第1話 ラストバトル?
新作始めました。
ボチボチやっていくので面白そうだったらブクマとか頂けるとありがたいです!
ふと気付くと俺様はどこまでも続く草原のど真ん中にいた。
意識を失っていたわけでも寝ていたわけでもない。
一瞬にして目の前の景色が切り替わったのだ。
突如として変わった景色に俺様は辺りを見回して確認してみるが、こんな景色に見覚えはない。
「……なんだここは?」
そんな俺様の声がどこまでも続くだだっ広い草原に響くが、俺様の声に答える者は誰もいない。
俺様は確かについさっきまで手下共と一緒に魔王城にいたはずだった。
だというのに気付けば見知らぬ草原。
いくら世界最強にして偉大過ぎる勇者である俺様でも驚きの声を上げたのは当然の反応と言えた。
偉大過ぎる勇者アッシュ、つまり俺様は15歳という若さで勇者に選ばれ、戦士ガイン、賢者エメル、聖女セラと共に魔王討伐の旅に出た。
それからたったの2年。
長年、歴代の勇者の誰もが成し得なかった魔王討伐を成し遂げてしまったのだ。
そんな歴史的大偉業を俺様が成してしまったのはつい先ほどの事。
流石に魔王というだけあって結構強かったが、俺様の前ではそんなものは何の役にも立たず、さっくりとトドメを刺してやったのである。
あとは凱旋して世界を救った英雄として俺は優雅かつゴージャスな生活を送るはずだった。
だというのに——。
「どこじゃここはー!?」
とりあえず叫んでみたもののやはり誰もそれに答えることもなければ夢から覚めるわけでもなく未だに俺様の目の前にはただっ広いだけの草原が広がっている。
冷静沈着で偉大なる勇者である俺様はここに来るまでのついさっきまでの様子を思い返してみる。
俺様が魔王城にいたのは間違いない。
そして俺様の手下であるガイン、エメル、セラも間違いなくいた。
そんでなんか魔王が「ふははは! 愚かな人間共よ! 我が力の前にひれ伏すがいい!」とか訳の分からん事を言いながら戦闘を仕掛けてきやがったので俺様は手下どもと一緒に魔王をフルボッコにしてやった。
そして偉大過ぎる勇者である俺様がトドメを刺してやったのである。
ここまでは間違いないが、俺様が魔王をぶっ殺した余韻に浸っていてたら気づいたらなぜかここにいた。
うん。分からん。全く情報がないからな。
だがそれでも分からんなりに俺様は過去の記憶を懸命に掘り起こしているとふと手下の賢者エメルが1年ほど前、魔獣巣くう古代遺跡ダンジョンで言っていた言葉を思い出した。
『古代魔法【転移門】。これが使えるようになれば大儲……いや、魔王討伐の役に立つはず!』
それは賢者エメルが古代遺跡ダンジョンで見つけた古文書を見て言った言葉だった。
その後、エメルは旅を続けながら古代魔法【転移門】の研究を続けたが、結局エメルは【転移門】の使用はおろかその古文書の解読にすら至らなかったわけだが……。
だが、もし俺様が倒した魔王が古代魔法【転移門】を使用することが可能だったとしたら。
「まさかあの野郎、死ぬ間際の腹いせに俺様を……」
俺様は絶対確実に魔王に止めを刺したはずだった。
そんな確信はあるが、俺は【転移門】という魔法について、対象をどこかに転移させる魔法という以外の知識を持たない。
魔法を使用して数秒後に発動するタイプの魔法なのかもしれないし、実は魔王にトドメを刺したつもりだったが、まだ生きていた可能性も0とは言い切れない。
事実として今、俺は見たこともない草原にいる。
「なんで俺様なんだ?」
あの場には俺様以外にガインもエメルもセラもいた。
だというのにこのだだっ広い草原にいるのは俺様ただ一人。
なぜ世界最強かつ偉大過ぎる勇者であるこの俺様がこんな目に合わなければならない?
確かに魔王にトドメを刺したのは俺様だが、戦士であるガインも賢者であるエメルだって攻撃に参加していたというのになぜ俺様なのだ?
