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王子殿下の慕う人  作者: 夕香里
本編
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07.委ねた縁談

バスタイムを終えて自室に戻れば、机の上に片手で持てないほどの手紙の束と、温かいホットココアが置かれていた。


きっとベッドメイキングをしに来た侍女とルドウィッグの命を受けて手紙を届けに来た執事が、夜はまだ冷えるからと気を利かせて持ってきてくれたのだろう。


「おいしい」


手紙を両手で抱えて暖炉の前のソファに座りながら、ココアを飲む。一息ついたところで、肩からずり落ちかけていたガウンを元に戻して一通目を開ける。


「これは誰かな……?」


封筒の裏を見れば名前が書かれてあった。


──ヴォルデ侯爵家


行き遅れのエレーナにとって侯爵家からの縁談は破格だ。しかも年齢が一個上の嫡男という、誰もが羨むだろう相手。

友人エリナの「もうヴォルデ侯爵家にしなさいよ! 絶対これよ! 逃したらこれ以上の待遇はなくってよ!」と意気込む声が聞こえてきそうで、想像しては思わず笑ってしまった。


「うーんこんな私でも貰い受けたい物好きは沢山いるのね」


一応中身を見ては、差出人を確認すること一時間ちょっと。ようやく全ての手紙に目を通したエレーナは立ち上がって背伸びした。


凝り固まった肩を解して、冷えてしまったココアを少し口に含む。


彼女の元に届いた縁談は、貴族家に近い富豪の商家から最初に見た侯爵家まで幅が広かった。数にしてみれば五十は超えているだろうか。自分に価値がなくても、ルイス公爵家という爵位がエレーナの価値を高めていることを再確認する。


「やはり直接会ってみないと本当に優しい人かどうか分からないわよね。婚約した後に性格の悪さが発覚して婚約破棄! とかになったら嫌だし」


ちなみに言うと、エレーナは政略結婚に対して嫌悪感は抱いていない。生まれた時から何かあったらこの身は公爵家の駒になれるよう生きてきたつもりだ。


本来貴族の結婚は自分の意思とは関係ないのだ。両親はエレーナを駒として扱う訳ではなく、普通の、一人の、愛する娘として慈しみ育ててくれたが。


大半の貴族は政略結婚。娘を駒として扱い、力を持っている家に嫁がせ、庇護を受ける。没落しそうな家ほどその傾向が強くなる。


幸いエレーナの友人達は家の利害と彼らの恋心が一致して、幸せな婚姻関係を結んでる人が多い。


先日ようやく婚姻に漕ぎ着けたエリナなんて、会う度に「レーナも早く最愛の人と結婚しなさい! 人生が180度変わるから」と夫であり、エレーナの幼馴染でもあるラバト公爵との惚気を延々に話してくる次第だ。


そんな友人達の幸福な光景を見ていると、自分も……と願ってしまうことは許して欲しい。


「んー舞踏会が一気に候補者に会えるわよね。取り敢えずそこで気になる方と話をしてみよう」


個々に子息を邸に呼んで話をしてみることも出来るが如何せん人数が多い。一体何日必要なのか考えるだけでも頭が痛くなりそうだ。

エレーナもそこまで暇ではないし、一気に終わらせた方が自分にも相手にも都合がいいだろう。


その後に数人に絞って個別に話す機会を作ればいい。


ようやく考えが纏まったエレーナは暖炉の火を消して、眠りについた。

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