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月と魔法の物語り  作者: Bunjin
ハルカ
27/101

精霊の神社で


 拝殿の奥に見える本殿は、黒光りしている瓦葺きの屋根が大きく湾曲して、軒先が美しく反り上がっている。それを支える太い柱が朱塗りで、目を見張るほどに美しい。金細工の装飾も見事な出来上がりで、うっとりするばかりだった。


 だが――

 だが、である。


 本殿の半分以上が大きく破壊されていた。えぐり取られたと表現したほうがいい。左半分が丸い切り口で無くなっている。その奥の地面も削り取られて、遠くの山まで破壊された痕が続いていた。


 隕石が落ちて来たみたい。私は気を失い掛けている頭で、そんなあり得ないことを思っているのだった。


「ハルカ、立てるかい?」


 ハジメの目には、私の顔は血の気が失せて見えているのかもしれない。手足が冷たい。指先が黄色っぽくなっている。体に酸素が足りなくなっているのかな。


「ありがとう。立てるよ」


 笑顔を作ってみたけれど、作り笑いが歪んでいるって自分でも分かった。でも、こうでもしていなければ嫌な想像をしてしまいそうだった。破壊された本殿に佐藤が巻き込まれていたらって――――


「中に入ってみようか?」


 ハジメが私に気を遣ってくれている。本殿が破壊されている真相を調べなければ先には進めない。しかし、明らかに負の結果が見えているのだから、気が引けていたのだろう。


「大丈夫だよ。そんなに気を遣わないで―― 」


 !

 !


 空気を切り裂く高音が両耳の鼓膜に直撃した。私もハジメも耳を押さえて、音がする方向を見ようとした時、私たちは体中に衝撃波を受けて吹き飛ばされてしまっていた。


 ドッカーーーーンッッッ・・・

 バァァァーーーーーンンンンッッッ

 ズドドドーーーーーンンンンンッッッッ・・・・


 私には突然に何が起こったのかが分らない。拝殿が急に爆発して、大きな屋根が崩れ落ちてきた。その下で参拝をしていた多くの人々が下敷きになっていった。


 爆発は尚も続いている。境内のいたる所で炎と煙が上がり、巨大な穴を広げていた。逃げ惑う人々が爆発に巻き込まれて、土と共に体がバラバラになって吹き飛んでいく。どこへ逃げても、逃げた先で爆発が起こった。


 私はハジメの体に覆い被さられている。ハジメが私を守ってくれていた。身を呈してくれていた。


 私にそんな価値があるの? 私はキミに何もしてあげられないよ。私は自分のことしか考えなくて、キミをこんな所に連れて来てしまったんだよ。


 そんな私なのに、どうして助けてくれるの?


「ハルカ、掴まれ」


 逞しい胸に抱き付くと、私たちは空を飛んでいた。地上ではまだ爆発が続いている。よく見ると何かが飛んで来ているみたいだった。爆弾か弾道弾なのだろうか。それが爆発の原因だった。


「ヤバイ、こっちに飛んで来る」


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