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三番目の淫魔姫  作者: 素浪臼
CHAPTER Ⅰ Day One
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007 これは女の子が乗るモノですか? ~how the ladies ride?~ 1

(第三人格(ソフト)意識回復(リブート)――確認(サインイン)……意識覚醒(スタートアップ)――完了(コンプリート)


肉体(ハード)への実効支配権(アクセスキー)を第三人格(ソフト)譲渡(アサイン)――確認(サインイン)


 …………。 

 …………。 

 …………。


 モミモミモミ。

 ニギニギニギ。


「フィリア、気分はどうだい?」


「…………ん」


 モミモミモミ。

 ニギニギニギ。


「フィリア、体調はいいかい?」


「……ん」


 モミモミモミ。

 ニギニギニギ。


「フィリア、気持ちいいかい?」


「…………ん……すご、く、い、い」


 モミモミモミ。

 ニギニギニギ。


「うっ……フィリア、もう少し弱くしてくれる?」


「……ん……分かった」


 モミモミモミ。

 ニギニギニギ。


「フィリア、湯のぼせしてないかい?」


「……ん」


 モミモミモミ。

 ニギニギニギ。


「フィリア、そろそろ風呂から上がる?」


「……ん」


 モミモミモミ。

 ニギニギニギ。


「フィリア、僕の話聞いてるかい?」


「……ん」


 モミモミモミ。

 ニギニギニギ。


「フィリア、僕と結婚してくれる?」


「……ん。ん?」


 …………。 

 …………。 

 …………。


「……ってしないから!?」


「ちっ、言質を取れなかったか」


 おいっ、『言質』ってなんだよ? あと『ちっ』って!

 はっ……ここは何処?――欲情……じゃなかった、大浴場だと!

 オレは誰?――って今のオレはフィリアだったよな。よしオーケー、オレは正気だ。

 どうやらオレはほんの少しの間、軽く意識が飛んで(フリーズして)いたらしい。そんでもって現在、フィリア(オレ)はイケメン兄ィのラテアと男同士の裸の付き合い――じゃなくて兄妹仲よく一緒にお風呂に入っていたのである……。


 何故こうなった!?



    ★★★LAST-PRINCESS or LUST-PRINCESS★★★



 時を遡ること二刻(約三十分)前―― 


 真っ裸のフィリア(オレ)をお姫様抱っこしたラテアがドアを開け、ベッドルームを出ると――魔道具マギア・パルム製の照明が照らし出したそこには、広くて長い通路があり、その通路左右の壁際にはホノカと同じ格好をした女性使用人(メイド)を始め、黒い礼服を着用した男性使用人ら(総勢五〇人以上はいるようだ)がズラリと整列していた。


「おはようございます。フィリア姫様!!」


 一斉にこうべを垂れて挨拶をする使用人たち。

 

 その列の先頭――つまり、フィリア(オレ)たちの側、一番近くに立っている人たちのことは記憶にあるな。

 長身&巨乳ホノカよりデカい冥徒メイド組局長のイサナ――【蛇媧種(ラミア)】の水蛇(ミヅチ)氏族出身で、同じ【蛇媧種(ラミア)】でもホノカの縦長に変化する瞳孔とは違って、まん丸い目玉(蛇ノ目)が特徴の女性だ。


 でもう一人は、狼のように精悍で細身な初老の執事のジョルジュだ。種族は分からん。ま、この人らの詳細についてはあんま興味無いので今は省くとして――


「フィリア姫様。ご気分は如何でしょうか?」


「ん。悪くない、わ」


「フィリア姫様、ラテア様。入浴の準備が整いました~」


「ん。ご苦労様」


 と立て続けに話かけてくるジョルジュとイサナに、短く返事しておく。


「あー君たち。今はこの子にあまり近づかないで。うっかり側に寄ると匂い(スメル)にやられて発情しちゃうからね」


 ラテアにそう言われて、壁際にざっと一歩下がる使用人たち。まるで軍隊みたいによく訓練された一糸乱れぬ動作に感心する。


「フィリア様。本当であれば浴場までご同伴して、入浴をお手伝いしたいところなのですが、真に勝手ながらしばし退場する許可をお願いします――」


 ラテアの背後に控えていたホノカがそう言うと、「お耳を」と断ってからオレに小さな声で耳打ちする。あーっ……吐息がくすぐったい。


「先ほど下着が濡れてしまったので……」


 エッ? 下着ガ濡レタ……ナニソレ? フィリアまだ子供だから、意味がよくわかんにゃ~い!

