

 白く輝く球体が、ゆっくりと地球へと近づいていた。

 その距離、およそ地表から100キロメートル。突如、球体は空中で停止し、強烈な磁場を放出。観測モニターが一瞬だけ乱れる。

「何かが……開いたぞ」

 球体の一部が割れ、そこから三つの小型球体が飛び出した。

 その数、合計十八。

「未確認球体、十八個を検出」

 しかし次の瞬間、それらは視界から完全に消失する。

「……消えた?」

「可視領域から外れただけかもしれない。つまり、光学迷彩だ」

 ミズキ博士の冷静な声が響く。

 十八個の球体が、すでにこの星の内部へ侵入していた。

警告――地球内部より異常エネルギー検出

「ビーッ、ビーッ!」

 警報音が鳴り響く。AIシステムが、地球内部から発生している未知のエネルギーを検出したのだ。

 地図に浮かび上がる複数のポイント――

 それらは、すべて太古の遺跡であった。

エジプト・ギザの大ピラミッド

インド・カイラーサ寺院

チリ・イースター島

ロシア・ボリショイ・ザヤツキー島の石の迷宮

イギリス・ストーンヘンジ

 ドローンが現地へ向かう。リアルタイムで送られてくる映像が、さらに状況の異常性を物語っていた。

 ストーンヘンジの巨石がゆっくりと元の配置に戻る。

 イースター島の石像の目が青白く輝き、まるで眠りから覚めたかのように見開かれる。

 カイラーサ寺院では、神殿の中心にある円盤が静かに回転していた。

 そして、現れた。

 遺跡の上空に突如として現れる三つの球体。それぞれが停止した瞬間、その中から「何か」が放たれた。

 次の瞬間、すべての映像が乱れ、白と黒のノイズが監視モニターを覆いつくす。

「信号が……途切れました。映像、完全に消失」

「すぐに再接続を――!」

 かろうじて映った、最後のフレーム。

「拡大して」

 AIが画像解析と補正を行い、輪郭を明瞭化していく。

 映ったのは、黒い影。輪郭があいまいで、かろうじて生物のように見えるそれは、確かに“存在していた”。

「……この情報を、各国と軍に即座に送って」

 いつもは毅然としていたエリスの声が、かすかに震えた。

「了解!」

 誰もが声をそろえて応じる。

 監視室の空気は張り詰めていた。

 誰もがモニターを見つめていたが、その瞳の奥では、それぞれが思いを巡らせていた。

 家族のこと、友のこと、大切な人のこと――

 彼らは、果たして無事なのだろうか。

グラハム兄妹サイド

「ちっ、痛いな。」

キラは眉をひそめ、自分の腕から流れる赤い血を見つめた。

「走れ!」

カイが叫ぶ。

そして彼は妹を抱きかかえ、そのまま走り出した。

背後では、怪物が壁を破壊しながら狂ったように追いかけてくる。

それは未確認の生物だった。黒紫色に覆われ、四本の脚と長い首を持ち、一つ目と大きな口、そして長くねじれた舌を備えている。

階段を一気に駆け下り、一階のロビーに足を踏み入れた瞬間、左側から別の怪物が猛スピードで突っ込んでくる。さっきのとは見た目が少し違う。

その怪物は二人を見つけると、すぐさま跳びかかってきた。

とっさにカイは体を低くし、そのまま床を滑るようにして攻撃をかわした。

二体の怪物はそのままお互いにぶつかり合う。

しばらく走り続け、二人はD棟の管理棟で一息ついた。

「腕、見せて。」

「うん。」

キラの腕には、深く刻まれた引っかき傷がいくつもあり、まだ血がにじんでいる。

カイはすぐに消毒液を取り出し、傷口を丁寧に洗い流す。最後にガーゼでしっかりと巻いた。

治療中、キラの表情はくるくると変わる。眉をひそめ、涙ぐみ、そして最後にはようやく力が抜けた。

「よし、終わった。よくやった」カイは妹の頭を優しく撫でながら言った。

「ふふ」

そのとき、カイの携帯が光り、画面には『未知の生物が人間を襲う危険性あり。安全に十分注意すること』という警報が表示されていた。

