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127粒目

(娘とな)

母親の話曰く、大きな街の大学に籍を置き、普段は大学の近くの寮に住み、休みには村に帰ってくる。

今は春休みで、更に大学の建物の修繕工事入るため、全員が追い出されているのだと。

「そんでねぇ、確かによーく効きはするんだけど、なんせ高いんだ。でも大事な仲間のためだし、背に腹はかえられぬ、だろ?報酬の半分は吹っ飛ぶ金額でさ、仲間のためとはいえ、正直渋々ね?払おうとうとしたらだよ。

『人体実験しませんか』

って、持ちかけられたんだ」

また不穏な単語が現れた。

「あぁ、こちらに許可は貰ってるから臨床試験です、とか何とか言ってたけど」

その誘いに、この母親が積極的に手を挙げたと。

「だって仲間はさぁ、まだみんな独身なんだよ。私はさ、もう結婚して子供もいるからね。やることやったし、何かあっても、かまやしないんだよ!」

ののぅ。

普通は逆ではないのか。

男の作り笑いが固まった様子からしても、やはりこの母親の考えは少し特殊らしい。

「朝と夜の2回。あぁ、ざらついた白っぽい粉だったよ。別に特に何も起きなかったけどね」

起きなかったのか。

「そうそ、それはそれでね、正しい結果なんだってさ」

(正しい結果?)

まだほどほどに熱いであろう珈琲を、ビールの様に易々と飲み干すと、

「結局、支払いは報酬の半分の更に半分で済んでさ。仲間も元気になって帰って来れたんだよ」

狸擬きは、じっと片耳を母親の方に向けている。

言葉に嘘がないか確かめているのだろうけれど、この女に限ってはそうそうないであろう。

男がおかわりを促せば、

「貰う貰う!ってか、随分といい豆使ってるじゃない!」

と男がテーブルに置いた煙草を勝手に抜き取っている。

火を点け、天井に紫煙を吐き出し、隣の狸擬きに目を向ければ。

「しっかしあんたはおとなしいし可愛いねぇ!」

椅子に座りじっとしている狸擬きを褒め、

「フーン」

狸擬きが当然だと答えれば。

「その鳴き声まで可愛いねぇ!」

「フーン♪」

なかなかに解っているではないかうるさい女、と狸擬き。

「うんうん、その体型なら弓でも狙いやすいねぇ!」

「フーンッ!?」

何だと貴様はわたしの逃げ足の早さも知らない癖にとプンスコ狸。

この女はどうやら弓使いらしい。

「フンフンッ!」

全く失礼なと眉間に毛を寄せる狸擬きに、

「何!?自分も弓を引いてみたいだって!?」

ぐいっと顔を覗き込む母親。

「フーンッ!」

違う!でも試してやってもいい、と、ふんわりと会話が成立している。

(凄いの)

我も少し力を抜いて、残りのカフェオレを啜る。

そう。

こちらは、十分に満足な話を聞けた。

この母親に、余計な好奇心からの詮索をされないためにも、今はもうこれ以上訊ねない方がいいことくらいは解る。

解る。

のだけれども。

やはり、気になるではないか。

この女に、我は一体、どんな風に見えたのか。

短剣に指先を添える程度には、何かしらが「視えた」のだろう。

さぞや絢爛華麗な、何かが。


珈琲のおかわりをもってテーブルに戻ってきた男は、そんな我の催促に、

「……」

当然、戸惑いと大きな躊躇を見せたけれど。

「大事なことであろうの」

にまーりと笑みを浮かべて見せれば。

「……」

男は、眉間に深く深く皺を寄せた後。

「……あなたを迎えに行った昨日(さくじつ)。あなたは、この彼女に、何を見たのか」

と訊ねてくれた。

それは。

澄んだ湖面の奥底を探る、癇癪持ちの寝た子を起こすのと同義ではあるけど。

狸擬きの両前足を軽く握り、足が短いねの呟きで、狸擬きを憤慨させていた母親は。

「……あ?」

作り物ではない、ボケッとした顔を見せた我等に後。

「……あぁ、あぁっ!そうそう!!」

そんなことあったねぇ!!

