一式中戦車顛末記。(大砲狂騒曲)
サイパンで敵が上陸してから3か月が経った。
我々戦車隊は徐々に後退を迫られ島の北部に追いやられた。
未だタッポーチョ山の陣地は健在で。
我々戦車隊は嫌がらせの砲撃を敵に奪われた飛行場に向けて続けている。
敵の戦車との遭遇戦は在ったが歩兵の肉薄攻撃や横やり(竹)に獲物を奪われる事が多かった。
敵歩兵から奪った対戦車ロケットは敵戦車に対しても有効で夜盗部隊と言われる。
敵支配地域に侵入してトラック事物資を奪う作戦でも大活躍だ。
一方、テニアンの守備隊は苦戦している。
米軍の兵士は随分とやる気が削がれている様子だ。
時々関係ない場所で米軍同士の撃ち合いが起きている節がある。
敵の戦艦も余りやる気が無いように見える。
時々海から敵の艦影が数日消える。
台風で避難しているような天候の悪化の様子もない。
敵輸送機か大型機が時々来るが着陸せずに空港にパラシュートで何かを落として消える。
着陸できないように大穴を開けてやっているのだ。
友軍も時々物資を投下しにやってくる。
「おーい。朝飯だぞ。」
「飯はなんだ?」
「良く分からん缶詰が具の味噌汁だ。後、クッキー。」
「握り飯が食いたいな。」
「米が少ないんだ。夕食には食える。」
「さあ…。食ったら寝るぞー。」
「昼飯用のチョコレートなら在るぞ?」(Dレーション)
「あれ…。食いすぎると屁が止まらん。」
「いつもの歩兵な…。今度は敵の戦車サシクッて来てやるから操縦法を教えてくれって言ってたぞ?」
「本当にやりそうで怖いな…。」
「あいつ等95式軽戦車を見つけてきたからな。」(テニアンに送る用の戦車。)
「コーズウェイ作戦を中止?」
ハワイの司令部で第10軍団長であるサイモン少将が聞いたのは寝耳に水だった。
「ええ、そうです。コーズウェイ作戦は中止で第10軍団はアイスバーグ作戦の準備に掛かるようにとの指令です。」
通信文を引ったくり眺めるサイモン少将…。
「サー。」
「ああ、すまん。マッド・スミスが海兵第3軍団をいつ手放すのか分からないのにか?」
海兵隊のマッド・スミスが指揮する部隊は台湾上陸に参加する事に決まっている。
「北マリアナの日本軍は強力だと思います。」
「そうだろうとも。マッドは日本軍を舐めすぎだ。アッツでどれだけ敵が勇猛だったか…。見ていてないのか?居たよなアイツ。」
「さあ…。一日で落として見せると言って4日間掛かった第27歩兵師団が前進を拒んだのでラルフ・スミス少将を更迭してしまいましたから…。」
「サイパンの戦況は最悪だ。太平洋軍は増援を出すか困っているぞ。我々の指揮下の兵だ。狭い島の中にどれだけ兵が必要なんだ?」
「おそらくアッツの殺戮の谷の様な物が幾つかあるそうです。それで海兵と陸軍の仲が最悪です。」
「狭い島の中でか?」
「はい、南西太平洋軍の連中に笑われますね。」
「南西太平洋軍は笑ってる暇はないだろう。」
「はい、遂にフィリピン作戦を開始するそうです。」
「アイツの故郷だから仕方がないが…。誰かアイツを止められる奴はいないのか?陸軍に?」
「無理ですね、大統領令でも…。」
思わずため息を付く副官…。
新たな命令書を無言で示す。
「なに?その前に硫黄島を攻略しろ?アホか?北マリアナは如何するんだ?」
「ホーランド・スミスに任せておいて…。北マリアナから長距離爆撃機で日本に止めを刺すそうです。」
「島が占領できてないのに?何処でも好きな場所に日本軍が大砲を打ち込めるのに?」
「はい、空港を占拠できれば問題ないそうです。我々の戦艦は全てフィリピンに投入されます。」
「戦艦と空母がないと不可能だ。大体、サイパンだって大量の砲弾を撃ち込んだハズだ…。」
