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最後に回復薬を袋にしまうと、私はリンカーンさんに鑑定料はいくらになるのか聞きました。


「鑑定料はいただいておりません。私の鑑定を信じて売り買いしていただくわけですから、お客様にはそれなりのリスクがございますので。私は良い物を買い取らせていただければ充分でございます」


無料なのは良いけどちょっと引っかかる言い方でした。まあ変なことをしそうな人には見えないけど。

よくよく考えると、鑑定をしてもらったけど装備品を買ってお金を使ったのは私だった気がします。


「クロエ様、これも何かの縁。もし宜しければ私の頼みを聞いていただけないでしょうか」


私が考え込んでいると、リンカーンさんが思い付いたようにそんな事をいいました。私が首を傾げると、リンカーンさんは武具を磨いていた男の子を呼びました。


「この子は店で徒弟として働いています。鑑定を教えているところでして、先程見せていただいた程度のアイテムなら鑑定できる知識は持っています」


「ルーカスです。クロエ様、よろしくお願いします」


ペコリとお辞儀されたので私もつられて頭を下げてしまいました。顔を上げると彼と目が合いました。とても丁寧な子で好感が持てます。客商売なのでその辺りも鍛えられているのでしょう。


耳に少しかかるくらいの栗色の髪をした、近くで見ると可愛らしい顔の少年です。歳は私よりも少し下だと思いますが、私は背が低いので目線は同じくらいでしょうか。もちろん私もまだこれから成長すると思いますけど。


「頼みというのは、彼を迷宮に連れて行って実地で経験を積ませていただきたいのです。迷宮には貴族の関係者か依頼された者しか入れないので困っているのですよ」


なら貴族をお払い箱にしなければ良いのにと思いますが、グレースお姉様みたいなのが来たら面倒なのでしょう。気持ちはよくわかります。


「でも迷宮は非常に危ないですよ?怪我でもさせたら申し訳ないです」


正直、経験値やお金の分配とかもあるし、彼が死ぬ度にリセットすることを考えたら気が進みません。丁重にお断りすることにしました。


「ルーカスは盗賊の職業持ちの冒険者です。宝箱の開錠や罠外しを得意とします。そうですね、最初はお試しで一週間使ってみてもらえませんか。その間の報酬はクロエ様が冒険で得た貨幣の20%でどうでしょうか」


かなりゴリ押しされていますが、私は盗賊職を見たことがないので、そのスキルは興味深いです。20%のお金を渡すだけでいいなら面白いかもしれません。


「そこまでおっしゃるなら、ちょっとステータスやスキルを開示していただいて、私のペースに合いそうならお受けしたいと思います」


冒険者情報の開示は本来ならあまりしたくはないところでしょうけど、見せたくないものは言わなければいいだけです。私のリセットスキルのように。


「ルーカス、どうかね」


「お安い御用です。読み上げるだけなんで聞いていてください」


【名 前】ルーカス

【年 齢】13

【職 業】盗賊

【レベル】31


【 力 】52

【知 恵】37

【生命力】37

【素早さ】68

【 運 】68


【スキル】開錠(4)、罠外し(4)、罠識別(4)、感知、鑑定

【魔 法】


盗賊というのは意外と戦闘向きなのかステータスが高いです。

私の基礎ステータスが低すぎるだけなのかもしれませんけど。

罠識別スキルが魔法と被っているのと、感知というスキルが気になったので聞いてみました。


魔法の罠識別は95%程度の固定で正確さが決まっているようです。スキルの方はスキルレベル次第では低階層の罠は100%の正確さで言い当てれるとか。

感知というのは隠し扉や迷宮自体に仕掛けられたトラップを見つける能力らしいです。そう聞いただけで凄く有用な気がします。隠し扉なんて今までありましたっけ。


「雇います!一週間お試しでお願いします」


「ありがとうございます。では早速明日からよろしくお願いいたします。お試し期間後の報酬についてはご相談といいたしましょう」


絶対ルーカス君の能力が必要不可欠になって報酬を吹っ掛けられる気がします。それだけ盗賊職は冒険に欠かせないものになりそうです。お姉様達はプライドが高いから考えもしなかったでしょうけど。


「ルーカス君、よろしくね!」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


ルーカス君は嬉しそうに微笑んでくれました。


翌日、リンカーン商店にルーカス君を迎えに行ってから、冒険者協会に帰還の魔石を買いに行く道すがら、ルーカス君が話しかけてきました。


「なあクロエ、なんですぐに迷宮にいかないんだ?」


「えっ!?」


空耳でしょうか、先程迎えに行って挨拶するまでと全然しゃべり方が違うような。


「どこかに寄り道でもするのか?俺、早く迷宮に行きたいよ」


「えと、冒険者協会に帰還の魔石を買いに行こうかと思って。ていうかルーカス君ってば、さっきまでと喋り方が違うような……」


私が恐る恐る聞くと、ルーカス君は何だそんなことかという顔をしています。


「師匠の前だと丁寧に話さないと怒られるんだよ。歳も近いんだからこれでいいだろ?クロエもそんなの気にしてるから貴族だってバレちゃうんだよ。ところで、冒険者協会で帰還の魔石を買うって言ってるけど、あれは貴族向けのぼったくり価格だぞ」


ルーカス君の口調も衝撃的でしたが、その内容もあまりにも衝撃的でした。一体いくらが相場なのでしょうか。


「俺の実家も師匠の店ほど本格的じゃないけど雑貨屋をしてるんだけどさ、帰還の魔石なんか銀貨3枚で売ってるぜ。冒険者協会のは金貨1枚だろ?あんなの貴族しか買わないよ」


聞くと、帰還魔法が僧侶魔法スキルレベル6で習得できるらしく、魔石に帰還魔法を込める作業は回復職の副業としては人気ということです。私、3倍も払って何個か買ってしまったのですけど。


「俺、2個持ってるから銀貨3枚で1個売るよ。これで寄り道せずに迷宮に行けるよな」


私はルーカス君に銀貨3枚を渡して帰還の魔石を受け取りました。ていうか、「俺」って……昨日心の中で色々と褒めた私を返してほしいです。


こうして、私はルーカス君と一緒に迷宮を探索することになりました。

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