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第4話~平凡の終わり!?~

 「……は?」

 俺は茫然と、急に家にきたサクラを見ていた。

 こいつ何のようだ?てか、なんで俺の家を知ってる?

 今日は家の近くまで一緒にいたが家に入るところは見られていないはずだ。なのに、なんでこいつは俺の家を?

 「あ、来たんだサクラ」

 混乱している俺をさらに混乱させるようなことを、親父は言った。

 はあ!?二人とも知り合いか?

 「あ、こんにちはルウ様。……サラ様は?」

 ルウは親父のことで、サラってのは母さんのことだ。名前まで知ってるって、どこまで知り合いなんだよ。

 「ああ、サラには買い物行ってもらってる。最近食いぶちが増えそうなんでね、買い足してるのさ」

 「すみません、ルウ様……」

 なんか意味のわからないうちに二人の間では会話が成立している。……いったいどういうことだ?まだ頭が追いつかない。

 「えっと、サクラ、何のようだ?」

 なんとかそう訊くと、サクラは本当に以外そうな顔して、

 「え、ご存じないのですか?……ルウ様?」

 と、親父に咎めるような視線を向ける。と言ってもその視線はむくれた子供のようで、とても愛らしいのだから威圧には欠けるのだけど。

 「あははは……いや、言いそびれちゃってね」

 それでも一応怖がったふりをしてやるのだから、親父は本当に懐が広い。いや、そんなことよりもこの状況を誰か説明してくれ!

 「……お父さん、ルネス戸惑ってるわよ」

 助け舟をくれたのは、何の用事か下に降りてきてくれたクレア姉だった。俺は振り返って助けを求める。

 「姉ちゃん、何なんだよ、この状況!」

 「知らないわよ。知ってたとして、なんで教えなきゃいけないの?」

 うわ、つめた!家族だろう?家族なのになんて冷たさ!いつも以上に冷たい気がするのは気のせいだと信じたい……

 「ああ、クレア、どうしたんだい?」

 親父も振り返り、クレア姉に訊く。

 「ん、ちょっとね。……研究に必要な材料を取りに来ただけ。……生物じゃないから安心してルネス」

 なんかそう気を使うように言うクレア姉に、俺は毒気を抜かれる。

 「お、おう」

 俺の答えを聞かないうちに、クレア姉はリビングへと入って行った。

 「親父、いい加減に答えろよ。サクラと知り合いか?」

 俺が訊くと親父は不思議そうな顔をした。

 「……そう言えば、君たち二人、会ったことがあるのかな?ずいぶん親しげだけど」

 「今日公園で会ったんだよ、偶然な。……で、なんでそいつがここにいるんだよ」

 サクラはおいてけぼりだが、今は我慢してもらう。俺だって混乱しているのだ。仕方ないだろう。

 「ははは、それはね、……っと、サクラを長い間外に出しておくわけにはいかないな。おいでサクラ。中で話そう」

 「はい!おじゃましますわ」

 親父に導かれ、嬉々とした表情で玄関に入るサクラ。

 ……どうやら、サクラが家に入るのはどうやら確定だったようだ。













 で、リビングに来た。

 今はそのほとんどの席が空いているが、10人がけの大きなテーブルとその数分の木製背もたれつきの椅子があった。

 親父はカウンターキッチンのある奥の方に座り、俺は親父の向かい側、に座る。

 「……で、お前はなんでそこに座る?」

 サクラはなぜか俺の隣に当たり前のように座っていた。

 「え、いけませんでしたか……?」

 か細く、まるで猫がなくような声で言われて、俺はむげに『駄目だ』と言えなくなった。

 「まあまあ、すぐにわかるから我慢してあげてよ」

 親父が暖かい微笑みとともに言った。わかるって、何がだ?サクラが家に来た理由か、それとも俺の隣に当たり前のように座る理由か?

 「さて、と。君にはさっき進路の話をしたよね?」

 親父が俺に確認するように訊いてくる。

 「ああ。……それがなんだ?」

 「そこで僕は君の夢はかないそうにない、ということも言ったよね?」

 「ああ。腹立たしいことにな」

 「うん、理解してくれればいいんだ。……さて、ここで少し話を過去に戻そうか」

 ……脈絡がなさ過ぎて反応に困るぞ、親父。

 サクラは興味しんしんで聞いてるし、親父は話す気満々だ。俺も聞かないわけにはいかないのか?

