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三番目の淫魔姫  作者: 素浪臼
CHAPTER Ⅰ Day One
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006 あのコの中にオレはいた ~Who Lived in~ 5

「私、は……【魔界七大公国セプテム・デーモヌム】の一角、【淫欲の大公国ルクスリア】の支配種族が氏族(クラン)宗家、誇り高きタリア大公家の長女にして、大公位及び太夫プリマ継承権第一位の次期大公。名前はフィオリトゥーラ=ノッテ・S・ラ・タリア……よ」


 取り敢えずしらばっくれてみた……にしても、こんなややこしい個人情報を特に意識せずとも、スラスラと諳んじられるとか、我ながら感心するわ。


 ところでさっきからオレの言葉が短かったりカタコトっぽいのは、別にフィリア(オリジナル)が無口だからではないぞ。

 うっかり余計なことを喋ってフィリアのイメージを壊したくなかったっていうのと、オレ自身がまだこの国の言語、ルクスリア語に不慣れだった為である。それと女言葉を使うことに対してまだ抵抗があるんだよ……。


「君は本当にフィリアなのかい?」


(我が魂に掛けて誓う――と言いなさい)


「……我が魂にかけて誓うわ――私はフィリアよ」


「我が魂に掛けて誓う、か――良かった、ちゃんと分かっている(・・・・・・)ようだね。我が愛し(Mia cara)の妹よ(sorella)


 えっ、それだけ?……何故かそれ以上の追求がされる事はなく、オレに対する質疑を終えたラテアは――


「くんかくんか。ふむ、フィリアのこの匂い(スメル)はやはりヤバイな……」


 ってホノカといい、また匂いを嗅がれてしまった――いやそれはいいとして(全然よくないけど)、『フィリアのこの匂い(スメル)はやはりヤバイ』だと!?

 あ~なるほど――仮にもうら若き乙女に言うには憚れることではあろうが、五十日間も寝たきりだったのだ。体臭もさぞや酷いことになっているのだろう。

 がーんっフィリア、しょーっく!……だな~んてオレは勘違いしないがな!


 まあ、これはつまりだな……フィリアの匂い(スメル)というのは、要するに淫魔(ルッスーリア)の体質……魅了(ファッシノ)に起因するものなのだ――



 魔族(デーモニヌ)とは魔法(テレマ)を操る種族である。だがその真髄は異貌変異(シェイプス・シフト)にあると言ってもよい。

 全ての種族が持つこの異貌変異(シェイプス・シフト)は、普段は人間(ニンゲン)に近い姿をとる魔族(デーモニヌ)を異形の姿に変える能力のことであり、これは変身系種族たる獣人種ヴァラヴィルデスが、半獣形態や獣形態に変身するのがもっとも分かり易い例だろう。


 極端な変貌こそしないが、淫魔膜翼インキュバス・ウイングを展開して空を飛んだり、淫魔尾針(サキュバス・ニードル)を自由自在に操るのが【淫魔族(ルッスリアーニ)】の異貌変異(シェイプス・シフト)である。

 因みに我が蛇っ子メイドの種族たる【蛇媧種(ラミア)】は、下半身を蛇身化させる形でそれが発現されるらしい……。



 さてここからが本題だ――それらとは別にして、各種族だけが持つ種族固有の能力魔性(カルマ)というものがある。淫魔(ルッスリアーニ)の場合、それが魅了(ファッシノ)なのだ。しかも種族を代表する能力だと言われるだけあって、その効果もかなり強力なものらしい。


 視覚――魅惑的な眼差しでその心を誘惑。

 聴覚――媚びるような嬌声でその心を誘惑。

 触覚――蠱惑的な吐息と舌と指先でその心を誘惑。

 味覚――蕩けるような甘美な口付けと唾液でその心を誘惑。

 そして嗅覚――全身から溢れ香り立つ体臭(フェロモン)でその心を誘惑。


 このように誘惑を試みる対象(ターゲット)に対して、相手の五感全てに働きかけて催淫し、その精神を支配する能力なのだ。

 

 とここまで言えばお分かりであろう。フィリアは一般的なサキュバスよりも体臭(フェロモン)が強力なのである。

 ま、要するに淫魔(ルッスーリア)の体臭には強烈な催淫効果があり、汗や体液は媚薬なのだ。それがフィリアの場合、その及ぼす効力がとんでもなく強いという訳なのだ。

その効果の程は――


「ホノカ。君は今のフィリアのこれ(・・)に耐えられたかい?」


「私も最初ちょっと正気を失いかけました。インキュバスであるラテア様ほどの方でさえ危なかったのですから、これはちょっと危険な状態ではないかと――ですのでそう判断し、先に入浴の準備を手配させておきました」


