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120粒目

吸血鬼には、同じ宿に泊まればいいと誘われたけれど。

我等には分不相応であるし、水場のある宿がいい。

小さな宿に腰を落ち着けた夕食後、白蝙蝠が飛んできた。

「のの?」

吸血鬼から何か言伝てかと思ったけれど、狸擬きとおしゃべりがしたいから、主人に許可を得てやってきたと。

なんと、飛べる者は自由度が桁違いである。

お茶とビスケットを出してやり、男は貰った石をすがめるように眺め、

「……さすがに貰いすぎだな」

石の価値は、高いらしい。

「ふぬ」

ならば。

「追々、お返しして行こうの」

我等でも、何かしらの役に立てることもあるであろう。


「ののーぅ」

快晴の翌日。

人が乗るためのみに特化された黒い瀟洒な馬車に、黒いローブを頭から被る、御者に見せ掛けた“それ”は、蝙蝠たちの集合体。

後ろには2台程、たんまりと荷を積んだ荷馬車が続くけれど、御者は同じく蝙蝠たち。

男には、人の御者にしか見えないらしい。

「……凄いのぅ」

こちらの吸血鬼と言うものは。

熊村長と見せ方は似ているけれど、山の力と吸血鬼の力は、似て非なるもの。

ほぅと感嘆の吐息が漏れれば。

「あら、簡単な錯覚での見せ方よ」

パチリと片目を瞑られても。

我にそんな技はない。

にしても。

「荷が多いの」

そちらにも驚く。

「ええっ!?これでも少ないくらいよ!」

「のっ!?」

これでか。

「あなたたちが少なすぎるのよ」

吸血鬼は我ではなく、男を見て眉を寄せる。

その吸血鬼は、今日は濃い葡萄酒色のドレススーツを身に付けている。

襟許には、シンプルながらも、やはり葡萄酒色の石を留め、やはりカフスと合わせているのか。

興味深く不躾に眺めていると、

「ほらぁ!やっぱりお洒落に興味津々じゃない。あなたは従者なんだから、ご主人様にちゃんと寄り添って、なんなら先を読むくらいはしてあげなさいね」

男が顔をしかめ、白蝙蝠と狸擬きは鼻先を突き合わせて別れの挨拶をしている。

残り少ない紅茶の茶葉だったけれど、礼の1つとして渡せば、

「いいの?こちらでは貴重なものなのに。ありがとう。大事に飲むわ」

紅茶の缶にチュッと音を立てて接吻をする吸血鬼。

「手紙で、西の国の話も聞かせてね」

「の」

「それじゃ、またねぇ」

と手を振る吸血鬼の馬車を見送ると、我を抱っこする男が、大きく溜め息を吐いた。

「あのタイプは苦手かの」

「……少しな」

のの?