「ええ、敵の戦車の性能を見誤りました。バズーカ砲が効かないそうです。そして敵歩兵は有力な対戦車兵器を多数保持している様子です。」
「…。解った、命令通り硫黄島には第10軍団で当たろう。マッド・スミスに北マリアナを早く片付けろと言え。」
「はい、了解しました。少将殿。」
結局、南西太平洋軍はマニラ解放を急いだ末に将軍山下の軍隊に20万の兵士が摺りつぶされた。
多くの将兵は後ろから日本軍の戦艦に背中を撃たれた。
ダグラス本人も行方不明だ。
我々も硫黄島で日本軍の作った殺戮の谷により第10軍団は機能不能になった。
コーズウェイ作戦もアイスバーグ作戦も実行不可能になり。
1944年11月にテニアンに進出した第21戦略爆撃機隊が。
一時的に進出した日本軍戦車隊のサイパン・イズリー飛行場占領時に海峡越えのテニアン飛行場を砲撃。
多くの戦略爆撃機を焼失させた。
奇しくも東京ローズのいう通り。
「東京に最初の爆弾が落とされると、6時間後にはサイパンのアメリカ人はひとりも生きていないでしょう。」
という言葉の通りになった。
日本軍は戦略爆撃隊を壊滅させ、ヘイウッド・ハンセル准将は行方不明になった。
変わってカーチス・ルメイが指揮を取ったが、度々、海峡を渡って侵攻してくる日本軍に悩まされる事となる。(盗んだLVTで泳いで来る。)
そして1945年5月9日ナチス・ドイツ帝国が無条件降伏するなか…。
北マリアナに硫黄島、ミンダナオ島の占領が果たせぬまま…。
7月20日に日本政府が勝手に中華と停戦を宣言。
大量の夫や子供の戦死報告を受け取ったアメリカ市民は停戦を支持。
(元々、ドイツが敵で中華と日本の戦争は同族同士の戦いだと思っている。)
議会は国連委任統治区の割譲で満足した。
大日本帝国は太平洋の島々の半分と多くの船を失い。
本土四島と千島列島、樺太南部に朝鮮半島。
中華大陸の一部と台湾、満州を持ったまま停戦を果たした。
そしてそのまま勝手にソビエト=ロシアと戦争を始めた。
(イギリスが日本を支持。)
よくよく考えれば、米国が日本と戦う理由はドイツの仲間で中華の敵だ。
ソレだけなのだ。
ナチスは消えた。
馬鹿馬鹿しい狂人同士の殺し合いに参加する謂れは無い。
米陸軍も米海軍も頭の可笑しな連中同士が殺し合うのには付き合っていられないと匙を投げた。
何故我々は海の向こうの神を信じない連中を目の敵にしたのか?
それは、”チャイナ・ハンズ”と”アメリカ共産党”のプロパガンダの結果なのだ。
”大日本帝国は古来から共産主義の悪魔と戦っていた。何故なら立憲君主制の民主国家だからだ。”
ジョセフ・マッカーシーの言葉が全てを表している。
多くのアメリカ人はヨーロッパの半分が赤く染まった地図を見て気が変わった。
「米国は中華と組むべきでは無かった。日本と共に共産主義と戦うべきだった。ルーズベルトはソビエト=ロシアのスパイだ。」
多くのアメリカの若者を死に向かわせた悪魔は全ては共産主義者なのだ。
戦争が終わって落ち着くと直ぐに赤狩りが始まった。
そして中国大陸の内戦は広がり中国共産党の兵士がアメリカの武器を持っていることが議会で問題になり。
1948年にはレンドリース法が日本に対して始まった。
1949年にはソビエト=ロシアでも原子爆弾の爆発実験に成功し。
1952年の大日本帝国とソビエト=ロシアとの国境付近では双方が原子爆弾を使用する結果となった。
皮肉にも日本、ロシア双方はB-29とボーイングスキーが使われ。
多くの兵が死んだ。
アメリカ兵で無いのは幸いだ。
(´・ω・`)大日本帝国、戦争終わらないEND。(日本人は修羅の道。)
(´・ω・`)共産主義者は何処にでもいる…。(1950年代のアメリカ準拠、主に公務員)