いろいろありつつほそぼそと
宿に帰る前にギルドと《新風亭》に寄った。
果物の風味が濃い方の果実水を頼んで一休みする。
冒険者が続いて来ている。
今日は商人市場で買い物だった。
人出は家族連れやカップルが多くてほほえましくもあり、うらやましくもあり。
祝い事の街の風景だ。
好みの物はなかったので迷ったが結局は安価品となりそうだ。
茶色の耳が見え隠れして、プラムが近づいてきた。
「アケオメ!」
「あけおめ。改めて今年もよろしくな」
「ウン!」
ここのところ獣神アルチェの神殿に関わりっぱなしだったとのこと。
知ってはいたので心配はしてなかった。
そういえば参拝の時に見なかったな。
「めちゃくちゃ大変だった…」「そうか」
「でも稼げた!エヘヘ」
「何か目当てがあるのか?」
「新しい防具が欲しい。軽くて丈夫な奴で臭くなくて…」
「そりゃ探すほうが大変だな」
「ウン。まだ見つかってない」
約束があって、いい防具を手に入れたら一緒に連れて行ってもいいと言ってある。
元のパーティーには言ってないが腕のいい獣人ならすぐに慣れる。
一人の方が稼げるだろうが本人の希望だ。断る理由もない。
「ジャアネ!」「おう」
元気よく尻尾が揺れる。子供に見えるが成人してるし、オレよりは稼いでる。
寝具の価格の説明は素人にはわからない。
寒くなければいいが、持ちも大事だ。もしも失敗だったら依頼の途中で休めないことになる。後日買い直すのは最悪だ。
出費が続くのは経年劣化がいろいろ出ているのだ。仕方がない。
みな持った方だとは思う。
ポテトも頼んでおけばよかった。
大き目の杯が空いたので店を出る。
小腹が空いてきてしまった。
当たれば大金を得られる絵合わせくじは外れた。
大神はもとより、ほかの神々もいなかった。
踊る動物たちの絵が慰めてくれている…。
金貨1枚が神殿の懐に納まった。貯金なんだこれは。
いろいろありつつも、オレ達の冒険者生活は続いていくのだと思う。
そんな年明けだ。