含みがある気がする。

「いや、痛いところを突かれたからだよ」

今度は空を見上げ、もう少し小さな息を吐き出す。

「もっと我を(うやま)えとの?」

「……君は女の子なんだから、もっとお洒落に気を遣ってあげないといけないところ、だ」

ぬぬぅ。

「もう充分であるの」

顔をしかめて見せれば。

「フーン……」

狸擬きは寂しそうに、遠ざかって行く黒い馬車を見送っている。

白蝙蝠とは、昨夜も夜遅くまで会話を弾ませていた。

「また会えるの」

あれらは人ではないからの。

「フーン」

そう言えば。

「の、あの吸血鬼と白蝙蝠は、我等とはまた違うのの?」

白蝙蝠はもちろん、吸血鬼自身も繁殖も可能な様であったし。

「フーン」

あの白蝙蝠は、山や森の主などの立場とはまた違いますし、それはあの吸血鬼も同様、そもそもの毛色が全く異なります、と。

「ふぬ」

「フーン」

あの化け物は化け物とは言え、若干人間よりですと狸擬き。

ほう。

ならば。

「我はどうの?」

「フーン」

我が主様は、人の形を保っていることが奇跡であり、限りなく異形に振り切って御座いますと、なぜか誇らしげに答えられた。


「俺たちはどうしようか」

「そうの」

吸血鬼に貰った名刺もある。

西へ行く前に、この東の国に隣接しているもう1つの国へ、先に行ってみようかと、2人と1匹、顔を突き合わせて決め。

トコトコ、トコトコ。

街を抜け、ふと振り返れば、少しばかり、東の山が遠ざかっていた。


「あーずき洗おか、ミルクレープ食ーべよか♪」

しゃきしゃきしゃき

しゃきしゃきしゃき

「あーずき洗おか、なーにを食ーべよか♪」

しゃきしゃきしゃき

しゃきしゃきしゃき


ふふん、ふふん♪

ふふん、ふふん♪


「ぬふー♪」

2つの国の国境となる川があり、橋から少し外れて、我は小豆を研ぐ。

男は風下で煙草を吹かし、狸擬きは川の先の森の方へ散策へ。

ほどほどに大きな森であるけれど、東の国の森と比べると小さく、そして鬱蒼としている。

この森のだいぶ進んだ先に、吸血鬼の城があるらしい。

国境近くの辺鄙な場所でもあり、更に蛇が多く、あまり人は入らないとも。

そしてこの森を抜けた程度では、城は全く見えないとも聞いている。

我等が馬たちも水を飲むと、すぐに戻ってきたため、

「狸擬きの」

行くのと馬車から森へ向かい声を上げると、

「フーン」

茶色の塊が思ったより早い速度で駆けて来た。

その勢いでポーンッと荷台に飛び乗る従獣に、

「どうだったのの?」

訊ねてみれば。

「フーン」

湿度もそこそこの、いい森でしたと。

獣には好感触な森らしい。


橋を越えたしばらく先、右手に、森の奥へ進む小路が続いているのが見えた。

石畳が敷かれ、馬車一台が通れる程度の幅。

(おやの)

