表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

魔王と部下の戦い

 魔王と向き合った上級モンスター達は作戦を立ててる暇がないのでそれぞれ勝手に動いた。

 サクは飛んで、クロユリはその場で術を開始して、アジサイは刀を抜いて突っ込んだ。


「一番乗り!」


 そう言って主人に向けた刃に魔力を乗せた。

 ロベリアはその場から一歩も動かずに相手する。

 もちろん鬼の馬鹿力にも動かない。


「避けねぇと怪我すんぞ!」


 そう言われてもロベリアは動かない。

 その様子に動揺したアジサイは刀を震わしてしまった。

 それを見逃さないロベリアは力の緩んだ刀を両手で受け止めた。


「もっとしっかりやれ!」


 そう言ってロベリアは刀とアジサイを壁に投げ飛ばした。

 アジサイはどうにか体勢を取り直して壁にぶつかるのを回避した。


「今度はサクの番です!」


 その声が上から聞こえたので見上げると、そこには魔弾を構えるサクの姿があった。

 ロベリアはそれも受けて立つ気だ。


「避ける隙もない弾数(たまかず)で倒れなさい!」


 そう言うと無数の魔弾を一気に放った。

 魔王ロベリアはそれを魔力でコーティングした手で払った。

 一撃もこのロベリアには当たらない。


 撃ち尽くしたところでサクは魔力の出ない手を見てうろたえた。

 そこにロベリアは自分の手を数匹のコウモリに変えて放った。

 魔力が切れて何もできないサクはその物理攻撃を体の数カ所に受けてしまった。

 そのまま床に落下して行く。


「自分の状態を考えろ!」


 そう言いながらロベリアはコウモリを自分の体に戻した。

 それと同時にサクが完全に落下し終えてドーンと大きな音をさせた。


「その身を縛れば勝てるかもしれません」


 その声がした直後、ロベリアの体を呪いの文字が縛った。

 顔を声の方に向けると呪術を使うクロユリがそこにいた。


「なかなかの物だね。でも、こんな物じゃ私を縛り付けることは出来ない。今から壊してやる」


 その宣言のすぐ後にロベリアは魔力を全身から一気に出して呪術の縛りを弱めた。

 それから吸血鬼のパワーで無理やり呪術の鎖を千切った。


「そんな!僕の魔力をたくさん使ったのに!」


 クロユリは驚いているが、これは化け狐のフェイクだ。

 それにロベリアは気付いているのですぐに右腕をコウモリにして襲わせた。


「ヒッ!」


 クロユリは次の術を用意していたが、それはロベリアの本体用なので無闇に撃てない。

 そのせいで術を発動できずにコウモリの攻撃でボコボコにされた。

 コウモリがロベリアのところに戻ると、その場には倒されたクロユリが横たわっている。


「悪くないが魔王相手悠長なんだよ!」


 ロベリアはこうして3人を一度撃退した。

 しかし、まだアジサイは立っている。


「さて、どうする?」


 ロベリアはアジサイの方を向いてそう聞いた。

 その時ロベリアはすぐにやばいと思って魔力で全身を覆った。


「2人には悪いけど俺が一撃入れる」


 冷静に居合斬りの構えをしてアジサイはそう言った。

 その一撃に残りの魔力を全てかけている。

 そんな一撃を受けたらさすがにロベリアでも危ない。

 だから、魔王は焦って声をかけた。


「主人に全力で攻撃するのか!」


 その声にアジサイは冷静に答えた。


「あなた様にこの程度は効かないだろう。そう思うくらいに王の強さを信じてるのだ」


 その解答に最初はポカーンとしたがその後にロベリアは笑った。

 そして、魔力の膜と能力を使って受けて立つことにした。


「そうか!信じてるんだな!なら、全てを使って相手してやる!」


「ありがとうございます!」


 2人は真っ向勝負をすることになった。

 その直後にアジサイが足に力を込めた。

 それが見えたロベリアは集中して攻撃を待った。


 数秒後、力を集中し終えたアジサイが爆発的なパワーで床を蹴って向かってきた。

 居合斬りが来るのをわかっているロベリアはそれを真剣白刃取りで止めようと考えている。


 いや、出来るはずがない。

 コンマ数秒の間に吸血鬼の動きが追いつけるはずがない。

