表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月と魔法の物語り  作者: Bunjin
ハルカ、再び
49/101

向日葵が咲く庭で


 向日葵が咲いている。母が庭で水を撒いていた。俺はぼんやりとして、家の二階の窓からその仕草に見入っていた。


「ハルカ。こっちへいらっしゃい。気持ちいいわよ」


 母が手招きで呼んでいる。俺はパステル色の窓を閉めて、玄関に向かった。分厚い木の扉の横に大きな鏡がある。ハイウエストの赤スカートにノースリーブの白シャツをインしている女の子がいた。


 分かっているさ。これはここにいたハルカの装いだ。俺が好んでしているわけではない。それなのに、ここにいる母は強制的に、こんなことをさせてしまうので、俺は辟易していた。


 広い庭に出て、家からどこまでも続いている銀杏並木を見ていると、母が言ったように気持ちがいい。群青色の濃い空の色は、俺の知っている空ではない。


 しかし、俺にはなかった筈の記憶があった。知らないことを知っている。それはここにいたハルカの記憶だ。そして、その記憶にはもう一人の人物を覚えていた。


「いい天気だね、ハルカ」


そうなんだ。こいつはハジメと言って、こっちの世界の俺らしい。


「ハジメは雨の日が嫌いなのか?」

「ハルカは好きなのかい」


「雨の日があるから、晴れの日がいいと思っている」

「あぁ、なるほど。ハルカらしい答え方だね」


「ハルカらしい?」

「そうじゃなかった。ハルカはハルカだった」


「ハジメは変な事を言う。当たり前のことだろう」

「ははは、そうだね」


「戸惑っているのか? ハジメの知っているハルカと違うって」

「正直に言うと、そうだけど。ハルカは元々一人だったんだから、そうだな」


「はっきりしないんだな。でもそうだよな。自分でも戸惑っているんだからな。この心の中にあるハルカの記憶から察するに、あれは別人だからな。ハジメと一緒に旅をして、あんな真似は出来ない」

「そうなんだよね。君はハルカみたいに自分のことを私とは絶対に呼ばないんだな」


「言って欲しいのか。それに、ハジメのことをくん付けで呼んで欲しいか。こんな言葉遣いでいるのに。元々のハルカがこうだったんだぞ」

「君の中でハルカはどうなっているんだい?」


「どのハルカだい? ハルカは一人だろ」

「ごめん」


「何が? おいおいしっかりしてくれよ。決戦まであと三日なんだろ」

「うん。皆既月食まであと三日。風の精霊の佐藤藍が、僕たちに時間を作ってくれている。君の世界を破壊させてしまったことを後悔しているから」


「あれは不可抗力さ。アイが悪いわけじゃない。もちろんハジメだってそうだ」

「多くの人が死んでいる」


「だから中岡真白を倒すんだろ。この闘志は二人から一人になっても変わっていないさ」

「君は強いな」


「ハジメが、ハルカはハルカだと言ったじゃないか。二人いたって、一人だって、同じさ」



 俺は群青色の空を見上げた。白い雲が太陽に輝いて眩しい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