16.剣技大会とは?(2)
ひと月経って、第三土曜日・・・剣技大会の日がやってきた。
伯爵家から迎えの馬車がやってくる。
「おはようございます。ウェイド様。」
「よう。相変わらず変な顔しているな。せめて俺の横に立っても浮かないよう努力するんだな。」
(朝から変わらぬ毒舌・・・というよりひねくれ具合ですね!)
ウェイドとのやり取りでは、そんなことが沢山あるので気にしたら負けだと思いニコニコする。
後ろにいるマリアは、今にも握りつぶしそうな表情で笑顔を貼り付けているけど。
「お父様とお母様は、我が家の馬車で向かうとのことです。」
「ああ、そうらしいな。じゃあ俺の腕に掴まれ。」
言い方・・・と思いつつウェイドの腕に絡ませてエスコートしてもらう。
「・・・なにか気づくことないのか?」
「・・・何がですかね?」
ソワソワしながら、私を何度も見てくる。
本当は気がついているけれども、意地悪で知らないフリを貫こうかななんて思ってしまった。
「・・・~~~さあ?」
「なんだよそのニヤケ顔はっ!絶対に気がついてるだろ!」
威嚇するように両手をオーバーリアクションでブンブンして怒っている。
本気で怒ってる訳では無いのを知っているから、このままいじめようかと思ったけれど、そろそろいじけるかもしれないので程々にしておく。
「冗談ですよ!この一ヶ月でだいぶ訓練されたのですか?腕も筋肉で太くなってますし身長が伸びるのも早いですねえ。」
そう言うと、ウェイドは誇らしげに胸を張って鼻を高くした。
「当たり前だろ?俺を誰だと思ってる?」
「ウェイド様ですよね?」
「・・・・・・」
ウェイドさん抑えましょう。
顔がひくついてるのは少しイラッときたからだろう。
けれどすぐに怒ることがなくなったのは、凄い成長だなと思った。
だから馬車に乗ってから、思わず言う。
「ウェイド様は、初めの頃からだいぶ印象が変わりましたよね。」
「・・・どういうことだ?」
ムッとした顔でこっちを見るものだから、ついクスクス笑ってしまう。
「なんか優しくなったなと。」
「・・・お前が自意識過剰なだけだよ。俺は何も変わってない。」
プイと横を向いて唇をとがらせる。
こんな所は完全に子供のソレだ。まあ愛情をもらえなかった14歳の少年だから仕方ないけれど。
確かに物言いとかは、全く変わらないかもしれないけれど、表情や私に対しての配慮が一気に変わった。
それがなんとなく嬉しい。
そう、これは多分・・・
保護した野良猫が、ずっと威嚇して怯えていたけれど、ある日を境にちょっぴり懐いた感覚だ。絶対に。
「お前、くだらないことを考えてるな?」
「なんのことですかね?」
プスプス膨れて腕を組む。
いつも思っていたが、ウェイドの仕草が偉そうに見えるのは、一々大仰に足を組んだり腕を組んだりしてふんぞり返るからが大きいんだろう。
「そういうのは、私の前だけにしてくださいね?」
ジットリ見つめて言うと、膨れているウェイドとの視線がかち合った。
「・・・当然だよ。もう外ではしないし。お前の前だけでしかしていない。」
それも問題なんだけどねえ!?と言いたいけれどこらえる。
けれどウェイドの評価が今のままなのは、まだ周りに受け入れられていないから。
それと本人がこう言っている割には、意識をしていても、やっぱり簡単には今までの態度をやめることができていないからだろう。
がんばれウェイドくん。
「フン。着いたぞ、降りる。」
膨れたまま、先に馬車から降りて私に手を差し出す。
剣技場の会場前には、時間が近いからか結構込み合っていた。
今世、大勢の人混みに入ったことがないコミュ障の私は・・・
「来年は時間をずらして入りましょう。」
「心底嫌そうな顔をしているな。けど俺は来年参加するからな?遅い入場は許さないぞ。嫌なら俺と一緒に一足早く剣技場に向かって待合室で時間になるまで待っとけ。」
さらっと妥協案を出してくれるから、やっぱり言葉遣いの割には優しいと思う。
「本当ですか?うそじゃないですよね?」
そう聞くと、さらに不機嫌そうにしてウェイドはエスコートしてる腕を乱暴に引き寄せた。
「お前はしつこいぞ!俺がいいって言ってるし、そういう令嬢も他にいたりするから問題ないんだよ!」
「・・・」
「お前・・・っ!なにニヤニヤ笑ってる!」




