恋する貴女は気が付かない(百合。片想い。先輩後輩)
「お腹痛い……」
「食べ過ぎですよ、先輩」
「だって、木戸先輩が作ったものだよぉ? そーりゃ食べるよ」
「本当に木戸先輩が大好きですね」
「……好き。大好き」
「それ、言わないんですか」
「告白ってこと? 言うわけないよ。だって」
そう言って、あなたは。
「見ているだけで、倖せだもの。話せるだけで、倖せだもの」
心の底から、倖せそうに微笑んだ。
頬を染めて、目を眩しげに細めて。
ああ、何て綺麗な笑顔なんだろうと思った。
届かない、もの。
「……さようですか」
「あー、小雪ちゃん、呆れてるでしょう」
「呆れてなんか、いませんよ」
ただ、羨ましいだけです。
そんなことも言えない私は、ただの臆病者だ。
見てるだけ、話せるだけでいいだなんて、私は思えない。
思えないくせに、だからと言って、本当のことは少しも言えないのだ。
「とにかく、この薬飲んで下さい。少しはマシになりますから」
「ありがと、小雪ちゃん。頼りになるね」
「……どうも」
END.
『先輩の卒業を絶望に想う少女の話』(https://ncode.syosetu.com/n0294ha/)に出て来る主人公を、後輩視点から見たお話でした。