おしまい?
7月5日 全文修正
やらなかった訳じゃない。
出来なかった訳じゃない。
ただただ、、、、相手が悪すぎた。
そこは、荒れ果てた荒野であった。
そしてそこには、その事象をたった1人で起こした邪神のごとき男と、それに立ち向かう100人あまりの英雄たちが戦っている。
100人.......初めは兵士含めて20万人いたのだ。
援軍も何度もきた。
しかし、もうただの兵士ではついてこれず、世界各地で英雄と呼ばれた者共も少しずつ倒れていく。
そんな悪夢のような戦場である。
そんな戦場に、歳は40くらいだろうか。
この戦場にいるには少し華奢な、黒髪の女が戦っていた。
この戦場にて生きているということは、この女も英雄と呼ばれるに値するほどの実力をもった強者なのだろうが。
「くそがぁっ!」
駄目だった!攻撃が入っていない!
何が駄目だった?
あそこからじゃ『虚無』の防御は差し込めない。
確実にデカい一発入れてやったはずだ。
そのハズなのに、相手は無傷だった。
考えを纏めながら次の行動へ移る。
例え効かなくとも攻撃されたことがご不満らしい。
「うおぉぉぉぉっ!」
全力でヤツの一撃を避ける。
だけどこの体勢から二撃目はキツくないかッ
「助太刀入りますッ!」
私に向けられていた死の刃は寸前のところで止められた。
これに割り込めた騎士の男。
相当な実力者なのだろう。
助かった。
「貴方があかりさんですね!伝言です!司令部に至急来るようにと!」
「わかりました!腹に刺突が入りませんでした!なにか仕込んでいるかもです!」
「情報提供感謝です!」
さぁ、急いで行かなくては。
司令部っていっても、もうここは無線が効かない。だから攻撃の余波がこない、少し離れたところにある仮の病院のような場所となっている。
ここにいて、なおかつ私を呼んでいるというと、あの人しかいない。
「ご主人様、ただいま戻りました。」
私の主である、ノエル様である。
「.......ねぇ知ってるかい?あかり。」
あぁ、この表情で、この人がなにを言わんとしているのか察した。
「この世界はもう、非戦闘員合わせて10万人とすこし、そして今戦ってる英雄たちが幾ばか。」
「そのくらいならなんとでもなるんだろうけど、『柱』が足りない。そして、ヤツに勝てない。」
「言いたくはないんだけどね。もう、詰みだ。」
知っている。
この世界はもう終わっているのだ。
どうしようもないくらいに。
今の戦いは、いわば足掻きだ。
もう、打つ手はないといってもいいくらいには。
「私は決めたよ。とてもリスキーな術だけど、成功したら、世界を存続させられる。そんな術をとることにした。」
初めて聞いた。そんな術。
本当にあるかどうかを疑うようなレベルの術だ。
「それには貴方の協力が必要よ。あかり。手伝ってくれる?」
それなら答えは1つ。
「もちろんです。私が断るわけがないでしょう?」
「ふふっ、そうね。」
久しぶりに笑っているところをみた。
もしこれが終わったらいつもの日常に戻れるかもしれない。
もう一度一緒に笑って過ごしたい。
「それで、どのようにすればいいのでしょうか。」
腹は決まった。
あとは実行するだけだ。
「全員に伝達する!今から大魔術をつかい、ヤツを倒す!それまででいい!持ちこたえろ!」
もう残りの戦力は数少ない。
だけどもここを持ちこたえたら私たちの勝利だ。
今の号令で仲間に活気が戻った。
気分的には最高潮。
燃えてる。
いける。
私は文字通り、命の限り、全力を尽くす。
展開していく。染み渡らせていく。私の権能を。『因果』を。そして破壊していく。今までを。関係性を。私の命が潰えるまで。
「魔術展開。『無限破壊:壊れたデウス・エクス・マキナ』」
戦いは壮絶を極めた。
戦闘員なんてもう数人しか残っておらず、現在進行形で亡くなっていて、もう大した時間を稼げない。
だけど、私はやるべき事を終わらせた。
「下準備は出来ました!御主人様!あとはどうか、この世界を救って下さい!」
私は命を賭けてやりきった。
直に私も死ぬだろう。
それでも、御主人様は世界を救う魔術を発動させてくれるはずだ。
それで満足だ。
「ねぇあかり。世界を救ってちょうだい。これはそういう魔術。私は駄目だった。だから後は.......頼んだ。」
それってどういう..........
「魔術展開『万物は流転する:星離時別』」
白い光の中で、声が聞こえた気がした。
-ありがとう、私の唯一の従者-
巫女 ノエル=アンヌ ソフィー (紀元前840~2253)
名無しの戦いにて、戦死
ここに眠る
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