と、つい昨日の記憶は、一欠片も残さずにすっ飛んでいた様子。

そして、こんな女でも、さすがに察するのか、

「あっ!?やっぱあれ、なんかよくない変な薬だったの!?」

と自分の身体を見下ろし。

男は、自分たちはその薬を渡した人間に会ったことはないこと、ただ、あの時、少しあなたの様子がおかしかったため、気になっていたと伝えると。

母親は、うんっうんっと全身で大きく頷き。

「あたしはさぁ、特に視覚に頼るだろ?」

あぁ知らないか、あたしの持ち味はね、この目なんだよ!

と自分の茶色い瞳を指差し。

「討伐隊の中でも、まずは私が獲物を見付けるんだ、あとは援護の弓だけどね」

と、今は全く笑わない顔で。

「……」

我を真っ正面から見つめると。

「……視覚に頼りすぎるあたし自身に問題があることは、覚えておいて」

と謎に強く前置きされてから。

「……あたしの目はね、あの時、あんたをね」

我を。

「“とてつもなく異常なもの”として、認識しちゃったみたいなんだよ」

異常なものとな。

(なんと)

なんとも。

それはまた。

大変に正しい、

「視覚」

ではないか。

我は無論、表情には出さずにいるけれど、代わりに男が滅法渋い顔をしている。

狸擬きは、そうでしょうと言わんばかりのしたり顔。

母親は、更に思い出すようにこめかみに指を当てると、

「そうそう、それであの瞬間さ、こうね、

『あぁ、息子だけは!』

って思ったんだよ」

とこめかみに当てていた手を今度は胸に当てる。

(息子だけは?)

「そう!!

『この子だけは助けないと!』

ってね!」

ぬぬ?

「もう周りは知らないし自分も助からない、だけど息子だけは何とか助けないと!ってねぇ。……なんでだかね、本能的にそう思ってしまったんだよ」

ふーっと紫煙を吐き出すと、煙草を灰皿にぐりぐりと押し付けた。

ふぬぬ。

親の本能と言うものであろうか。

なんとも素晴らしい。

人の本能。

我には、存在しないもの。

そして、どうにも。

この目の前の女が飲まされた薬。

それは。

この我にとっては、

『大変に都合の悪い薬』

の様である。


母親は、

「思い出したついでに反省するよ」

と、組んだ足に両手を乗せる。

(反省?)

我が首を傾げたためか、

「そうだよ。あたしはさ、人よりちょっとばかり目がいいから、だからこそ目にばかりに頼ってるから、やっぱり、あの薬の“副作用”ってやつかね?なーんかおかしなものまで視えちまったんだって思ってるよ」

(ぬぬん……)

身振りが雑で言葉が雑で遠慮も思慮も恥も遥か昔にどこかに捨ててきていても。

やはり、この女も、存分に人がいいことには変わりない。

先刻の言葉からしても。

この母親は、目の前の薄気味悪い幼子に、

「何かある」

などとは、ほんの微塵にも思わず。

自分の目を、まさに文字通り、盲信していたと反省している有り様。

あぁ、本当に。

この世界。

どうにも我に、都合がいい。

ならば。

さすれば。

我は、

(それを存分に、堪能するだけ)

我が満足し、ふっと小さく息を吐いた事に鋭く気付いた男が、

「よかったら、落ちついた頃にでも、お食事を一緒にいかがですか?」

勿論、旦那様と息子さんのお2人も一緒に、とにこやかに誘っている。

大変に楽しい話を聞かせてくれた礼を込めてではあるけれど、今は、話を逸らす意味合いも強そうだ。

後は我も含め、男の純粋な好奇心も強いであろう。

この母親からは、我等の知らない他国の話も聞かせてもらえそうである。

(かしこ)まった席などよりも、もっと賑やかな、絶えず乾杯が酌み交わされているような大衆食堂でも行けば、そう悪目立ちもしないであろうし。

「ええっ!?いいのかい!?」

母親も、自省のために渋くしていた顔を、途端にパッと笑顔にし。

「実はさぁ!!昨日もさぁ、散々聞かされてたんだよ!サンドイッチが美味かった!弁当が美味かった!って、もー何度も聞かされてさぁ!!」

(……の?)

