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最終話~平凡を目指して!~

 朝、僕はいつものようにリビングでサラの淹れたコーヒーを飲みつつ、お気に入りのソファに腰掛けた。

 「……今日に入ってもう五十人か。やれやれ、犯人は一体何考えてんだか」

 僕はテレビが流す異常な数字を見ながら、カウンターキッチンで朝ご飯を作っているサラに話しかけた。

 「ほんとよね。五十人も攫ってなにしたいんだろ?」

 連続犯とは限らないけどね。とは言わないでおいた。他人を攫う人間がこの町に二人も三人もいるかもしれないなど不安にさせるようなこと、わざわざ言う必要はない。

 「だよね。警察もどうやらその意図を探ってるみたい。目的が分かれば少しは対策しやすくなるからね。……でも、今のところ老若男女問わずだからね。もう少し時間掛かりそうだよ」

 本当は捜査の目途すらたっていないのだが。まあ、これもわざわざ言う必要のないことだ。

 「そうそう、サラ。クレアの調子はどう?」

 今から一週間前、恐慌状態に陥った彼女を救ったのは僕でもなければサラでもなく、彼女がいつも着ているコートだった。

 クレアはコートを着たサクラを見かけるとすぐにそれを力づくで剥ぎ取り、着た。すると今までの怯えた様子はどこへやら、いつものクレアに戻っていた。

 「なんかね、あれがないと情緒不安定になるんだって」

 コートのない時のクレアの様子は情緒不安定では片づけられるようなものではなかったが、まあ、クレアがそう言うならそうなのだろう。

 「深く訊くな、って?」

 「ううん。私には言ってくれたよ。でも、ルウには教えないで、ってさ」

 「そう」

 なおさら僕の関することではなくなったな。クレアが僕に言いたくないなら、僕は訊かない。もし無理に訊いても貝になるだけだろうし、それならじっくり話してくれるようになるまで待つさ。

 「今回は割とうまくいったかな。ルネス達が頑張った結果だね」

 「そうね」

 クレアのことに関しては完全に後手に回ったが、それ以外のことならほとんど対処できた。

 サクラの居場所はルネスに教えさせたし、イノベートに関してもサクラの記憶を思い出させた程度で済んだ。

 サクラのことに関してはそのことでルネスとサクラの仲は深まったのだから結果オーライと言えよう。

 相思相愛か。……うん、家族はやっぱり幸せでないとね。

 これで、僕の家族がさらに幸せになった。

 「……さて、サラ。今度の土曜日旅行にいかないか?」

 「え?なんで、急に?」

 「ん、そうだね、息子に恋人ができた記念、かな?」

 正直口実なんてどうでもいい。クレア全快祝いでも、サクラを家族に迎え入れた記念でも、なんでもいい。要はボクとサラが旅行をすればいいのだから。

 「わかったわ。……うん、楽しみにしてる」

 ちなみに今日は水曜日。今日からどこに行くかとか、二人で話し合うんだ。

 ……うん、楽しみだ。

 僕とサラも幸せにならないとね。

 僕だって、家族の一員なんだから。

 ルネスの言うように、平凡になるのもいいのかもしれないな。

 僕とサラが老人になって、よぼよぼになっても、孫やひ孫たちに囲まれて、楽しく暮らす…… 

 うん、それもいい。

 そうだな。あと二万年ぐらい旅を楽しんだら、考えようか。

 それまでは来るべき平凡に備えて、目いっぱい楽しんどこう。

 僕とサラは、不老の旅人なんだ、もっともっと、旅を楽しめる。

 









 さあ、次の旅行はどこに行こう?





