「そうか。慣れている君でも駄目だったんだね……」


 とこのように魅了(ファッシノ)中和特性(キャンセラー)を備え、魅了(ファッシノ)効果を互いに打ち消しあえる同族が相手であったとしても、フィリアには関係ない。

男性淫魔(インキュバス)女性淫魔(サキュバス)も見境なくフィリアは催淫効果を無差別に発揮してしまうのだ……そもそも淫魔(ルッスーリア)は通常、同性同士では魅了(ファッシノ)の効果は全く効かないのだから、それだけでもフィリアの特殊性が分かるというものだろう。


 因みに他の魔族(デーモニヌ)はフィリアは別格として、一般的な淫魔(ルッスーリア)が相手であれば、どの種族も生まれつき魔性(カルマ)遮断能力(ブレイクスルー)を備えているので、魅了(ファッシノ)にもある程度抵抗出来るらしい。

 そんな都合よく魅了(ファッシノ)が他種族に対して簡単に通用するくらいなら、魔族領域は今頃、淫魔(ルッスーリア)魅了(ファッシノ)能力で以って、魔族(デーモニヌ)の支配者として君臨し出来ていただろうしね。


 なおホノカの場合、フィリアの愛人としてお肌の触れ合い(キャッキャウフフ)を日常的にしている為、体臭(フェロモン)耐性が他の者たちよりも強い方……らしい。


 あれ? 気が付けばオレってばさっきから、無意識に知識や記憶をごく自然に喚起出来ているぞ? これはひょっとして、オレの意識や思考がフィリアの記憶に馴染んで来た兆しなのだろうか……?



 おっとフィリアについて話を戻そう――フィリア(この身体)は只でさえ体臭(フェロモン)が強い訳だが……その身が幼い為に、自分の意思でまだ完全には制御出来ていない状態にあるのだとか。


 でまあ、そんなフィリアが五十日間も風呂にも入らずに眠ったままだった訳だから、その体臭(フェロモン)も濃厚になっていると言う次第。しかもその体臭(フェロモン)も発散しなければ、溜まっていく一方らしい。

 なので取り敢えず風呂に入って、その余分な匂い(スメル)を洗い流して、体臭(フェロモン)を抑える処置をしなければいけないと言う訳なのだ。

 

 因みにこれは後で聞いた話しだけど、フィリア(オレ)が眠っていた間は毎日、身体をちゃんと拭いて着替えもしてくれていたらしく、ホノカがこのベッドルームに入って来た時も、その定期的なお世話をする為だったのだそうで。

 

「フィリアよ。長い眠りから覚めた後で少しお腹が空いているかも知れないけど、先にお風呂に入って汗を流しておこうか」


 おお、お風呂かぁ……そう言えばさっき大量に汗を掻いたんだっけ。風呂に入れるのは素直に有難い。


「フィリア、立てるかい?」


 言われて褥台(ベッド)から立ち上がろうと……ん? おかしいな。腰砕けたように足腰に力が入らないぞ? ずっと寝たきりだったとは言え、目覚めた直後は立って歩けていたのに何故だ?

 ひょっとしてつい今しがたのあれやこれやのせいで、気力体力を使い果たしてしまったのだろうか……?

 

 そんなフィリア(オレ)の様子を見たラテアは「無理しなくていいよ」と言って、いきなりフィリア(オレ)を……オレをその両腕で軽々と抱きかかえやがった――つまり、お、お……『お姫様抱っこ』をしやがったんだよ。コンチクショーめ!

 こ、これはヤバいぞ……オレの中に今もある男心の尊厳が、プライドががが……!!――



 そういえばお姫様抱っこと言えば、前世の記憶で思い出したことがある――オレがBSだかCSだかの再放送で観た大昔のドラマに、キャビンアテンダント物語っていうのがあったんだよ。

 でさ、とある回で主人公(ヒロイン)の友人のデブ女が新婚中に、細身の旦那にお姫様抱っこをねだって実行させたら、旦那がデブの体重を支えきれずに階段で転倒して、二人とも大ケガした……っていうドアホウな展開があった――自分自身のことは殆ど覚えていないっていうのに、こんなどーでもいいことだけはよく覚えているとか不思議だよなぁ……はい、現実逃避終了~~。


 オレの激しく動転した内心などはそっちのけで、ラテアはフィリア(オレ)をお姫様抱っこしたまま、褥台(ベッド)に背を向けた。

 その時ちらっと鏡の方を見ると、そこには――芸術的絵画が出来上がっていたのである。そうそれは『裸の美少女をお姫様抱っこした美青年』という構図の一幅の絵だった……。


「ホノカよ。風呂へは僕が入れよう……これは兄の特権だよ」


 不機嫌そうな顔で何か言いたそうにしていたホノカに対して、ラテアはいい笑顔できっぱりとそう言い切ってドアに向かう。それに対してホノカは――


「ラテア様お待ち下さい。フィリア様、一つ大事なことを言い忘れていました」


 ラテアがドアの前で呼び止められ――その腕の中でオレはホノカの方を見る。


「フィリア様。お早うございます!」


 微笑を浮かべて、ホノカは軽やかにお辞儀した。それに対して――


「お早う、ホノカ。それと、兄様もお早う」


 と笑顔(多分、もの凄くはにかんでいたと思われる)でオレも挨拶を返す。


 そして――

 ドアが開かれると、眩しい光が視界に飛び込んで来た。

 こうしてオレは新しい世界への第一歩を踏み出したのだった――



 最後に一つ言っておく……自分の足で歩いてないのに『第一歩』とかおかしいだろ?――だなんて意地悪なツッコミをしちゃダメなんだよ。フィリアとの約束だからね、お兄ちゃん!



