7章半、8章
裁判が始まって次々と犯人が明らかになっていく…
「では、裁判を始めまぁす!」
学園長の発言と共に裁判が始まった。
「えっと、もう言っちゃうけど2組の医者立候補者、槍子 紬さん。
君が犯人だよ」
だが、生徒達は不満な表情だった。そりゃあそうか。いきなり言って何を根拠に言ってるんだってなる。
「フッ。君は何を言ってるのかね」
僕達を囲む席から立ち上がった男の人。おそらく、あの人が槍子さんだろ。
「ですよね。何を根拠にってなりますよね。」
僕は、微笑みながらポケットにある物を取り出した。
「じゃあ、これは?」
僕が取り出したもの……
「ひぃっっ!」
それを見た1組の女性たちは悲鳴をあげた。
そりゃあそうか。だって…
「それ…」
「うん。渡部さんに刺さってたナイフだよ。」
僕の発言に沈黙が落ちた。
有はため息をついてうんざりしている。
「血がついてないじゃないか」
槍子さんは、鼻で笑いドヤ顔。
「ついてたんですよ。ほら。」
僕は、血がついているハンカチを取り出す。
「なっ!」
槍子さんは、驚いた表情だがすぐに反論した。
「だ、だが。もしかしたら渡部さんの血じゃないかもしれないだろ!」
「そうですか?じゃあ1組の女性たちに聞いて見ましょう。」
いきなり話を振られた女性たちはギョッとした表情だ。
「この血は渡部さんの血ですよね?」
「え、えぇ。そのハンカチで血を拭き取っていたわ…」
愛菜は、声を震わせながら答えてくれた。
僕は、槍子さんの方を向いてハンカチをヒラヒラさせて見せびらかした。
悔しそうな表情を浮かべる槍子さん。
「おい。調子に乗りすぎだ」
有はため息をつき呆れた顔を浮かべた。
「あー。そうだね。ごめん。」
僕は、ハンカチを机の上に置く。
「……。でも、それだけじゃ槍子さんが犯人にはならないだろ?」
空木さんは、少々不満な顔だった。
他の人もその発言に賛成かのように頷く。
有を覗いては。
「ですよね。じゃあこれは?」
僕は、ビショビショのワイシャツを取り出した。
「それは?」
大田さんは首を傾げる。
「男性トイレの個室にあったワイシャツです。」
「男性トイレの個室?」
大田さんはよくわからなそうな顔だった。
全く…まだわからないのか?
「あっ」
琴口さんは、眠そうな顔を浮かべながら何かわかったような声だった。
へぇ。意外に賢いね。いつも眠そうなのに。
「個室、だから、誰もわからない。入れない。」
「そうそう。」
僕は頷き、更に付け加えるように発言する。
「これでしぼれたね。」
「な、何がだ?」
僕は、ゆっくりと口を開け微笑む。
「犯人は、女性じゃない。ってことだよ。」
「!!」
槍子さんは固まった。目をそらしすぐにいい訳を作る。
「そうとは限らないだろ!だ、だって…」
「もう無理だろ…女性が男性トイレに入るとか…」
星矢さんは少し引いた顔だ。
女性もドン引きしている。
「うっわぁ」
菊島さんは、槍子さんを冷たい目で見ていた。
槍子さんは目を逸らす。
「あ、だからトイレの洗面台が水びたしだったのか」
空木さんは、納得したように頷いた。
僕は、小さく笑い槍子さんに目線を向ける。
「で、でも、それが俺のワイシャツだとは限らないだろ?」
「そうですか?じゃあ、これは何ですか?」
ビショビショのワイシャツのポケットからあるものを出す。
「あれ?それって…」
愛菜は、目を細めて僕が持っている物を見る。
「そう。これってあれだよね。
よく、医者が治療で使うナイフ…」
槍子さんは、真っ青な顔だ。
「こんなの、持ってるのって医者しかいませんよね?」
槍子さんは黙ってしまい沈黙に落ちた。
僕の勝ちですね。
「あれ?終わっちゃった?フフッ。」
学園長は、怪しい笑みを浮かべる。
なんか、企んでいるようだ。
「残念だったねえー。槍子くん?」
槍子は、俯いたまま動かない。
「…………」
「?」
槍子さんは何か言っているようだが聞き取れない。
「………うぜぇ」
槍子さんは、顔を上げ怒鳴り散らした。
目に血が走っている。
「うぜぇ!うぜぇうぜぇ!どいつもこいつも俺の邪魔しやがって!
