私の夢の中で
いよいよイジメの実態に迫ります。
悲しい話が始まります。
どうか応援してください。
私は自分を励ます。
『真白ちゃん、頑張れ』
『頑張れ、頑張れ、真白ちゃん』
年に一度あるかもしれない皆既月食の日、私はいつも決まって同じ夢を見る。
小学五年生の一学期の思い出。
それはたったの三カ月目で終わってしまう私の大切な人生の一部分だった。
そう。
私の人生は、その五年生の七月十二日で終わっているわ。
月の魔人ヘカテの呪縛が解き放たれる時。
それが私を取り戻せる僅かな時間だった。
月の悪鬼となり、
多くの精霊たちを捕らえると恐れられる存在と成り果ててしまった。
違う。
私じゃない。
私は中岡真白なの。
月の魔人ヘカテが、私の身体を奪っているの。
助けて。
助けて。
誰か助けて。
あの五年生の時、未熟な私の人格は、ずっと叫び声を上げていた。
自分が何をしたいのか。自分が何を考えているのか。
いつも本心とは違うことをしてしまう。
こうしたいのに。
こうしてあげたいのに。
そんなことばかり考えているのに、クラスの皆に誤解されてしまう。
そうじゃないんだよ。そんなことをしたいんじゃないんだよ。
素直に自分を表現できないこと。
考えているのとは違うことを言ってしまうこと。
皆には無いですか。どうして言ってしまったのかと、後悔したことはないですか。
五年生の私はそんなことばかりでした。
あの一人の友達を除いて、私は正反対の自分を表現してしまっていたのでした。