 力任せに振る刀を止めようとすれば吹き飛ぶに決まってる。

 だから、策を使った。


『ブワッ』


 そんな感じに聞こえそうな勢いでロベリアがコウモリ化した。

 アジサイはそれで避けられたのを間近で見て急ブレーキをかける判断をした。

 ギギギギっという床を削る音をさせて止まると、振り返ってロベリアをじっと見る。


「はぁ…はぁ…危なかった」


 恐怖で息を切らせるロベリアは(かが)んで胸を抑えている。

 そんな様子のロベリアを見たアジサイは両手を振り上げて喜んだ。


「やった!あの魔王に避けさせたぞ!」


 そこでロベリアはあっ、と小さな声を漏らしてしまった。

 確かにロベリアは自分のルールで動かないつもりでいた。

 それは戦っている3人が理解して勝手に目標に入れていた。

 それをパワーだけが極振り状態の鬼によって達成されたのだ。


「マジかぁ。私負けたか」


 まだ死を感じて胸がドキドキしてるが、冷静を装ってロベリアが立ち上がった。


 その直後、戦闘終了を世界が認めて4人のレベルが上がった。

 4人の周りが一瞬光って経験値をもらってレベルが上がったことを知らされた。


「これだけやってレベル5か。でも、これでかなり使った魔力が上がったわけだ。器が大きければダンジョンは比例して大きくなる。上々だね」


 ロベリアは勝負に負けて試合に勝った状態でそう言った。

 アジサイもレベルが上がったようでホッとしている。




 1時間後、ロベリアはレベルが上がった際の経験値を使って回復魔法と魔力感知を得た。

 その回復魔法を使って4人揃って完治させた。

 その後、あの戦闘に関して魔王ロベリアは言いたいことがある様子で、完治させた部下達に床に座るように命じた。


「さて、3人がばらけて戦ったのはいいとしよう。でも、3人とも全然戦い方がなってない」


 どうやらさっきの部下達の情けない姿に説教をしたいようだ。

 3人は黙って魔王ロベリアの説教を受け止めようとしている。


「特にサクはさっき魔力を私に渡したことを忘れてた。悪魔が魔力の無い状態を忘れて魔弾を無駄撃ちするなんて前代未聞だ。反省しなさい!」


 そこまで言われてサクはしょんぼりしつつ説教を真摯に受け止めた。


「次はクロユリだ。相手を騙す前提で用意をいてたのは偉い。でも準備に時間をかけすぎだし、とっさの判断があまりにも遅い。そんなんじゃ人間が来た時に死ぬ確率が高いよ」


 クロユリは呪術を使うがここまでボコボコにされるとへこむ。


「最後にアジサイだ。最初は冷静になれず動揺してたが、その後に冷静になれたのは評価に値する。まっすぐに刃を向けるのは失敗だったけど、それも居合斬りとパワーに切り替えて通用するようにした。素晴らしいことだ。もしも反応が遅れてたらやられてたかも知れない。そんなアジサイは一番戦闘に向いてる」


 一応ダメ出しもされたがほとんど褒められたのでアジサイは頬を赤くして照れた。


 全員の戦闘における状態を確認したロベリアは裏で考えていた側近の話をすることにした。


「で、ここまでの戦闘能力を見て側近を決めた」


 その発言に3人とも緊張した。

 最初からそばにいたからと言って側近になれるとは限らない。

 もしかしたら使えないと判断されて切り捨てられるかも知れないのだ。


「ま、3人とも強いし悪いとこを治せば人間を倒せるだろうから側近にするよ」


 この発言で3人のステータスの役割に『魔王の側近』が追加された。

 それを聞いた3人は本気で喜んで頭を下げた。

 そしてサクを筆頭に同じことを言った。


「精進して誠心誠意あなた様のために働かしてもらいます!よろしくお願いします!」


 そのかわいらしく忠誠を誓う姿ににやけながらロベリアは応えた。


「こちらこそよろしく。ダンジョンを守りながら帝国になるまで大きくしようね」


 この時はロベリアのもう一つの目的である『人間とモンスターの戦いの歴史を壊す』ということを話さなかった。

 側近達を信頼してはいるが、まだこれを話すには値しないのだろう。


 初日はダンジョンをいじれる分の魔力で寝室を用意して、入り口付近に数体のモンスターを召喚することで終わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