冬の生活2
施術院の帰りにいつもと違う酒場に入った。
商店街の近くにある落ち着いた色遣いの店だ。
とは言ってもお客さんの会話で静かな店ではないけど。
疲れてしまったので、安酒を頼んで待つ間もウトウトしていた。
不用心だが着ぶくれしたまま動きたくない。
出てきた安酒が意外に旨かった。久しぶりに甘めの酒を楽しんで、元気を回復する。
程よく熱いのがいい。
翳りのある店と書いてあるようだが、かすれていてわからない。
暗くはない。明るすぎもしない。
膨れた大きなスカートの婦人が睨み顔で通り過ぎていく。
心当たりはない。化粧の臭いがするが貴族だと厄介だ。
席に着いてからも眉を寄せているので、そういう顔付なのかもしれない。
メニューをさらりと眺める。以前頼んだものはなくなっていた。
女性スタッフの上げた髪が艶やかだ。スタッフ同士で談笑している声が通る。
交代の時間帯なんだろう、顔ぶれが変わった。
まだ、ゆっくりしていたいが追加を頼むほどではない。どうするか。
先ほどの婦人もテーブルでの会話は弾んでいるようだし、まあそういう事なんだろう。
気にすることはない。
最初から肉料理を頼む元気があれば楽しめたのになあ。
また来ようと思う。
プラムも連れて来てやろうかと思うが、あいつは肉料理の匂い以外は嫌がるかもな。