 まあ、いいか。すぐに終わるだろうし。

 「昔、あるところに吸血鬼の夫婦がいました」

 ……おとぎ話なんて聞かせてどうするつもりだ?しかも吸血鬼の話って、なんか関係あんのか?

 「その夫婦には子供が一人、いました。その子供は大人になり、旅に出ました。そして、二度と帰ってきませんでした」

 ああ、もしかしてその子供を殺したのが人間で、夫婦は復讐に燃えるって話か?

 「しかし、子供は別の人間になって帰ってきました。髪の色も、目の色も性格も違いましたが、その子は確かに、二人の子供でした」 

 ……意味がわからん。さすがに何が言いたいのか聞きたくなったぞ。

 サクラの顔に疑問の表情がないので、もうしばらくだけ聞いているか。

 「その子供は夫婦のもとで暮らし、今もなお、生きているということです」

 ……続きは?

 「おい、どうした?」

 急に何も話さなくなった親父に俺は訊いた。

 「……え、まだわからない?……しかたないなあ……」

 なんか俺がとてつもなく察しの悪い子みたいに取られてる。……なんか癪だ。

 「あるところに、二人の旅人がいました。二人は長い間旅をして、そしてある町で想いを通じ合うのです。二人は想いの通じたその町に長らくいつくようになり、そこで一人の子供を授かるのでした。その子供は今も暮らしていて、何も知らずに平凡がほしいのなどと言うそうな」

 ……続きは?

 「おい、どうしたんだ、親父?」

 そう訊くと親父にしては珍しく、あきれ返って言った。

 「……君、もっと察し、というか推理力をあげた方がいいよ。コトリから推理小説を借りて読むといい」

 「そんなのはどうでもいい。続きを話せ、続きを」

 俺はどうやら話の内容に引き込まれたようだ。どこにでもあるような短い話なのに、続きが気になって仕方ない。

 「はいはい。……二人の旅人の子供の父親と、吸血鬼の夫婦の子供の父親は友達でした。そして、二人はある約束を交わすのです。『なあ、俺の娘とお前の息子、許嫁いいなずけにしねえか?きっと面白いことになると思うぜ』『……そうだね。でも、二人が嫌がったらやめる。これが条件だよ』『わかってるよ、お前はそういうやつだってな』……こう言った言葉が交わされたそうです。そして、旅人の息子と、吸血鬼の娘は許嫁になったのでした。……めでたし、めでたし」

 めでたしめでたしかどうかはさておいて、なんでこの話をしたんだ、親父は?

 「で、おとぎ話ありがとよ、楽しめたぜ。……で、なんでサクラはここにいるのか、説明してもらおうか?」

 俺は親父に訊く。なんかはぐらかされそうなので、できるだけすごみを利かせて。

 「……ほんと、君は推理力皆無だね。サクラは気付いてるよ?」

 親父に言われてサクラの方を見ると、何かに気づいて、そして頬を赤らめて、俺を見つめている。……なぜ?

 「じゃあ、答え合わせだ。さっきの話に出てきた二人の旅人。それが僕とサラ。そしてその息子は、君」

 ……て、ことは。

 「俺には許嫁がいるってことか!?」

 なんだよ、それ!けっこううれしいじゃねえか!どんな子なんだろうな……平凡じゃねえかもしれないが、まあ、それは、なあ……決まったことだし、仕方ないって言うか……

 「で、吸血鬼夫婦がリ……ちがった、サクラの両親だよ」

 ……は? 

 「……と、いうことは?」

 俺はたまらず、訊く。よく考えてみろよ?ばかばかしくて笑えるぜ?

 だって、たまたま会ったきれいな女の子が親父の知り合いで、そして、そして……













 「と、言うことは、だ。サクラは君の許嫁、ってことになるね」

 ……そんなこと、普通ありえるわけがない。

 どこのラブコメの主人公だよ、俺。もし次から次に女の子に求愛されるとかになってみろ、シャレにならねえぞ?

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