「……え?」

男が、外向き用の笑顔のままギクリと固まる。

我は勿論、男も、どこかへ食べに行く前提で誘ったつもりだったのだけれど。

「チーズケーキだっけ!?もうさ、こっちが悔しくなる程に、美味しかったって教えてくれるんだよっ!」

ぬぬん。

大変に光栄な話ではあるけれど。

「旦那もだよ、サンドイッチが、まー美味かったって!またその顔がさぁ、息子そっくりなんだよ!」

あ、逆か!

とガハガハ思い出し笑いをする、この目の前の母親は。

「あたしっ?料理!?無理無理!飯なんぞね、男の仕事だよ!!」

アッハー!と笑いながら言い切られた。

ほほぅ。

そして、

「もう落ち着いてる!今夜でもいいよ!!」

と、有無をいわせぬ勢いで迫られ。

「……うっ」

組合などには、顔を出さなくてもいいんですか?

と男が椅子ごと身体を引いても。

「昨日行った!だから平気っ!」

と男に詰め寄り。

「へ、平気、ですか……」

狭い部屋で男はすぐに背後の壁に当たり、母親はもうテーブルに半身が乗る勢いで迫っている。

「チーズケーキだっけ!?」

と。

「そ、そうですね……」

「うまそうだよね!あたしはさ、旅の間はろくなもん食べられてないから余計にね!!」

「ぐ……っ」

我等は旅の途中、馬車の荷台でも、日々贅沢に値する食事をしているため、男はそこを突かれると弱い。

例えそれが、我のためだとしても。

「……では」

夜に向けて準備をします……と、男が折れれば。

「フゥーッ!楽しみにしてるよー!!」

元気いっぱいに、そして狸擬きの全身の毛がしっちゃかめっちゃかになるほど撫でまくり、やっと満足して帰ってくれた母親は見送れば。

「……悪い、誘い方を間違えた」

男には謝られたけれど。

「あれは仕方ないの」

あれは泣く子も黙るし、男が頷くまで帰らなかったであろう。

「フーン……」

眉間に毛を寄せるその毛すらとっちらかった狸擬きは、

「フン」

あれは下手な嵐よりたちが悪いですと尻尾を床に叩きつけた。


「何を作ろうかの」

「そうだな」

「フーン♪」

主様のご飯♪御馳走♪

全身の毛を櫛で梳かしてやったせいか、御機嫌でその場でステップを踏む狸擬き。

この切り替えの早さ、鳥頭ならぬ狸頭は見習うべきであるか。

「お主は何が食べたいのの?」

「フーン」

肉と酒、と。

「ぬぬん」

わざわざ聞く必要もなかった。

後は。

「チーズケーキを所望されていたの」

「フーン♪」

あれは大変に美味しいものですと狸擬き。

赤飯おにぎりで朝食を済ませると、冷蔵箱を覗き込んだ男が、

「少し食材を買い足してくるよ」