「にいちゃん、さっき気づいたんだけど、あの怪物の体に光ってる何かがあったよ。」

「間違いなくあれが弱点だ。」

「そういえば、このD棟の地下に、あのすごい武器が置いてあったよね?」

「あれか?」

「うん、それそれ、ふふっ。」

二人は顔を見合わせてニヤリと笑った。

地下に降りると、目の前に大きな扉が立ちはだかる。

横には認証用のスキャナーがあり、許可された者しか入れない仕組みになっている。

「鍵、かかってるな。」カイが言う。

「は?うち、ここの大株主だけど?」キラが軽く言いながら、スマホを取り出し、登録済みのコードをスキャンした。

すると、即座に扉が開き、室内の明かりが二人を迎える。


そこには、全長約130センチの巨大な銃が鎮座していた。

主エネルギーはプラズマ。全体のカラーは黒と青を基調としている。

モデル名:Nova-Enyo X4。

「さあ、行こうか。」カイが静かに呟いた。

他の生徒グループサイド

「えっ!」

アヴァが突然、ある方向を振り向いた。

「どうした?」

ケインが振り返り、他のメンバーもその方向を見る。

「何か……音がした。あっちの方から。」

アヴァが答える。

その瞬間、全員の携帯が一斉に警告音を鳴らした。

画面を確認すると、それは“怪物出現”の緊急通知だった。

「怪物……まさか……」

ジュリアが呟く。

彼女が言い終わる前に、周囲の至る所から生徒たちの悲鳴が響き渡る。

恐怖と、どこか血の臭いが混ざり合い、空気を支配していく。

「た……す……け……て……」

すぐ近くから、かすかな女子生徒の声が聞こえた。

視線を向けると、そこには――

足のない怪物が、赤い目をぎらつかせ、少女の頭と脚を無造作に握りしめていた。

次の瞬間、その小さな身体が激しく引き裂かれていく――。

耳に残るのは、湿った嫌な音と、地面に広がる赤黒いもの。

誰もが言葉を失い、その場に立ち尽くした。

全員の顔が青ざめ、体は無意識に震え出す。

呼吸さえも苦しくなり、周囲の空気は異様に重く張り詰めていた。

「気をつけろ!」

ヘンリーの鋭い声が響く。

怪物は、少女の残骸の一部をこちらに向かって投げつけてきた。

遠くから、足音が激しく近づいてくる。

別の怪物が、凶暴に突進してくる。

「一旦、散開だ!」

ヘンリーが即座に指示を出した。

アヴァとケインは一つの方向へ、

ジュリア、ウィリアム、ヘンリーは反対方向へと駆け出した。

突然、鋭い爪を持った手と血まみれが窓を破り、ガラスが割れる音がしました。 「ファット」- サロメの顔に深い刺さった鋭い爪は彼女の顔を半分に分けたかのように見え、1つの眼球がちょうど外れて彼女の体の奥深くに突き刺さった。 血が流れ続け、オリビアの真っ白な顔を撃ち返った。 その手で、そのまま班長を引きずっています。

プロセスは非常に速く、ソフィアとオリビアは何が起こっているのかを再定義することができませんでした。

「サロミー ... !」 - オリビアは戻ってきて、サロメに電話しました。 彼女の全身はモンスターにそれぞれの大きな肉を噛まれました。

「ダメよ、オリビアちゃん」-ソフィアは彼女の身震いしているにもかかわらず、オリビアの手を引っ張って逃げ出した。

誰もが納得できないが、何もできない。

「私たちはもう到着しました…」とエマ先生は振り返って二人に言いました。

目の前に突然、突然黒い影が落ちてしまった。 それから頭は5つに分かれて、歯ぐきが出てきました。

「走ること… 早く...」-エンマ。

赤い血が流れ、怪物は舌を使ってエマさんの体を刺しました。

-お母さん、早く帰ってください。メアリーは母親を愛しています。エマの考えから浮かび上がるように、両側に茶色の髪がある女の子を指さして挨拶をするカモメの形のヘアピンで留めました。