馬車を停めて眺めていると、向こうからやって来た行商人と思わしき男女に、

「そこはね、お金持ちの別荘が奥にあるんだって」

「立派な門があって、行き止まりになってるよ」

間違いなく、吸血鬼の別荘だろう。

この2人は、好奇心で入ってみたのかもしれない。

男が礼を伝えすれ違い、先へ進もうとすると、ふと、石畳の小路から、蝙蝠が1匹、パタパタと飛んで来た。

『……』

言葉はなく、けれど、何か訴えている様子。

「フーン?」

『……』

便利な通訳狸。

『……』

「フンフン」

『……』

「フーン」

屋敷の敷地に、ミントが生えてしまい、爆発的に増えている。

自分達にはとても苦手な香りであり、始末したいけれど、近づけずに困っている。

あなたたちは我等が主様のお友達と見受けられる、少しばかり手を貸してくれないかと訴えてると。

男に伝えれば、男は、瞬時詰まったけれど。

「あれだけ石を貰ったしな……」

方向を変えて、森の小路に馬車を進める。

さすれば間も無く。

「お……?」

「ののん」

「フーン」

立派な門扉の向こうには、別荘とは名ばかりの、立派な屋敷が構えていた。

きちんと囲いもあるけれど、その囲いの中に薄荷が生え、増殖してしまっているのだと。

ふぬぬ。

「草むしりの依頼であるの」

門は勝手に開かれ、中は、蝙蝠たちがせわしなく飛んでいる。

馬車を停めれば、きちりと手入れされた庭が広がり、花が咲いている。

馬車から降り、蝙蝠に案内された場所は、大きな屋敷の北側。

小さな小屋があり、そこには庭の手入れ用の道具が入っていそうな様子。

そしてその奥に、薄荷(はっか)が、わさりわさりと生えていた。

我等から見れば、

「案外、大したことはないの」

けれど、薄荷が苦手な蝙蝠たちには、これでも脅威なのだろう。

男がジャケットを脱ぎ、我もドレスと靴と靴下を脱ぐと、キャミソールとかぼちゃパンツ姿になる。

「……君は」

もう少し淑女としての恥じらいをとうんたらかんたらとお小言が始まりそうなため。

「ぬぅ、誰もおらぬの」

薄荷の生えた場所に駆け寄り、ふん、ふんと薄荷を根っこから引っこ抜いて行く。

「フン、フンッ」

付いてきた狸擬きも、口で前足でブチブチと薄荷を引き抜き、

「……フーン」

鼻がスースーします、ときゅっと目を閉じる。

ある程度引き抜くと、土を掘り、根っこと思わしき根を引き抜き。

狸擬きが、スンスン鼻を近付け、

「フーン」

まだ残ってますねと前足で掘った部分を更に掘り、

「フンッ」

薄荷の根を、引っこ抜いて行く。


「一先ずはこんなものかの」

「フーン」

わさりわさりと生えていた薄荷たちを、一通り抜き終えた頃。

我は当然、土まみれになり。

「ドレスを脱いで正解であったろうの」

胸を張るも。

「そういう問題ではない」

我と男、互いに平行線の、

「レディの嗜み」

の線引きを言い争うその不毛なやりとりは、パタパタと飛んで来た蝙蝠に寄って中断された。

積まれた薄荷を、掘り起こされた地面を見て、

『♪』

「フーン」

大変に助かります、お風呂を用意致しましたのでどうぞお疲れを癒してくださいと告げていると。

ののん。

「主不在の屋敷の中に、勝手に入るわけにはいかぬであろうの」

我等は川で水でも浴びればいい。

『♪』

「フーン」

屋敷の主様にはとうに報告済みですと。

「のの?」

『……♪』

「フーン」

主様からの伝言です。

ーーお客様に庭仕事なんかさせてごめんなさいね、でも本当に助かったわ。

私くらいになるとミントも平気なんだけど、蝙蝠たちはダメなのよ。

そうそう、元々ね、別荘には寄ってもらうつもりだったの。

そう急いでもいない旅みたいだし、自分の家だとでも思って寛いで頂戴。

庭仕事のお礼もしたいから、いつか必ず会いましょうねーー

とのことですと。

「ののぅ」

何とも抜かりない。

出来る女、と言うのは、ああいう女のことを言うのか。

いや、あれは女ではなく吸血鬼であるか。

男は、天敵とも言える苦手な吸血鬼には、あまり借りを作りたくないようだけれど。

「……風呂だけは借りさせてもらおう」

男も大概、土埃にまみれている。

(ふぬ)

では。

「我と一緒に入るのの?」

にまーりと笑みを浮かべてみせるも。

「……お先にどうぞ、だ」

ニコリともされない。

(むぅ)