「俺様じゃなくガインを飛ばせよぉぉぉ!」
「凄いこと言うね、君」
「……今度こそくたばれ! 魔王ぉぉぉ!」
俺様の心からのシャウトに答えるような声が不意に後ろから聞こえて、反射的に俺様は振り返りざまに声の主に斬りかかった。
俺様の背後を取ったのは実に見事だった。
だが、詰めが甘い。
魔王なら魔王らしく不意打ちを食らわせれば流石の俺様とはいえ多少の手傷程度なら負わせることができたかもしれないというのに。
そんなことを思う最中俺様は重大な問題に気づく。
……あっ、ここから帰る方法を聞いてねえ。
そんなことを思うが全力に近い速度で振るった俺様の剣はそんな簡単には止まらない。
俺様の剣は吸い込まれるように魔王の小さな体に必殺の威力で迫る。
……って女のガキ?
振り向きざまに斬りかかった俺の視界に捉えられたのは俺が知る体長3mで巨大2本角の色黒筋骨隆々魔王の姿ではなく、俺よりも若く見える140cm程しかない小さな金髪の美少女だった。
だが、そんな衝撃よりも更なる強い衝撃が次の瞬間、俺様を襲う事になる。
キィーン!
「な……に……?」
必殺の一撃だったはずの俺様の剣を小さな少女はどこに隠し持っていたのか自分の身長程もある剣でいとも簡単にはじき返したのだ。
反射神経どうこう以前の問題である。
どう考えても目の前の少女の細腕では俺様の剣の重さに耐えられるわけがない。
だが、よくよく考えればおかしな話ではなかった。
今いる訳の分からん草原に俺様を転移させる事ができたのはあの場では魔王ただ一人だったのだ。
つまり目の前にいるの——
「やっぱ生きてやがったな! 魔王! 死ぃねぇぇぇ!」
「いやー、違うんだけどもね」
否定の言葉が聞こえた気がしたが、気にせず俺様は幻惑魔法で金髪美少女に化けた魔王に更に斬りかかる。
必殺の一撃を目にも止まらぬ速さで次々と俺様は小さな魔王へと叩きこんでやる。
これだけで俺様は偉そうで態度のデカい魔王軍四天王A~D(名前など憶えていない)をも瞬殺で屠ってきた。
流石に万全の魔王は瞬殺とはいかなかったわけだが、死にかけの魔王ならこれで充分のはずだった。
しかし——。
あ? なんかこいつ強くなってねぇか?
小さな魔王は俺様の剣を俺様以上の動きで全て弾いているのである。
万全の状態ですらなんとか凌いでいた俺様の剣をだ。
小さな魔王は俺様の剣を防ぎつつ、「ちょっと待って。落ち着こう。ねっ」などとほざいているが、魔王のいう事を素直に聞く程俺様は甘くない。
とはいえこのままなぜか強くなった魔王第2形態と戦っていても埒が明かないのは確かだ。
だから俺様は魔王城の戦いでは使わずに終わった奥の手を使う事にした。
「今度こそくたばれ! 聖光烈刃斬!」
距離を取った俺様が振りかぶった聖剣から俺様の身長をも遥かに超える巨大な光の刃が放たれ、小さな魔王へと迫った。
だというのに、小さな魔王は巨大な光の刃を前に避ける素振りどころか剣を構える素振りすらない。
まぁ剣を構えたところで剣ごと真っ二つだがな。
防御不能な圧倒的な俺様の攻撃を避けようともしない魔王を見て俺様は勝利を確信した。
「……って、やべ」
半殺しにして帰還方法を聞きだすつもりだったのにまたしてもつい熱くなってしまったことに今更ながらに気付いた。
いくら魔王が第2形態になって強くなったと言ってもアレを喰らって生存が不可能な事などいうまでもない。
だが、そんな俺の後悔を笑い飛ばすかのように、俺の【聖光刃斬】は小さな魔王の身体に触れた瞬間——。
「……は?」
俺の【聖光刃斬】は文字通り、何事もなかったかのように消失した。
小さな魔王の防御力が俺の【聖光刃斬】の攻撃力を上回りダメージを与えられなかったとかそういう感じではない。
何度も言うが、小さな魔王に体に触れた瞬間消え失せたのである。
結果としてそこで俺様は目の前にいる美少女は俺様達が倒した魔王などではなかったことにようやく気付いた。
俺様が倒した魔王が幻惑魔法で化けているとか第2形態に移行したとかそんなレベルの存在ではない事はもう既に明らかなのだから。
「なんだ? 貴様は」
俺様が誰何してやると金髪の少女はこれまでの戦いなどなかったかのような笑みを浮かべ答えた。
「ようやく大人しくなったね。私は始まりの女神、リティスリティア。今日は君にお願いがあってここに来てもらったの」
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