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月と魔法の物語り  作者: Bunjin
アイ
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過去の記憶の中で


「ハルカお姉ちゃん。バイバイ」


 そう言って引越しのお別れをした三年後、再び戻って来た街で再会したハルカさんは別人になっていました。魔法使いに憧れていた女の子は、長い髪で顔を隠し、周囲の全員を不気味な左目だけで睨みつけていたのです。


 何がハルカお姉ちゃんに起こったのか。当時の私は何も知りませんでした。隣のクラスだった姉は小学五年生の頃のことを、何も教えてはくれません。厳しく口止めされていることを、後になって詳しく知りました。


 でも、どんなに隠されていることでも、少しくらいは時間が経てば噂という形で聞こえてくるものです。イジメと級友の死だったのです。


 ハルカお姉ちゃんは親友の中岡真白さんを殺してしまいました。


 それを聞いた日から三年間、私たちの一家は引っ越して行きました。

  何故ですか? 

  何があったのですか? 

  本当なのですか?


 この街に戻って来た私は、何をしたらいいのでしょうか。中学一年生になった私が、中学三年生のハルカお姉ちゃんに、何ができるのでしょうか。


 私たち姉妹は別の中学校に通うことにされました。両親が決めたことです。特に姉を守りたかったのだと思います。小学生の死はあまりにも姉に近過ぎたからです。


 ところが、高校進学で姉が第一志望にしたのは、あの小中高一貫の学校だったのです。当然のことですが、両親は猛反対しました。しかし、姉にとってはそうしなければならなかったのです。私もそうでした。どれほど歳月が過ぎ去っても、私たち姉妹はいつまでもあの時の、三年前のあの時で止まっている気がしていたのです。


 くるくる。

 くるくる。


何故そうなっていたのか。絵筆の魔法の杖を回している今なら分かります。


 くるくる、くるくる。

 くるくる、くるくる。


私たち姉妹のもう一つの存在があるからです。


 くるくる、くるくる、くるくる。

 くるくる、くるくる、くるくる。




 天空で二十体の甲冑兵と戦っている最中、地上にいる二人のハルカさんを見つけた時、私の背筋は凍りついてしまいました。全くの予想外だったのです。どちらかのハルカさんが死んでしまうなんて、予想もしていない出来事でした。


 甲冑兵に阻まれて助けに行くことも出来ずに、ハルカさんの首が飛ばされてしまいました。それが最悪なことに、もう一人のハルカさんの目の前で起こったのです。


 ハルカさんを本来のハルカさんになってもらう為に、私が仕掛けた危険な賭けの呪術が打ち砕かれたのでした。本来、二人のハルカさんは私が好機を選んで一人に戻すことによって、真のハルカさんになる筈でした。


 好機とは、どちらかのハルカさんに、女の子らしいハルカさんになってもらうことです。私のもくろみは成功していたのです。ハジメさんといたハルカさんは心を開き、恋をしてくれました。驚くほどに女の子らしくなって、後は一つの体に戻ってもらうだけだったのです。


 首さえ斬られなければ。

 目撃さえしていなければ。

 そう悔やまれてなりませんでした。


 私は何が何でも、二人のハルカさんを一人に戻しました。即死のハルカさんの命が、消えてしまわないうちに。そして、飛ばされた首を見てしまったハルカさんが、心を失ってしまわないうちに。


 しかし、私は間に合いませんでした。飛ばされた首を見たハルカさんは、瞬時に心を砕き潰されてしまっていたのです。


 私が仕掛けた危険な賭け。それは中岡真白に取り憑いた月の魔人ヘカテに勝利する為には絶対に必要だったのです。中岡真白を救うためには、真の清水玄がいなければならなかったのです。


 中岡真白という最後の壁。ヘカテが隠れる砦の最後の壁。それを打ち破ってくれるのが、真の清水玄だったのです。


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