なんの。

東の森では、その夜目で、我の裸体をしっかり見ていたくせに。


吸血鬼の所有するこの別荘は、自身の食事となる客人を招くだけはあり。

「中も豪奢であるの……」

屋敷の中も、どこもかしこも磨かれ、調度品1つ取ってもキラキラしている。

風呂場へ案内され、頭から湯を被り土を落とし、

「ぬふー♪」

きちんと手前に踏み台の用意をされていた猫足風呂に浸からせてもらい。

髪を拭きつつ、男が用意してくれていた新しいキャミソールとカボチャパンツで脱衣所から出れば、

「フーンッ!」

短い足をジタバタさせている狸擬きを小脇に抱えた男が、

「出たら君の髪を乾かすから、少し待っててくれ」

「の」

「フーンッ!」

土のいい匂いが消える、下ろせ下ろせと騒ぐ狸擬きと共に風呂場へ消えて行く。

我は客間でおとなしくしていようと、しかし、広すぎて客間もどこか分からぬのと廊下で髪をわしわし拭いていると、蝙蝠が飛んで来た。

『♪』

パタパタと先導するように飛び、どうやら、客間へ案内してくれるらしい。

ぽてぽてと広い廊下を付いて歩いて行くと。

「……ぬ?」

案内された客間と思われる開かれた観音扉の先には、

「ののっ」

まさかの。

「本であるのっ!」

壁の3面が作り付けの本棚になっており、ここでもやはり脚立が用意されている。

ここは客間でなく書斎、いや、書庫である。

「のののぅ……」

なんと気の利く従獣たちであろう。

その場でくるくる回り、本の花畑を眺めてから、うきうきと、手の届く場所の本を適当に取り開いてみるも。

「……のの?」

文字が全く解らぬ。

近くの本を開いても同じ。

「ふぬ」

多分、文字別に分けられている。

テーブルを挟んだ反対側へ向かい本を取り出すと、

「の、当たりの」

この辺りの文字である。

ふぬふぬと、どうやら若干卑猥な作品を読み耽っていると、

「フーン……」

大変に華やかな薔薇の香りをふわふわと漂わせながらやって来た我の従獣は。

「フーン」

何かお忘れではありませんかと訴えてきた。

「の?」

「フーン」

食事でごさいますと。

「のん」

本に夢中で忘れていた。

「すまない、待たせた」

自分の着替えを忘れたとやってきた男は、シャツとパンツ姿で、テーブルに本を積み上げ、膝で開いている我を見て仕方なさそうに笑う。

髪を乾かしてもらい、狸擬きが空腹を訴えていると伝えれば。

「キッチンを借りようか」

風呂を借りたことで、男も、屋敷からそそくさと撤退することは諦めたらしい。

蝙蝠に案内された、ちょっとした宿の厨房のような大きな水場で、

「なんでもあるの」

「なんでもあるな」

調理器具はなんでもござれである。

保存の利く調味料も並んでいる。

遅い昼は、狸擬きの要望で赤飯おにぎりのオムライスと、スープ。

「フンフン♪」

のんびり食べてのんびり片付けていると、徐々に森の陽も暮れてきた。


男は、今夜はご厚意に甘え泊まらせて貰い、明日の早朝には出発しようと告げてきたけれど。

「のの、こやつの鼻が麻痺して、まだ地中に薄荷の根っこがまだ残っているかの判別がついておらぬの」

薄荷は、根が残っていればいくらでも生えてくる。

我の言葉に、ちらと眉を寄せる男。

「フーン」

根っこも青臭い香りがあります故、明日にでもなれば、地上からでも集中すればどこに根が埋まっているかも分かりますと、何気に優秀狸。

であれば。

「しっかり仕事を終えないとの」

そしてそれまでに、見繕った本を少しでも多く読まねばならぬ。

男が渋々了承すれば、我は、書庫へ駆ける。


屋敷の探索を終え、書庫の窓際で数匹の蝙蝠たちとお喋りをする狸擬きに、同じく書庫の小さなテーブルで日記を付ける男。

その男は、日記を付け終えると、我のスケッチを始める。

微塵も成長せぬ我をスケッチし、

(飽きぬものかの)

そういえば髪は数ミリ伸びた気がする。

使うことはなさそうな卑猥な文字を覚えていると、

「フーン」

「の?」

先にお客様用の寝室をご案内しておきましょうと蝙蝠に提案されたと。

ふぬ。

本はそのままに、蝙蝠に案内された2階にある客用の寝室は、

「こちらも大きいのぅ」

「これで客用か」

生花も飾られ、棚には香水瓶が並んでいる。

ふと以前も、こんな部屋に滞在した記憶があるのと思い出せば、

(そうの)