うぜぇ!」
槍子さんは、机を飛び越えてナイフを持ち僕の方に飛んでくる。
「死ね!」
でも、僕は動かなかった。
冷たい目で見でジッとする。
槍子さんは、僕の首を狙うが手前で倒れた。
「なっ!」
槍子さん本人も驚いているようだった。
「馬鹿」
有は、足をかけて転ばせたのだった。
冷たい目で見下して槍子さんの背中を足で踏んでいる。
「流石だね。有。」
「お前、自殺行為だぜ……」
呆れた表情を浮かべているが、僕は笑った。
「ナイスだね!冬馬くん!」
学園長はテンションが高く教卓の上に立っていた。
「なんか、ボディーガードみたいな感じ!」
ニコニコと笑う学園長に有は、小さく舌打ちをした。
褒められる相手が嫌いらしい。
「フフッ。さて、んじゃあ処刑時間でーす」
「しょ、処刑…」
槍子さんは、倒れ込んだままつぶやいた。
「先生たち!出番ですよー」
先生たちは、素早く移動し槍子さんを立たせた。
何をするんだ?
生徒達はジッと槍子さんと先生を不思議そうに見ている。
先生はポケットから黒いものを出した。
「!!?」
「拳銃!?」
いっきにざわつき始めた。
先生はそんな生徒にお構いなし。拳銃を構えて打った。
拳銃の玉が槍子さんの頭を貫通した。
「………」
静まり返った空気。白目を向けて血を流す槍子さん。
物音一つもしない静かな空気のまま裁判が終わった。
8、本当の理由
裁判が終わって誰も喋らず静かな空気が流れていた。
そんな空気の中ドアが開く音が大きく響いた。
先生は何事にもなかったように無表情だった。
人を殺しておいて…
「裁判、お疲れ様でした。無事に犯人が見つかって何よりです。」
「……………」
なんか、空気が悪くなったな。
僕以外全員が先生を睨みつけているようだ。
「早速ですが、体育館へ集まってください。」
睨みつけられていることも一切気にしない先生。
無表情を保ったまま先生退場。
「何なの…あの先生。」
はじめに口を開いたのは菊島さんだった。
不満なオーラ全開に保っている。
「そうだな…何事もなかったような感じだった」
空木さんは、暗い表情だ。
琴口さんは静かに頷き、星矢さんは下を向いていて表情が見えない。
僕は、静かに立って教室を出ようとした。
「の、能くん。どこ行くの?」
大田さんはオロオロした表情で僕を止めた。
「体育館です。」
僕は、それだけ言って体育館へ向かった。
「……………」
体育館の中には、数人立っていた。
僕が来たことに気づいたのか一斉にこっち見た。
「……?」
僕は、首を傾げる。
なんか、変な目で見られている気がする…
「やっほー!みんな元気!」
ハイテンションで登場してきた人。
静かな空気なんて打ち消してしまっている。
「あれ?あれあれ?君!」
突然、僕に指をさし思いっきり近づいてくる。
近い、近い。
「君!あのときの人じゃん!」
裁判のことを言いたいのかな?
「入学式のとき、わっちのこと変な目で見た人!」
「…………………」
えっと…そっち?
僕は呆然に立ち尽くしてしまった。
「まぁ、慣れているからいいんだけど!」
なんて、満面の笑顔を向けた。
変わってるな……
「やっほー!元気なみんなのアイドル!学園長だよ!」
ブンブンと手を振って出てきた学園長。
こっちとの空気の差がすごい…
「えっとね。今日集まってもらったのはね。皆がこの学園に招待した本当の理由!」
「!!!!?」
全員が学園長に注目した。
その動作に満足そうに笑う学園長。
「本当の理由はね。
訳ありの過去で平然と殺せる人だからだよ。」
いっきに沈黙に落ちた。
平気で殺せるだと……僕は僕は、殺せない!無理………なのか?
僕は平気で殺してしまうのか…
訳ありの過去…。それに対しては反論できない。
「アハハ。参ったね……」
僕の隣で乾いた笑い声を上げる鏡音さん。
いっきに暗い表情になり、黙ってしまった。
「フフッ。びっくりした?これが、本当の理由だよ。」
学園長は笑顔で発言をし、去っていった。
静まり返る体育館。
僕は真っ青な顔で教室に戻った。
教室のドアを開けると僕以外の全員がこっちを見た。
「能!」
一番最初に僕の異変に気づいてこっちに来たのは…
「有…」
相当驚いているようだ。珍しいな…有がそんな顔するなんて。
「ハハッ。僕、色々とやばいかも…」
思わず苦笑していまい、笑えない…
「何があった…?」
「学園長からのこの学園に招待された本当の理由聞かされたよ。」
その発言に全員が固まった。
僕は、弱々しいは避けない声で言った。
「訳ありの過去があって…平気で人を殺せる人。だってさ」
その言葉に誰もが驚いた。
でも、その発言に一番暗い顔をしていたのは……
大田さんだった。
続く
本当の理由を知った生徒達。
その発言に違った反応をした大田。
大田の過去とは?