 ……などとわざとらしく韜晦してもしょーがないな。ああ、濡れたのね。発情し(さかっ)て――つまりフィリア(オレ)のせいってことだよね。それって。


「……ん。いいよ、ごゆっくり」


 そう返事をするのだけで精一杯だった。


 フィリア(オレ)の身柄をラテアとイサナに託したホノカと、そこで別れたフィリア(オレ)をお姫様抱っこしたままラテアは、イサナを随伴させて左右に列を為す使用人たちの間を通り抜け、廊下の奥へと進むのだった。


 因みにホノカと別れた後、フィリア(オレ)が荷馬車に……じゃなかったラテアに抱っこで連行されて行く際、この時後ろを振り返ったフィリア(オレ)は多分、さながら仔牛のように悲しそうな瞳で、遠くに離れ行くホノカの姿を見ていたに違いあるまい。



    ★★★LAST-PRINCESS or LUST-PRINCESS★★★



 ホノカと別れたフィリア(オレ)は、ラテアにお姫様抱っこで連行されながら大浴場に向かった――


 その間、抱っこされていたのも恥ずかしかったが、それ以前に使用人たちの列が作り出すアーチの間を抜けて行く間も、フィリア(オレ)は常に真っ裸だった訳で――つまり衆人監視の元、裸体を晒してきた訳だ……っていうかこれって公開露出プレイじゃね!?


 だと言うのに奴ら平然とした態度でフィリア(オレ)たちを見送りやがった。なんなのこの扱い? みんな感性がちょっとおかしいんじゃね?……それとも何か? フィリアは普段から家では真っ裸で過ごす裸族で、裸姿を見慣れているのか?

 あーでも、性的道徳セクシャルモラルについて、この国でそんなことを言うのは野暮というものなのだろうか……。


 使用人たちのアーチを抜けた後。ふと目を横に向けると、そこには通路に沿って、天井まで届く長方形のハメ……嵌め殺しの窓ガラスが延々と続いていた。

 今が日中であることは、ついさっきベッドルームで確認済みではあるが、通路の壁を埋め尽くして並ぶ窓は採光をいっぱい取り入れており、思いのほか明るい。

 オレが目覚めてからまだ四刻(一時間弱)も経っていない筈だが、今は果たして何時限頃なのだろうか?……などと考えていたら、いつの間にか大浴場の前まで到着して――そこは入り口が男女別になっていた。


 ほう? あらゆる淫欲を是とする【淫魔族(ルッスリアーニ)】が支配する【淫欲の大公国ルクスリア】と言えども、一応まともな公序良俗の概念はあるのは意外だった。寧ろ江戸時代の銭湯のように男女混浴だったとしても驚かないところなのだが……。

 男女別である理由は――この国には淫魔(ルッスーリア)以外にも多くの他種族の魔族(デーモニヌ)が住んでいるからであり、フィリアが住まうこの宮殿でもホノカを始め多くの他種族が仕えているから……っていうことらしい。



 その男女別の入り口の前で、フィリア(オレ)が「一人で歩けるから……降ろして」と言うと、そこでようやくフィリア(オレ)を名残惜しそうに降ろしたラテアは、「じゃあフィリア。また後でね」と言い残して、男性用の脱衣所に入って行くのだった。

 ん? ラテア(アイツ)も風呂に入るのか? まあ野郎のことなんかどーでもいいや!


「ささっ、姫様こちらへ~」


 後に残されたフィリア(オレ)はイサナに手を繋がれて、女性用入口から脱衣所へと入った。


 そこは大理石と木材で組み上げられた空間で、衣類を収める棚が沢山並んでおり、壁には一枚の大きな鏡が貼られていて、複数の椅子が並ぶ化粧台となってる。番台が無いのを除くとほぼ銭湯や温泉の大浴場と同じような構造らしい。

 それらと異なるのは、ここの空間がかなり広いっていう点だろう。銭湯の脱衣所の四倍くらいの面積があり、高い天井は硝子(ガラス)張りの天窓になっているなど、内装も兎に角豪華だった。


 ん? 何の香水なのだろうか、せかえるような甘い匂いが馨っている――若い女子部屋で馴染みのある独特の残り香にも似ている気もするが……いやひょっとしてフィリアと同様にサキュバスの体臭(フェロモン)匂い(スメル)なのか?

