021
――とくじろうくえすと:2章・竜宮城最深部――
この2章の、この場所に来るまでに、様々なことがあった。
1章では尾張の後に、浪速や安芸を歩き回った。
魔界臭は、いろんな実験をして人類を滅ぼそうとする集団だ。
悪代官になったり、大阪城の城主になったり。
そこで、カラクリ城……と言う名の大阪城を攻略した。
穴がパカパカ自動で開く不思議なドア。
急に槍が壁から生えてきて攻撃するギミック。
さらには、罠だらけの宝箱。
それでも、俺は1章の章ボスを倒して2章になった。
2章は四国が舞台。四国のコスモロロンを探しに宇宙祠へ。
しかし、宇宙祠は既に荒らされていた。奪われたコスモロロンを探しに竜宮城へ。
そして、いろいろあって今俺が戦っているのが『ウツボオウ』。
攻略サイトは、RPGにとって有益だ。
隠し宝箱、強い武器、戦い方。全てが書かれていた。
1章でもそうだったけど、2章のボス戦も有効だ。
「兜割りでっ!」
ウツボオウの姿が、変わった。
一発の攻撃は、やはり強力な『兜割り』。
なかなか当たらないけど、当たれば大ダメージ。
「これで、トドメっ!」
緑色の海坊主を俺は、得意の兜割りで斬りつけて倒した。
「おおっ、凄いね」
「ありー」龍華に答えた。
『コスモロロン』を手に入れたと、二度目のメッセージが見えた。
すぐさま、隣の磔台で縛られた女の縄を切る。
持っていた小刀で、縄を切った。
水色の着物に、赤の羽織。草鞋を履いた素足が見えた、少し色っぽい少女。
黒く長い髪。見た目というか、顔は完全に龍華に見えた。
「龍華だ!」
「え?何?」
「この子、龍華にそっくりだ」磔台から降ろした龍華は、やはり俺が知っている龍華と同じ姿だ。
ゲーム内の登場人物である龍華が話を始めていた。
話を始めて、いきなり泣き出した。
「おい、泣くなよ」思わず、俺が声をかけた
「泣いてないって」反応したのは、天の声の龍華。
「ああ、ごめん」声もそっくりというか、全く同じ龍華。
どういうことだろうと考えると、吾亜の言葉を思い出した。
(俺の記憶を呼び覚まして、俺を主人公にしたゲームにした。
だとすれば……俺の知っている登場人物が出てくるのだろうか)
そんな事を考えていると、目の前の龍華が凜々しい顔で俺を見ていた。
「あたしも、戦います!」と、ゲーム内の彼女は宣言して俺の仲間になった。
すぐさま俺の後ろに、龍華がついてきた。
「龍華」
「なに?」仲間になった龍華が、そのまま外の龍華の声となってダイレクトに喋ってきた。
「おおっ、そっちから声が聞こえるのか」
「みたいだね」
「この後は?」
「自動的に、竜宮城の外に出るから……」
腰まで長い黒髪は、どこか清楚な雰囲気を見せていた。
「な、何?」
「いや、龍華。その髪型似合うなって?」
「そう?なら、今度イメチェンするかな」
「いいかもな。ロングストレート」
イベントが勝手に進む。勝手に歩いて、竜宮城の外に着いた俺と龍華。
大きな亀が、駅前のタクシーのように止まっていた。
俺と龍華は、そのまま大きな亀に乗ると亀は海の外に出て行った。
イベントの亀に乗りながら、俺は龍華と話を続けた。
「龍華は、どんなキャラだ?」
「超能力使いらしいよ」
「エスパーみたいだな、その言い方だと」
「超能力は、『とくじろうくえすと』の魔法みたいなものよ。
徳次郎だって、回復は使えるでしょ。
「『ほむすび』だっけ?これしか使っていないけど」
『ほむすび』は、回復する超能力。
「そういえば、俺のキャラは特技(親父ギャグ)があるけど……龍華は何かあるの?」
「うーん、二つあるけど一つは終盤のイベントにならないと使えないわ。もう一つは……」
亀の上にいる龍華は、完全にシンクロしていた。
リアルの龍華が調べて、急に手をバタつかせた。
「セクシーなあたしの本気よ」龍華は、なぜか俺を誘惑していた。
仲間になったキャラは、感情がはっきり変わった。
妖艶な龍華は、俺の事をじっと見ていた。
会話をしていると、間もなくして亀が陸地に辿り着いた。
長かった一連のイベントが終わり、ようやく俺は操作ができるようになった。
早速、ステータス画面を見た。
名前はそのまま龍華だ。ひらがな表記だけど。
なるほど、特技は『お色気』か。色気で男性から、情報を引き出す……ね。
(確かに龍華は、色気あるかもな)
俺よりも、一つ年上の龍華。
かなり胸も大きかったし……はっ、何を考えているんだ。
後ろの龍華は、俺の事を誘うようにチラチラと水色の着物の裾を見せてきた。
いかんいかん、他の情報はと……なんだ。
気になったのはりゅかの種族だ。なぜか「?」になっていた。
「この『?』って?」
「乙女の秘密よ」龍華が人差し指を立ててかわいく言う。
「乙女の秘密って、この?は性別だぞ。まさか男とか……」
「絶対に、そんなことはないから!」
すぐさま、怒った様子で龍華が否定した。
「レベルは1か。最初からレベル上げ。武器も防具もない。
これは少しレベル上げが必要だな」
「うん、龍華は命が少ないから」
「そうだな、まあそろそろ3章だろ。そこで上げるか」
「うん、安芸に行けば着くわよ。それより……」
「なんだ?」
「今は夜の11時だけど。このゲーム、まだまだかかりそうね」
俺は改めて、RPGがかかることを理解した。
どうやら、ゲーム内の時間もリアルと同じ時間の流れだ。
「そうだな、先は長いな。ところで龍華」
「どうしたの?」
「このゲームは、何章構成だ?」
「えっと、全部で10章よ」
「は?」俺は一瞬、固まってしまった。
そして、頭の中で計算をし始めていた。
今は夜11時。たった2章で7時間。単純計算であと5倍。
つまり、このままいくと35時間かかる。
「マズイマズいぞ」
「どうしたの?」
「1月7日、俺は学校だ。
このままのペースでクリアしたら、間に合わなくなるぞ!」
俺の言った言葉に、龍華も反応した。
「あたしもよ!」後ろの龍華も、同じように叫んでいた。




