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第13話~クレアの敗北~

 「な、シドウ?何言ってんの、サク……………っ、多重人格か!」

 疑問を口にしきる前に真相をつかむなんてまあよくやるよ。

 オレには到底無理だね。なんたってオレは。

 サクラの言うところの、汚らわしくて存在してはいけない存在なんだからな。

 「かはは!よく気付いたな!オレを見破ったのはてめえで最初だよ!いいこちゃんにはご褒美あげなきゃな!ほら、安息だぜ!」

 言って、走る。

 短い路地だがオレも女もこの距離をアドバンテージと考えるほど素人じゃねえ。銃の一撃をよけたら一気に殺す!

 右のナイフははじかれたが左のナイフはまだ生きてる。

 左手の中にナイフの感触を感じて、オレはようやく自分の存在を自覚する。

 「っ……!好戦的過ぎる……!ごめんサクラ!」

 「オレはシドウだ!」

 叫んで、拳銃の引き金を引くクレアにオレも叫び返す。

 一発、オレは跳んでよけた。

 そして、着地すると、目の前には、この拳銃女が。

 手にはナイフ。

 することは、決まってるだろ――!!

 「かはは!死にな!」

 女の首にナイフをあてがい、押しつけ、そして、引く!

 「くっ……!」

 「ちぃ……」

 しかし、ナイフを引く前に、手が止められた。勘のいいやつ。

 「あ、あなたサクラに怒られるわよ?いいの?」

 「構わねえよ。オレはオレだ。サクラとオレとは別人だ。まあ、サクラは死にたがってるみてえだし、オレもあんなの思い出しちまったら生きてたくねえし、とりあえずてめえ殺したら死ぬことにするぜ。うれしいだろ?あと追ってくれるやつがいんだぜ?」

 オレは笑って腕を引く力を込める。しかし、一ミリたりともオレの腕が動く気配はない。

 ……ち、なんだこいつ!?こんな細っこい腕のどこにこんな力が……!

 「よく考えなさいよ。あんたが死んだら、ルネスが悲しむわよ!?」

 「うっせえ!オレはあんな奴に悲しまれてもまったくつゆとも困らねえな!」

 そのはずなのに、なんで俺の心は今チクリと動揺したんだ?

 サクラが起きてきているのか?まさか!

 「オレはあいつの望みを叶える!てめえは邪魔だ、殺してやる!」

 あいている右で握りこぶしを作り、女の油断たっぷりな腹に渾身の力を込めて、殴る!

 「カハッ……!」

 ナイフを止める手の力は緩めないが、女は姿勢を崩して膝をついた。

 「かはは、オレは卑怯な手を使わねえとでも思ったか?まさかな?オレはシドウ。サクラとは別人なんだぜ?」

 しかし、よくよく考えればこいつを殺した後サクラに代わって、返り血を浴びた自分を見たらさすがに動揺じゃ済まねえだろうなあ。

 じゃ、血の出ねえように殺しとくか。

 ナイフを手放し、両手ともフリーにする。

 この女どうやらもう虫の息で、オレがナイフを手放したことにも気付いてねえみてえだな。

 両手を力任せに女の首にあてがい、そのままオレが持てる全力で締める。締める。

 「ぐう……!が、があ……!!し、シド……、ま、待って、わ、……私は、……敵じゃ、な……」

 「今更命乞いかよ!?オレに銃弾放ったくせに、よく言うぜ!」

 「あ、あれは、ち……あなたが、……飛び込んできた、か、ら……」

 「はあ!?じゃあてめえは飛び込んできた相手全部殺すのかよ!?そっちの方が問題じゃねえか!?ああ!?」

 「ち、ちが……うう……わ、わた、私は、………」

 「言いわけすんな!大人しく潔く死にやがれ!!」

 オレはいちいちうるさい女を黙らせるため、力をさらに込める。

 「がああ………!く、は、……………たす、たすけ……」

 「死ね!」

 オレが命乞いする女にそう怒鳴ると、女は諦めたのか、抵抗しようとはしなくなった。

 いい判断だ。むやみに抵抗しても苦しいだけだしな。諦めたからと言ってオレは手加減する気はないけどな!敵は殺す!

 「ぐ、あ、……っく……あ、ああ、……っつ………………あ、……あ、……お、おとうさ、……ありが、…………………………ルネ、……クラと…………がんばっ、………………ララね、……スを、……よろし、……………おかあ、………うさんと、………しっか、………………………み、みんな、………………ご、ごめ………………………………………ん…………」

 くたりと、女の全身から力が抜けた。……死んだ、か?

 女の首から手を離す。首にはくっきりとオレの手形があり、どれほどの力で締めたかをしっかりと物語っていた。

 ……あそこでされたよりはまだましか。

 オレはそう思うと、女の死体をあさる。こいつ、銃器以外にも何か持ってそうだな。

 コートの中は……何もない。ポケットもなければ仕込んでいる形跡もない拳銃のホルスターさえ見つからなかった。

 ……?じゃあどうやってこいつは拳銃を携帯してたんだ?

 まあいい。どうせ死んだ女だ。とりあえずこれはもらって行くか……。

 オレは女からコートを奪うと、それを着る。

 もうすぐ冬になるころなので、コートを着るのは不自然ではないが、でも……

 「……なんだこれ」 

 なんかめちゃくちゃ丈が長い。ぶかぶかというわけではないのでサイズはあっているのだろう。ということは仕様か?

 足首まで丈があるってどんなコートだよ。

 まあ、あったかいからいいけど。

 「……さて、死に場所求めて、さまようか」

 それに、一つ思い出したことがあった。

 オレは、不老不死だ。

 生半可な傷ではもちろんのこと、頭が吹っ飛んでも死なねえってのはある意味呪いだな。オレが死ぬのには多分、完全に細胞レベルで消滅すること、ぐらいしか思いつかねえ。……溶鉱炉に飛び込んでも暑くて痛くて苦しいだけだろうな。

 ……まあ、すぐに思いつかなくても探してたらあるだろ。この女みたいにすぐに発砲してくる奴がいるほどこの世界は危ないわけだし、オレを殺せる奴もいるのかも知れない。

 「さて、行くか」

 オレは名も知らぬ女の死体を背に、冬になりつつある街をさまよい始めた……

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