帽子を被り。

「頼むの」

我等は、チーズケーキ作りに取り掛かる。

「折角だし、毛色の変わったチーズケーキでも作ろうかの」

今から作れば、夜には生地も落ち着くであろう。

材料を取り出せば、

「フーン?」

いつもより混ぜるものが少ないですねと狸擬き。

「そうの」

癖のないチーズと生クリーム、練乳と檸檬だけ。

作り方も、

「ぐるぐるぐるの」

「フンフンフン」

かき混ぜて型に流し込んで冷蔵箱にしまうだけ。

仕舞い終えると、

「苺が安かったよ」

両手に大袋を抱えて男が帰ってきた。

「のの?それは丁度よいの」

不揃いな大きなの苺を煮詰めてソースを作り。

「ほれの」

「フーン♪」

味見させ。

男と、料理の下拵えに取り掛かる。

なんせ普段より人数が多い。

足りないよりかいいはずだからと、男が買ってきたものと、今水場にある食材を全部使おうと、それぞれにわせわせと動き始めたけれど。


どうにも。

適当な地図の件からしても、この街の、あまり優秀とは言えない組合のせいで、再びのとばっちりを食らったのは、我等であり。

そう。

どうやらこの街の組合、報連相すらもまともに機能していないらしい。

小さな水場とテーブルも目一杯使い、何なら椅子にも食材を置き、我は切った肉をボールに放り、男は大鍋でスープを煮込んでいる時。

母親の襲来を阻止するために鍵を掛けておいた扉から、ガチャリと、無遠慮に鍵が開き、扉が開く音に。

「?」

「?」

我等は顔を見合わせた。

「……あれ?」

「なんか、やけに綺麗じゃない……?」

「待って待って、なんかいい匂いもするんですけど?」

「ねぇ、どっか人の家と間違えてない!?」

「でも地図はここだよ!」

「……入ってみる?」

と声と共に。

味見はないのか、味見はまだですかと水場をウロウロしていた狸擬きが、

「フーン?」

何事だと扉へ向かい。

「……フン?」

「キャーッ!?」

狸擬きの姿に驚く若い女たちの悲鳴と。

その悲鳴に、

「フーンッ!?」

狸擬きが驚いたり。

そして部屋から顔を覗かせた男と我の姿に、若い女たちにまた悲鳴を上げられ。

忙しい中での、一通りの大騒ぎの末。

この若い女たちは、なるべく宿代を浮かせたいとの理由で組合でいい場所がないか聞いてみたら、ここを紹介されたと。

(のん)

この街のアホな組合の手違いだとは分かったけれど。

「私たちぃ、どうすればいいでしょう?」

「組合までの道、忘れちゃったぁ」

「あーん困ったなぁ?」

若い女たちが、見目麗しい男を囲むようにおもむろに媚を売り始め、

(……むむ)

