表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クソゲーに閉じ込められた俺のクエスト  作者: 葉月 優奈
一話:博士が作ったジャガーのミュータントが復讐するゲーム
4/55

004

(RYUKA‘S EYES)

人が、消えた。

あたしは、意味が分からなかった。

目の前で見たモノは、夢でも幻でもない。


「何、何なの?」

驚きで声が漏れた。

一瞬で機械の中に引き込まれて、一瞬で人が消えた。


ここにいたはずの徳次郎は、それまで普通に存在していて急に消えた。

テレビの前に座っていた彼の姿は、ない。

見えるのはピンク色のカーペット、彼が座っていたはずの空間には何もない。


この場所にいたはずの人間が、消えてゲーム画面に吸い込まれた。

ゲーム画面を見ると、変な画面が見えた。

映っていたのは、人型のジャガーが三匹。


(なに、この気持ち悪い生き物……)

目の前に人型のジャガーのアップ、だけどジャガーの人はドット絵だ。

テレビ画面には、もう一人映っていた人物がいた。


「徳次郎!」ゲーム画面の中に、徳次郎がいた。

黒い画面の中に徳次郎の姿が、ドット絵……ではなく実写の映像として描かれた。

テレビに語りかけても、声が届かない。

それでも、あたしは必死に声をかけていた。


『コントローラー ヲ モテ』という、文字だ。

あたしは、置かれていたゲームコントローラーを見ていた。

徳次郎が握っていた1Pコントローラーは、なぜかケーブルの先から切れていた。

鋭利な刃物で斬られていたケーブルを、あたしはぼんやりと見ていた。


(どういうことかしら?)

刃物が見えた様子はない。

だけどコントローラーの先は、彼……徳次郎と一緒に消えていた。

機械のアームのようなモノがチラリと見えたけど、あたしはよく分からない。


(迷っている暇はない、とにかくやってみよう)

あたしは、2Pコントローラーを握った。

握った瞬間に、声が聞こえた。


「聞こえるか、龍華」

テレビから声がした。聞こえるのは、よく聞いたことのある徳次郎の声。

テレビ画面に、ドット絵の徳次郎があたしの方を向いていた。


「うん、徳次郎。どういうことなの?」

「俺だって、わかんないよ!」不安そうな徳次郎の声が、ゲーム画面から聞こえた。

実写の姿でゲーム画面の中にいる徳次郎も、コントローラーを持っていた。

彼が持っているのは、消えた1Pコントローラーの先端。


「だけど、こいつらが俺の味方になってくれるらしい」

徳次郎の前には、三人の人型ジャガーが立っていた。

いずれも人型で、二足歩行する不思議なジャガー。


「それって?」

「分からないけど、俺を助けてくれた」

「ええ、それはなんとなく分かる」

さっきテレビ画面に映った映像、ジャガーらしき人間が徳次郎を助けたシーン。

だけど、彼らは何者か分からない。

見た目はアメコミ風のキャラクターのようだけど、出来損ない風だ。


「良かったよ、グット!」

「じゃない。ここはどこなんだ?」

「ゲームの中の世界みたい」

「ゲームの中?」俺は首を捻った。


「そう、君はゲームの中にいる」

「誰だ?」

次の瞬間、闇の中から一人の人間が姿を見せていた。


それは見覚えのある、中年男だ。彼の姿はドット絵の人物。

緑色のシャツに茶色のズボンをはいた、中年男がゆっくり画面の中の徳次郎の方に歩いてきた。


「ようこそ、『クソゲーフェスティバル』へ」

いきなりハイテンションで、両手を広げてきた男。


「お前がやったのか?」ゲーム内の徳次郎が、男と会話をしていた。

「君は、このゲームの世界の人間になったのだよ」

「お前が俺をこんな所に、閉じ込めたのか?」

「そうですよ、紹介が遅れました。

私は吾亜(ゴア)、この世界を造りし絶対なる神です」

「吾亜?何でもいいから、俺を解放しろ!」

「君には、これからクソゲーを楽しんでもらおうと思ってね。

是非、君には私が集めた最強のゲームを四本楽しんでもらうよ」

吾亜は、不敵に笑っていた。

だけどゲーム画面の徳次郎は、緑服の中年の男に詰めようとした。

しかし目の前の男を掴もうとしても、徳次郎の手はすり抜けた。

中年男は幻影で、触れることができない。


「僕は無敵だ、君には触れることはできない。

僕はクソゲーの制作者……つまりは神だから」

「はあ、冗談じゃない。

俺はこんな世界に閉じ込められるほど、暇じゃない!」

「何を言っておる?私が集めた四本のゲームを、君に楽しんでもらうためにここに来させたのだよ。

いやあ君達は、まさかNESを持っていたとはね。

すっかり忘れていたよ、このカセットは北米製だったのを」

「持っていたのは、あたしよ」ようやく口を挟むあたし。

テレビ画面にいるコントローラーを持ったあたしは、二人の会話をじっと聞いていた。

だが、これは悪夢だ。悪夢ならば、冷まさないといけない。


「そうか、なるほど」

「おい、それよりゲームって何のつもりだ?」

「『クソゲーフェスティバル』という私のゲーム、最強のクソゲーだ」

「クソゲーって、俺はやるつもりは……」

「四つのゲームをクリアしないとここから出られない、としても?」

「はあ、なんだそれ?」

「これは『クソゲーフェスティバル』なのだから。それと君……」

あたしは、思わずリセットボタンに手を伸ばそうとした。


「君は、リセットをしようとしているのか?」

「こんなゲームを終わらせれば……」

「このゲームをリセットした瞬間、彼は二度と出られなくなる。

それでもよければ、リセットシタマエ」

最後はなぜか片言で話す、吾亜の声。

あたしは、リセットボタンに伸ばした手を……震わせて押すのをやめた。


「さて、早速だけど最初のゲームのルールを発表しよう。

このゲームのルールは、全6ステージを、彼らを使いクリアすること」

「彼ら?」

「そう、ジャガーのミュータント。ジャガーマンだ」

俺の後ろには、三人の二足歩行ジャガー『ジャガーマン』がいた。

見た目はほぼ一緒だけど、持っている物が少し違う二足歩行のジャガー達。


「ジャガーマンの残機は5、ライフは4。コンテニューの制限はない。

6ステージ目のボスを、倒せばクリアだ」

「アクションゲームか?」

「そう」徳次郎の問いに、吾亜は素直に答えた。

「では、ゲームスタートだ」

吾亜が言うと、あたしの目の前のゲーム画面が変わっていた。

それは土の地面と、背景に森が見えていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