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月と魔法の物語り  作者: Bunjin
アイ
43/101

月の魔人がいる世界で

新展開です


 人族が下位の精霊なることは古来よりの習わしでした。地・水・火・風・空の五大精霊は、唯一無二の上位精霊に対して、七百年の寿命をもって衆多の下位精霊を交代させています。


 だからと言って、私たち佐藤姉妹が次の風の精霊として選ばれるのは、人族にとっては非常に稀有なことなのです。人族と精霊族の人口と寿命を考えれば、何故私たちが精霊になれるのかと不思議でしかありませんでした。


 人族を決別して、精霊に神化する儀式はその言葉通りの人では無くなるためのものです。人としての肉体を捨てる。簡単に言えば、それだけのことでしたが。


 姉の佐藤翠が、私よりも先に神化しました。それと同時に寿命を迎えた下位の風の精霊の世代交代となる。姉妹で神化するのは、過去にはありません。誰もが同時に私たちは神化を遂げると考えていたのでしたが、実際には五日間の差が生じてしまったのです。


 私が優秀な姉に後れてしまった。それだけのことです。



 ――――


 月の魔人・ヘカテ。


 月には、月の女神ルーナがいます。そして対極の存在として、この魔人がいるのです。


 そのヘカテが、大勢の精霊を捕らえているなんて思いもよらないことでした。精霊の力は絶大です。その精霊を捕らえて、世界を我がものにしようとしている。人族にとっては、月は特別なものです。それなのに月には、こんなにも恐ろしい魔人がいたのです。


 ヘカテは中岡真白に取り憑いていました。実体を持たないヘカテが、自由に行動する為に得た生身の肉体です。


 七年間に百の下位精霊が捕らえられ、魔力で貧弱な小動物に変えてしまうのです。姉の翠も神化と同時にその餌食となりました。助かったのは、落ちこぼれの私です。


 しかし、今にして思えば、それが後悔と安堵になりました。そうです。姉と共にヘカテに抵抗できなかった後悔。そして、残った私には姉を救うことができるかもしれない安堵。


 地・水・火・風・空の五大精霊は、黙ってヘカテの思うままにさせていたわけではありません。月の魔人は月の力を使っています。だから、その力が無くなる皆既月食の度に、精霊たちは決起しました。小動物と化した精霊たちも魔力が一時的に解け、まさに総力でもって戦ったのですが、結果は現在の状況です。


 負けた?


 今もヘカテを打倒できず、私の風の神殿も破壊されてしまった状況が敗れたということなら、そういうことなのかもしれません。


 皆既月食の日にヘカテが隠れる砦の最後の壁を、精霊たちはどうしても破れないのです。幾重にも張り巡らされた壁の最後のたった一つがです。


 それは、中岡真白という最後の壁だったです。


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