救う者2
対峙するのは巨大な“トカゲ”の化け物。
トカゲの後ろには少年、自分の後ろには少女がいる。
Ωは初めて見たのだ。生きた人間を。
たとえ次元を越えた別世界であったとしても、産まれて初めて、生きている、血のかよった人間達に出会ったのだ。
創られた心を磨耗させながら、ただ、人類の敵だったものを殺し続け、すべてが終わった先に、手を差し伸べるべきべき者達が、いたのだ。
――火が点いた。
紅い鈍光が光を増し、深緑の燐光が舞い上がる。
守るべき、救うべき人間がいるのだ。錆び付いていた感情が熱を帯びる。
スフィアに導かれた世界で、その存在が確立する。
殺させはしない。苦しませはしない。
これが本当の、私の戦い。
我が名はΩ。
人々を救い、人類の敵に終焉を与える者。
――――――――――
「火の魔法は使うな!!火が回れば町の人達の逃げ場が減る!」
銀色に輝く甲冑を纏った男が声を上げる。広い町の中、その声は他の雑音に消されること無く響き渡る。
「魔法兵は距離を取り、光の矢で大物を落とせ!他は小物だ!小物を減らしつつ町の人達を守れ!」
そこかしこで復唱が始まる。町中の兵に伝播されていく。
混乱の中、バラバラだった兵士の動きに統制が生まれる。
「――っ、……これで少しはましになるか」
オークを一体、切り伏せながら言う。
フィゾー・ガティアス。
王国随一の剣の腕を持つ、王女直属の護衛騎士である。
城下町に魔物が現れたと伝令を受けた彼は、王女を精霊樹の中庭に匿い、その後、惨状を目の当たりにした。
城壁内からの奇襲など想定出来ない。兵も足りない。対応など出来るはずがない。
しかし、気丈に振る舞う王女から勅命を受けた。人々を守れ。
フィゾーは騎士である。国を、町を、人を守るのが義務であり、誇りだ。その上で、王女に言われたのだ。
貴方にしか頼れない、だから、一人でも多く救って死ね、と。
唇を血が流れるほど噛みしめ、溢れ出そうな涙を堪えながら、自分の目を真っ直ぐに見据え、言ったのだ。
フィゾーは震えた。
自分がずっと守ってきた少女が、いつの間にかこんな決断を出来るようになっていたのだ。
ならば、応えねばなるまい。
「――ぬんっ!!」
フィゾーは剣を振るう。
民の盾となり、魔物を蹴散らしながら。
声を上げ、剣を振るう。
――そして魔物の押し寄せる先に、光の柱が昇るのを見た。