 それはまあいいとして……フィリア(オレ)は最初から真っ裸だったので、ここで特に何もすることはない――と思いきや、フィリア(オレ)を椅子に座らせると、イサナは腰まで届く長い髪を手際よくお団子状にしてまとめ上げてくれた。なるほど、アニメじゃあるまいし髪を下ろしたままで浴槽に浸かるとか流石にマズイよな。


 髪をまとめ上げられたフィリア(オレ)は、イサナに連れられてガラスで仕切られた浴場へ――世の男子たちが憧れてやまない女湯という夢の楽園(パライソ)へと踏み入ったのである……ひゃっほーーい!



 浴場は脱衣所以上に広くて、温室のように全面ガラス張りで大理石の円柱に支えられている。流石にオレも現物は見たこと無いけど、かつて英国にあったというかの水晶宮(クリスタルパレス)を連想させる光景だ。

 床には色とりどりのタイルが敷き詰められており、大公家の紋章である桃色の百合や、サキュバスの姿をかたどった絵――つまりタイル・アートが床の隅々まで描かれている。

 個別用洗い場には――蛇口(カラン)と鏡、さらになんとシャワーまで付いており、それらがセットで設置された洗い場が複数の列になって並んでいたり、木製の腰掛け椅子と桶が沢山積まれている辺り、もうここは完全に銭湯と同じ造りだった。


 お湯を吐き出す湯口はライオン――ではなくて、よく分からない魔物の頭部を模した顎となっており、そこから湯が注がれる石造りで掘り下げ式の、鏡のようにツルツルに磨き上げられた御影石の広くて大きな――それこそ百人入っても大丈夫と言うくらいに広過ぎる浴槽は、かの古代ローマの公衆浴場を彷彿させるどころか、ここの空間含め世界遺産級の神殿を思わせる絢爛豪華さだ。

 因みにこの浴場は、脱衣所とは打って変わって無臭だった。はて、何故なのだろう……?


「姫様~、ここで座ってお待ち下さい~――」


 ここまでフィリア(オレ)を連れて来たイサナはそう告げて、フィリア(オレ)を木製の腰掛に座らせると、さっさとその場から退場してしまった。

 因みにフィリア(オレ)が座っている腰掛け椅子には中央が凹んだ構造になっていて、それはまるで万能椅子のようなデザインだった――いやおそらくこれは尻尾の為にそういった形状にしているだけで、それ以外の意図は無いハズ!……だよね? でもなんでコレ、金色に塗装されているんだろう?

 ところで椅子と桶の山の横にはエアマットっぽい代物が置いてあるが、アレは一体ナニに使うモノなのだろうか……。



 万能椅子……いや腰掛け椅子に座ったまま、ポツンと一人取り残されてしまったフィリア(オレ)……あれれ? こーゆーのって普通はメイドさんたちが、手取り足取り入浴のお世話をしてくれるものじゃないの?

 いやオレも元は一般庶民の日本人だ。ちゃんと一人で入れるけどさ!

 でもいきなり一人残されても、どうすればいいのやら――ってそうか、こんな時こそフィリアの記憶を探ればいいんだよな……と考えながら、思い出そうと・・・・・・した時――


「やあ、フィリア待たせたね――」


 そう言って現れたのは、先ほど別れたばかりのラテア(我が兄)だった。

 

 でここは浴場だ――当然ながら、ヤツは……『 全 裸 』 だ っ た。


 ほう、細身ながら痩せ過ぎている訳でもなく、程よく筋肉が付いた理想的なソフトマッチョの逆三角形ボディ(新庄スタイル)か。

 背中には縮小化された状態の皮膜(コウモリ)の翼と、尻には尻尾が生えている。それはつまりインキュバスとして成人済みである証しなのだ……なんてことは今はどうでもいい。

 オレの視線はとある一点にのみ集中してしまう。

 あはははははははっ……もう渇いた笑いしか出ねえよ。それを見たオレはこの時、チン……いや蛇に睨まれた蛙のように心身共に硬直してしまっていた。


 お兄様は随分とまあ、御立派なモノをお持ちでいらっしゃるのですね!――


 

 そしてオレが意識を堕とした(シャットダウンした)のは、それから間もなくのことであった――

※本作はSFやサイバー的なものではありませんので悪しからず。


お風呂回はまだまだ続きます(笑)

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