 俺、ルネス・ペンタグラムの後日談、というかあの後の話。

 あの日サクラと一緒に帰ると、家は騒然となった。

 まず母さんがサクラを見るなりサクラの着ていたコートをはぎ取り、二階へすさまじい早さで持って行った。

 その後しばらくして、しばらくぶりにクレア姉がリビングに降りてきた。三日間食事をしていなかったのかかなりやせ細っていたが、本人は気丈に振る舞っていた。

 どうやらクレア姉、コートがないとまともに生活できないらしい。……なぜか聞こうとしたら拳銃突きつけられたので、俺は知らない。

 で、次にサクラがクレア姉に謝ろうとまた残酷でえげつない謝罪方法を提示してきて、また俺は建設的な普通の謝り方を教えたのだった。

 最後に、俺とサクラのこと。

 サクラは毎日俺のところで寝泊まりしてるが、そっち系の仲は一向に進展しないし、普通の仲も進展したとは言い難い。

 ……まあ、全部俺のせいなんだけど。

 サクラは一週間過ぎた今でも普通に昼は弁当持ってくるし、毎日「好きです」って言ってくるし、夜は夜でなんか誘惑されるしと、聞く人が聞けば殺されかねないほど幸せの真っただ中にいるのだが……

 俺が全くなびかないせいで、まったくと言っていいほど仲が進まない。

 好きか嫌いかで言われたらもちろん好きだが、でもこの気持ちと恋愛感情はもっと別な気がするし、サクラの気持ちに応えたら応えたでどう考えても高校生が送るべきでないただれた生活になる気もするし、ただでさえいつクラスの連中に殺されるかと怯えてるのに、もし関係を結んだとなれば……それは想像に難くない。

 「……殺してやろうか、てめえ」

 最後に、シドウのこと。

 「へ。やれるもんならやって見やがれ。サクラが悲しむぜ?」

 「ちっ……てめえ、いらねえ知恵つけやがって……毎日惚気られるこっちの身にもなってみろ!覚えてやがれ、いつか殺してやる」

 「はいはい」

 こんな不穏当な会話を一週間俺とシドウはずっと続けているわけだ。

 まあ、こいつもリンクに続く友達……ということでいいのか?

 シドウは口調こそ穏やかではないが、根はやさしいし、いいやつだ。いちいち殺すとか言わなきゃほんとにいいやつなんだけどなあ……

 「……ルネス様」

 一瞬のうちに、シドウとサクラが入れ替わる。もう慣れたものだが、それでもいきなり人格を代えられると少なからず驚く。今度からは合図でもしてもらおうか?

 「ん?」

 「学校に行きましょうか。そろそろ時間ですわ」

 「おう、わかった」

 「好きですわ、ルネス様」

 唐突に、サクラの毎日の日課、俺への告白を済ませる。

 「ありがとよ」

 俺はそっけなくそう言ったが、多分顔は赤かっただろう。その反応に満足したのか、サクラはぱあっと微笑んだ。

 ま、俺は今日もこうやってサクラ/シドウと親父たち、そして血の繋がっていないけど家族の姉達と、平凡ではないけれど、楽しく、面白い日々を送っている。これで平凡な家庭だったらどれほどいいことか。

 能力とか、戦闘とか、そんなの抜きで今を楽しめたら、どれほどいいだろう。

 ……まあ、俺の夢はあきらめたわけじゃねえけどな。

 さて、今日も頑張るか。

 玄関で靴を履きながら思う。サクラももちろん俺についてくる。

 「じゃあ、行ってきます!」

 「行ってきますわ!」

 さて、行くか。

 いつものように、













 平凡を目指して。

 

 こんにちは、作者のコノハです。

 今回で新しいシリーズ、「平凡を目指して!」は終了です。

 では、解説というか、おまけをすこし。

 今回の話は前作「異世界を渡る旅人達~クレア編」の16年後の世界となっております。

 まあ、読んでなくても楽しめるように作ったつもりですが……もしわからなかったらすみません、作者の力不足です。

 主人公ルネスはルウ、サラとの間にできた子供、と言う風になっておりまして、作者が目指すのは「何代でも続くファンタジー」なのであって、現在二代目、と言うわけですね。次の話はもしかしたらルネスとサクラの子供が主人公な話かもしれませんね。

 ……冗談ですけど。

 次回は少し脇道?にそれて「クレアの旅日記」を初めて行きたいと思います。

 両親と同じく旅人になったクレア、その旅の日記です。

 基本的に三人称です。

 紀伝体の日記です。

 ではでは、次回、「クレアの旅日記」にて、お会いできることを祈って……

 







 ご愛読、ありがとうございました!

 








 追伸。感想ご意見、お寄せください。よければ評価もしてください。作者の愚かさも読者様の言葉で治るかも知れません! 

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