花の国で世話になった花の国の姫の、山の屋敷の一室。

そう、あの屋敷の部屋と引けを取らぬ豪華絢爛さである。

姫は、もうあの屋敷からは出たのだろうか。

猟師の手紙に寄れば、元気にしている様子だけれど。

あの姫は、決して、頭は悪くなかった。

猟師を、自身の従者として自らの元から離さない選択を、いつからしていたのか。

小麦の国と布の国を飲み込む勢いのある花の国。

王女が従者1人に、潤沢な路銀を持たせ旅立たせたところで、痛くも痒くもないのであろう。

それは、姫が他国に嫁いでも同様。

今をときめく花の国の王女の1人なのだ、さぞや大事に迎え入れられるであろう。

狸擬きにヘッドドレスを着けて、クスクスと楽しげに笑っていた姿を思い出す。

「どうした?」

ぼんやりしていたせいか、男に顔を覗き込まれた。

「の、大変な豪邸であるのと思ったの」

「そうだな」

これで別荘と言うのだから凄いなと、男も呆れたように、天蓋ベッドがでんと鎮座している部屋を見回す。

素敵な客室だけれど、寝るにはまだ早い。

「フーン」

隣の客室に案内されていた狸擬きが、

「フーン」

建物がフクロウたちに囲まれていますねと、ノコノコやってきた。

「おやの」

そうか、夜行性であるし、蝙蝠と言う餌を求めてやってきたのか。

夜も見回りを欠かさない蝙蝠たちを狙っているらしい。

「フンフン」

橋の向こうの蛇たちも、わざわざ川を縄張りを越えて遠征してきている様子と。

ほう。

「蛇も蝙蝠も食べるのの?」

「フーン」

食べますと。

そうか。

「蛇も木に登るしの」

そして、それらは。

「我等がここに来た影響であるのかの?」

「フーン」

今回は関係ありません、元からフクロウたちの餌場ではありましたが、そこに、そうですね、新しい住み処を求めて移動してきた蛇もいるのでしょうと。

そういえば、昼間、あっちの森には蛇が多いと話していた。

「この屋敷に影響は?」

「フーン」

周りに蛇が増える程度です、そしてフクロウたちは餌が増えますと狸擬き。

「フクロウの独り勝ちであるの」

「フーン」

それも自然の摂理ですと、もさりとソファにひっくり返る。

まぁ。

確かに、それもそうなのだけれども。

あの吸血鬼が、城だけでなく、この別荘に戻ってきた時。

フクロウたちは勿論、更にフクロウの食えない大きさの蛇たちに別荘を囲まれていたら、あまりよい気分ではないだろう。

「の」

隣の男を見上げる。

「ん?」

「髪を結い直して欲しいの」

食事の前に緩く結んで貰ってはいたけれど、これで森へ駆けて行けば、すぐにほどけてしまう。

しかし男は、

「……」

狸擬きでもあるまいし、聞こえないふりをするなの。

「の」

男のシャツの袖を摘まんで引っ張れば。

「もう夜だ」

また随分と雑な返しであるの。

「フクロウは夜行性であるからの」

蝙蝠も夜行性ではあるけれど、こやつらは少し特殊であるし、あの吸血鬼からしても、昼間から街を平然と闊歩していた。

「お主も、石を貰いすぎたと言っておったのの」

「……」

「貰いっぱなしは良くないの」

男は、視線だけを我に向けてくる。

「ここで少しでも借りを返せば、我等はまた気持ち良く先へ進めるの」

「……他の返し方でもいいだろう」

別に良いけれども。

「あのとかく優れた吸血鬼に、我等が返せる恩はそうそうないの」

「……う」

ぐっと詰まる男に、

「であろうの?」

にんまり微笑んで見せれば。

「……俺は何が出来る」

色々と諦め、鞄から櫛を取り出す男に聞かれ、

「屋敷の窓から、我等の勇姿を見守ってくれることかの」

我は、三つ編みにした髪を、頭の上で2つの団子にしてもらい。

「さての」

「フン」

恩返しの時間である。


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