彼女の体はしばらくの間動いていなかった。

「ガンッ」ー石が妖怪に投げつける音。

「彼女を手放せ…」とソフィア声は震えながら言った。

怪物は、その行動に惑わされることはなかった。


銃声が響く。

放たれた弾丸が怪物の舌を直撃し、激痛にうめき声を上げる。

その苦痛の中、怪物はエマ先生を片手で放り投げた。


「こっちだ、こっち。お利口さん、おいで。」

カイが挑発するように声を上げる。


目がないはずの怪物だが、聴覚はどうやら優れているらしい。

刺激を受けた怪物は怒りの声を上げながら突進してくる。


「キア、コアは頭の近くだ!」

カイが叫ぶ。


その瞬間、二階からキラが怪物に向かって跳び降りた。

銃口をその頭に押し当て――「バン」――銃声が鳴り響く。


怪物の身体が光り、無数の粒子となって空中に舞い散りながら崩壊していく。

その勢いでキラの身体は投げ出されたが、兄のカイがすぐに受け止めた。


そのとき――

暗かった空がわずかに明るみ、雲の切れ間から陽光が顔を出す。

差し込む光が、ほんの少し、心の奥にあった恐怖を和らげていく。


砕け散った窓ガラス、乾ききらない血、冷えきった身体――

そのすべてを静かに照らす朝の光。


キラは静かにエマ先生の遺体へと歩み寄り、用意していた布をそっとかぶせた。

そしてソフィアとオリビアのもとへ向かい、自分の上着を脱いで二人に掛けてやった。


「もう大丈夫だよ。」

そう言って、キラは二人の肩をそっと抱いた。


その頃、校舎の廊下には人々の影が現れはじめていた。

傷だらけの身体を震わせながらも、その瞳には確かな希望が宿っていた。

肩の力が抜け、ようやく息ができたような表情。


中には、その場に膝をつき、嗚咽を漏らす者もいた。

きっと何か、大切なものを失ったのだろう。


かつて世界屈指の教育の象徴だったこの学園――

国の誇りであったこの場所は今、瓦礫に埋もれ、原形をとどめない肉片が散乱し、

赤黒い血があらゆる面を染め上げ、空気には鉄の匂いと酸味が漂っていた。


だが、壊れたのはここだけではない。

外の街もまた、「あの幕」が降りたのだ。


かつて華やかだった都市は、今や地獄絵図と化し、

摩天楼は廃墟のように立ち尽くし、

車両は積み重なり、逆さまに燃え、あちこちから黒煙が立ち上っていた。


聞こえるのは、悲鳴と嗚咽、呼びかけに応えない名を叫ぶ声――

それら全てが一つとなり、響き渡る。

明日が来るとしても、それは今日と同じではない。


どれだけ包帯を巻いても、血が止まらないような――

それは人類の時代に打たれた、終止符のようだった。


怪物の残骸は、球体のように変化しながら、地面に散らばっていた。


「みんな、無事だったんだね……」

ジュリアは安堵の声を上げ、キラ、ソフィア、オリビアの三人に駆け寄って抱きしめる。


「親友たちよおぉ~」

リアムがカイの方へ走ってきた。その後ろにはヘンリーとウィリアム。


カイはさっと横に避け、案の定リアムは近くの木に頭から突っ込んだ。


「そんな目で俺を見るなって……」

リアムが拗ねたように呟く。


少し離れた場所から、アヴァとケインが歩いてくる。

ケインの肩にはルカがぐったりと担がれていた。


「そいつ、死んでんのか?」

キラがケインの肩を指差して言った。


「歩いてたらさ、木の上にこいつがぶら下がっててさ。マジでビビったよ。」

ケインが苦笑する。


「ちょっ、笑わないでよ。ただ木に登ったときに頭ぶつけて気絶しただけだから……」

ルカが目を覚ましながらむくれて言った。


「お前、言わなかったら俺ガチでビビってたぞ。ははっ!」

カイが笑いながら言うと、みんなもつられて笑った。


「笑うなってばぁ……」

ルカが顔を赤らめて呟いた。


嵐が去ろうとしていた。

差し込む陽の光の中、どこかに虹が現れるかもしれない。

――けれど、また新たな嵐が来るとしたら、その光はもう届かないかもしれない。


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