SNSのつぶやきに、想いを乗せて
『――さくらが好きです』
満開の桜の写真にその一言を添えて、僕は投稿ボタンを押す。
彼女は遠い街のどこかでこの一言を見てくれているだろうか。――見てくれていたとして、この一言の意味を、画面の向こうにいる君は気づいてくれるだろうか。
ぴろん、と通知が来て、既読がつく。
しかし君からの返事はない。君じゃない見知らぬ誰かからの返信が来るだけだ。
だから僕は、翌日も、思い出のあの場所で撮った桜の写真をアップする。
青々と葉を生い茂らせる夏も、紅葉を見せる秋も、枯れ枝に雪が降り積もる冬も、そして春の花開く桜も、毎日欠かすことなく。
『さくらが好きです。大好きです』
君が見ていなくても、伝わらなくても、それでいい。
でも気づいてほしい。いいや、やはり気づいてほしくないのかも知れない。
あの日あの時、満開の桜の下で笑い合った初恋の君の姿をもう一度見たくて。
「さようなら」って桜並木の中を走って行った、君に……さくらにまた会いたくて。
綻ぶ桜の花のように美しい笑顔を、また見たいから。
口では伝えられなかった想いを――何日何ヶ月何年経っても薄れない強い想いを一言に乗せて、僕は今日もSNSでつぶやき続けるのだ。
『さくらが好きです』