眉が寄ると、視界の端では、狸擬きが我の不穏さを察し、そわそわしている。

すると。

「あのさぁー、なんか手伝えることある?」

まこと見事な頃合いで、赤毛息子がひょこりと顔を覗かせて来た。

母さんが無理言ったみたいだから、旅人さんたちの様子を伺って来なさいと、父親に仕事を与えられたと。

男は、息子の姿に露骨に安堵した顔を見せ。

ここぞとばかりに、

「ある。このお姉さんたちを、組合まで連れていってあげて欲しい」

と男が赤毛に押し付ける様に、建物から娘たちを追い出した。

「驚いたな」

「の」

そんな、全く予想もしないドタバタはありつつ、我等は、またもわせわせと動きながらも。

「のの」

ふと気付いた。

「ん?」

「椅子が足りぬの」

「あっ!」

男も失念していた模様。

まぁそれは。

「我はお主の膝の上でいいし、狸擬き、お主は床で食べれば解決するの」

すぐに解決した。

はずが。

「フーンッ!!」

何ですと何ですと何ですと!とプンスコ地団駄狸。

「……いや、そもそもお主は獣であろうの」

「フーンッ!」

わたくしめは主様の従獣であり獣ではありません!と、我には欠片も解らぬ屁理屈を捏ねる狸擬き。

「けれど、実際椅子が足りないのの」

テラスにある長椅子を降ろすにしても高さが足りない。

「なー、姉ちゃんたち送ってきたよ」

と再び顔を出した赤毛に、

「すまない、ご両親に、来る時に椅子を2脚程持って来てくれるように頼んでくれないか?」

男が頼むと、

「わかった、父さんと母さんに伝えてくる」

と、案外赤毛息子が使えるではないか。

と思えば。

「テーブルは足りるかい?」

「あぁ、もういい匂いがしていますね」

夕方を待たずに、小振りとはいえ、テーブルを頭上に掲げ易々と運んでくる母親と、椅子を2脚でいいと言ったのに、謎に4脚も両手にぶら下げて来る父親。

そう広くない部屋が、きちきちになったけれど。

「料理の品数も多いから案外助かるな」

「そうの」

そのまま居座りたがる母親を、

「夕暮れ時に、またお邪魔します」

と、父親が抱えるように引き摺って帰って行く。

休憩でビスケットを摘み。

男が、部屋の灯りを点ける頃。

「そろそろかの」

「そうだな」

我は、メインの1つになる料理に取り掛かる。

鍋に油をたっぷり注ぎ、細かくした香草、にんにくと塩で漬けておいた一口大の鶏肉と豚肉を、熱した油にゆっくりと落としていく。

じゅわじゅわとよい音を立て、火が通っているか確認のために半分にした豚肉を、

「ほれ、味見の」

踏み台の脇で待機していた狸擬きの鼻先に箸で寄せれば。

「フーン♪」

熱そうにハフハフしながらも、

「フゥゥゥン……♪」

美味でございます、とうっとりしている。

男までもが、隣に立ち顔を寄せてきたため、

「お主もかの」

笑いながら口に運んでやれば、

「……うん、んん美味い」

目を見開く。

ふぬ。

味は問題なさそであるけれど。

狸擬きが、

「フーン、フーンッ!!」

もう1つ、もう1つ欲しいと、踏み台に立つ我のエプロンにしがみついてくる有り様。

「……まるで躾のなってない獣そのものの」

またフンフンと怒るのを承知で茶化してみるも。

「フーンッ!」

獣で構わないのでもう1つ下さい!!

と涎を垂らしかねん勢いで、食べ物のためならプライドも捨て狸。

フンフンフンフン寄越せ寄越せと下さい下さいうるさくて仕方ない。

昼は遅くにビスケットを摘まんだだけであるし、空腹もあるのだろう。

仕方なしに揚がった鶏肉を1つ与えれば、

「フーン♪」

前足で掴み、その場にぺたりと座り込み、ハフハフと咀嚼。

そして、

「フゥゥゥン♪」

至福の表情。

「どちらが美味の」

訊ねても。

「フゥン♪」

比べられませんと、肉球に付いた油をペロペロ舐めている。

大量の肉を揚げ終わる頃。

「来たよー!」

「すげーいい匂いがするっ!」

「すみません、どうもお邪魔します」

赤毛家族が現れた。

「なんだい!?予想以上の御馳走じゃないか!」

1人で3人分の声を上げる母親に、

「あっ!これ!これ美味いやつだ!?」

テーブルのオムレツに顔を寄せる息子。

「料理が被らないように、結局酒になってしまい……」

そしてうるさくてすみませんと男に謝りつつ、何本も酒の入った袋を渡す父親。

「フーンッ♪」

酒!酒!

と大はしゃぎの狸擬き。

賑やかを越えて騒がしい。

更に、

「はーっ!?嬢ちゃんも料理するんだねぇ!」

こんなちっちゃいエプロン初めてみたよ!まーた可愛いねぇ!!

と踏み台に立つ我と我のエプロンをまじまじと覗き込む母親を、

「ほら、俺たちは大人しくしていよう」

父親がテーブルに引き摺り。

「俺も何か手伝う?」

と、悪戯が影を潜めれば、常識的かつ父親似のまともな息子が水場にやってきた時。

「あのーっ!」

「いい夜ですねー!?」

「昼間お世話になった者たちでぇーす!」

(の……?)

「フーン?」

何やら、不穏な予感。

いや、予感などではなく。

目の前に、我の天敵が現れた。


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