第16話~悩む少年~
「……そうだな、三日待ってやる。三日後、またここに来い。てめえの答えを聞かせろ。
サクラと付き合うか、そうでないか。
真剣に考えろよ?もしふざけた答え方しやがったら即座に殺してやるからな。」
あの時から、もう二日が経った。
もはや何の手掛かりも必要なく、俺はただ答えを探すのみとなり、そうなると学校にも行かなければいけないわけで、昼休み。
「……どうした、ルネス。昨日に増して顔が暗いぞ?」
「ったり前だよ馬鹿野郎。人が悩んでるってのに……」
ついつい、リンクに奴あたりしてしまうが、それもしかたないことだろう。
昨日は散々だった。サクラが消えたことを周りの連中から問い詰められるし、旅に出たっていう言いわけもシドウ(事情を知らなければサクラにしか見えない)を見かけたって目撃証言であっさり崩されるし、教師にも聞かれてまたおんなじことの繰り返しをさせられたりで、本当に忙しくて考える暇なんてなかった。
「やれやれ、お前がそんなんじゃニュースも見てねえんだろうな。今街で一人歩きを避けるよう呼びかけられてんだって」
「は?なんだよそれ」
「やっぱり知らなかったか。一昨日と昨日で行方不明者がこの町で30人だってよ。警察の発表じゃ誘拐の可能性が高く、老人から子供まで見境なしで危険だから街を一人でうろつくなってことだ。昨日サクラのことを教師連中が問い詰めたのも、誘拐されたんじゃないかって心配だったからだろ」
行方不明者が……30!?
「なんだよ、それ!30人って、なんで!?誰が!?おい、リンク、答え」
「静かにしろ」
「っ……」
熱くなっていた俺を、リンクがなだめる。……いや、威圧で押さえつける。
「そう訊きたいのはお前だけじゃない。このクラスにも、家族が攫われたってやつもいるし、……本人が攫われたってやつもいる」
……本人、だと!?
誰だ?
「……柊風花。柊財閥の次女で、このクラスの委員長。今姉の風羽が全力で探している最中だそうだが、見つからないらしい。……わかるな、お前が騒いだところで柊の友達に悪い想像させるだけなんだよ。クラスを暗くしたくないなら黙ってろ」
普段お茶らけているリンクのすごみを利かせた声に、俺は何も言えなくなる。
柊風花。俺も知らないわけではないが、接点はほとんどなかったといえる。知らないクラスの奴が消えて、さびしい感じはするが悲しくはない。
でもこれは柊を知らなかったから言えることで、柊の友達は身を切られるような気持なのだろう。
「警察はまだ行方不明者は増えると踏んでる。てめえも攫われたくなかったら用心しろ。今のご時世、男だろうが女だろうが攫われて監禁されたら大抵終わりだ。もし運悪く生き残ったとしても、な」
そう言うと、リンクは一人でどこかへ行ってしまった。その背中はついてくるなと言っているようで、俺も考えたいことがあったから深追いはせず、机の上に組んだ腕の中に顔をうずめ、眠るようにして考える。
……サクラのこと、シドウのこと、家族のこと、クレア姉のこと、行方不明者のこと。
ここ数日で考えることが多すぎる。
「くそっ……」
サクラ……俺は一体どうしたらいいんだ?
「……サクラ……」
俺は知らぬ間に、空の色をした彼女の名前を、口にしていた。
「親父」
帰宅して、俺はリビングへ行った。
親父に、訊きたいことがあったからだ。親父はいつも通り、リビングにいた。親父の後ろでは母さんが皿洗いをしている。
「なんだい、ルネス?小遣いなら昨日あげただろう?」
「……家族のこと、話してもらおうか」
俺はそう訊いただけだ。何も特に言及していない。
「……それをどこで聞いた?」
それなのに、親父はそう厳しめの声で訊き返してきた。
普段から怒ることのない親父にしては、珍しいことだった。
「シドウにだよ。シドウが拾われた、ってところでてめえの家と一緒だ、って言ったんだ。……どういうことだ?」
そう言うと親父は軽く息を吐いた。
そこにはどこか諦めたような、何か普段とは違う雰囲気が、そこにはあった。
「……君は、家族のつながりって何だと思う?」
「心だ」
俺は即答する。最近は血がつながってても殺し合いをするような連中が増えてるんだ、血が繋がりの証拠と言うわけではないだろう。
「……それを聞いて安心したよ。君の家族はね、ほとんど血がつながってないんだ」
……は?
俺は、露骨に嫌な顔してそう言ったんだと思う。親父は少し悲しそうな顔をして、もう一度言った。
俺の今までの生活を覆すような、重大な事実を。
「君と血がつながってるのは僕とサラだけ。あとはみんな、僕が昔に拾った孤児なんだ。……まさか、血がつながっていないから家族じゃないなんてこと、言わないよね?」
言わねえよ。言わねえけどよ。
「なんで……っ!」
なんで、それを今まで黙ってた!




