15.剣技大会とは?(1)
「剣技大会・・・ですか?」
「ん。」
ムスッとした顔で、紅茶を飲みながらウェイドが答える。
「来年には、中等部の最高学年だから俺も参加するんだよ。それで今年の剣技大会を見に行こうと思ってな。噂とかも否定したいし、お前も来ないかって聞こうと思ってたんだよ。」
足を組んで、ツンと顎をあげる仕草をする。
ウェイドは相変わらずなこの態度だ。
けれど私たちの関係は、少しだけ変わったように感じる。
「・・・オイ、口の端にクッキーのカスついてるぞ。成り上がりだからってもう少しそういうのに気を使えよ。」
「えっ」
慌てて口元を確認しようとしたら、ウェイドがハンカチを出して乱暴に拭き取ってきた。
「・・・」
そのハンカチには、禍々しい赤色の花の刺繍が咲きこぼれている。あとなんか黒いブラックホールみたいなもの。
「これ、使ってるんですね・・・」
自分で刺したというのに、見た瞬間つい耐えきれずにブフッと吹き出しかける。
「あ?お前に使う分は雑巾で十分だと思ったから持ってきてるだけに決まってるだろ!・・・ったく。」
今度は、私に使うハンカチを用意してくれているらしいと分かり笑いかける。
「なんなんだよさっきから!いちいち癪に障る奴だな!」
「あ、ちなみに剣技大会・・・はいつ頃なのですか?」
私がさりげなく話をすり替えたことには、気が付かず、ウェイドは足を組み直して話し始めた。
「ああ、ジュウィンの第三土曜日に開催される。」
ジュウィンとは、この世界でいう六月だ。
ちなみに今は五月──マーイという。響きが英語に近いね。
「わかりました。予定を空けておきますね。」
「当然だろ?」
そして、ふと疑問に思ったことを聞く。
「あの・・・噂とはなんのことですか?」
それを聞かれるとは思わなかったのか、ウェイドは目をギョロリとこちらに向けた。(多分驚いている表情)
「お前知らないのか・・・成り上がり子爵だとしても・・・いや、尚更そういう情報は知っといた方がいいんだぞ?本当にぼさっとしたじゃがいも令嬢だな。」
(あなたは一々一言多い毒舌令息ですなぁ!?)
「俺とお前の噂ってのはまあ・・・簡単に言えば不仲なのではないかってな。それと俺がお前に暴力を振るってるんじゃないかって噂をされている。」
「えっ・・・!?いやいや、それは・・・」
「してはいない。してはないけどよ・・・」
その後はもにょもにょと小さな声になっていった。・・・言いたいことは分かります。
以前、顔を最初に合わせた時、私は階段から落っこちたのだ。
挨拶早々に、婚約者さんが頭から血を垂れ流したら、今の評判のウェイドであれば・・・
癇癪を起こして殴ったのでは、階段から突き落としたのでは?と噂されるのも当然だ。
・・・だいぶ誇張された噂だと思うけれど、貴族社会とは大方こんなものなんだよね。
暗い噂とかが好き。
蹴落とすのが大事。
・・・他人の不幸は蜜の味。
「うーん・・・」
うんうん唸っているとウェイドが鼻で笑い、ニヤけた顔でまたもや嫌味を言ってきた。
「うんうん。お前にはちょーっと難しかったかもな?ま、つまりはそんな悪い噂をマシにするために俺と一緒に剣技大会に来いってこと。ちなみにお前に選択権なんてないからな。」
「ははは・・・」
言い方が結構キツイから注意しようかと思ったりもするけれど、今のウェイドは最初会ったときよりも顔色もよく、明るいからほっておくことにした。
私以外の人にそんな風な態度を取ったりしたら、言うくらいにしておこう。
「強い方の試合を見れるのは楽しみですね~」
どんな試合なのか、どんな技術を使って対戦するのかがとても楽しみで自然と顔がにやける。
「・・・フン。」
「どうしました?」
なぜか急に不機嫌そうな顔をして、頬杖をついた。
それに加えてそっぽまで向くから、なにか気分を害したことを言ったのかと思い聞くと・・・
「そんじょそこらの甘ったれ貴族より俺の方が強いからな!」
クワッ!と効果音がつきそうな表情でなぜか宣言してきた。
「上には上が・・・」
「あ?」
負けず嫌いなんだから。