    ★★★LAST-PRINCESS or LUST-PRINCESS★★★



 とある場所にて――


『痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい――――!!!』


「はい。ストップ――!」


「すごいねー、あれだけ喰らっても自我が崩壊(パンク)しないで耐えられるなんて」


「ええ、そうね。でも――だからこそあの人は私たちの支配人格(メインパーソナル)になる権利を奪えたのでしょうけど……」


 ★★★


『チ●コがなければ、お●●コを食べればいいじゃない』


「間違ってはいないわね」


「そだね~、でもあたしはどっちかと言えばチ●コ派かな~?」


 ★★★


『――ボソボソとエロワードを呟いている姿っていうのも、かなり間抜けな図だよな……っていうか可哀相な子? うん、深くは考てはいけない。幸い誰も見ていなかったし、今のは無し! ノーカンで!』


「ばっちり見てたりしてー」


「まったくもう仕方のない人……莫迦ばかりやってるわね」


 ★★★


『貧乳だった! ヒンヌーだった! ないちちだった!』


「まったくもう何度も何度も……!」


「心がはげしく折れる~しょぼ~ん……」


『ん?――空耳か? ま、いっか……』


「あれれ?――もしかして今、あたしたちの声きこえてた?」


「みたいだけど……でも不思議ね? 双方向意識回線(ネットワーク)はまだ構築出来てない筈なのだけど……」


 ★★★


フィリア(コイツ)の背ェちっこいなぁ、一三九センチくらいか? 確か前世のオレは一七〇センチあったハズだから、三〇センチ以上も縮んでちんちくりんになってしまった訳か。クッ残念無念ナリ!』


「ウソつき! そもそも(わたくし)は一四二センチですし、身長差は二三センチだけではなくて?」


「うわぁ~サバ読んでるよ~サバサバ~!」


「それにしても……何故どうでもいいことばっかり覚えているのかしら」


「そだねー、名前とか年齢とか住んでたトコとか、記憶が消えちゃったのにね~」


 ★★★


『まあまだまだ成長期みたいだし、胸を含めてこれからなんだろう。がんばれーフィリアー、そうさキミの成長期(未来)はこれからなんだよ。きっと多分な!』


「ふ、ふんっ当然よ。なんてたってわたくしはあのお母様の娘なのよ」


「そーそー、将来はお母さまのようなものすごーいナイスバディになるんだよね!」


 ★★★


 モミモミモミ。

 モミモミモミ。

 モミモミモミ。


「ありゃ? おっ始めちゃったね~」


「でもあの手つきでは、全然駄目駄目よ」


『うーんちょっと硬いし、やっぱモミ応えが圧倒的に――いや寧ろ絶望的に足りないんだよなぁ……』


「サクランボをつまんで」


「そーそー、先端がすっごく感度がいいんだよね~」


『――じゃあ摘まみながら揉んでみるか』


 モミモミモミ。

 モミモミモミ。

 モミモミモミ。


「そう、そこひっぱって!」


『ッ…………!!!』


「今イッた?」


「ええ、軽くイッたわね」


 ★★★


『アヘ顔ダブルピース!』


「これは流石に引くわ……」


「あれするときは、鏡を見ない方がいいね~……」


『真っ裸で●●ぐり返し!』


「……」


「……」


 ★★★


『ん? はて――この子、なんだかとても懐かしいと言うか、遠いどこかで会ったことがあるような……?』


「そのコはホノカ。私たち・・・のいいコよ」


「そーそー、ともだち? オモチャ?」


 ★★★


『ちょ……待て! ホノカの蛇舌(スネークタン)がサクランボに……あっくすぐったい!!』


「……」


「……」


 ★★★


『ウギャーッ! こ、この野郎……片手でフィリアオレの頭をナデナデしつつ、もう一方の手でナチュラルにフィリアオレの生尻をナデナデしてくるだと!?』

 

「……」


「……」


 ★★★


『こ、これはヤバいぞ……オレの中に今もある男心の尊厳が、プライドががが……!!』


「これそろそろヤバくない?」


「そうね……あの人の意識、もうすぐ許容量が決壊(オーバーフロー)するかしら?」


「どうするの~?」


「そうね。でも助けようにも……」


「今のあたしたちって~……」


「見守る以外、何にも出来ないのだもの」


 生暖かい眼差しを向ける????たちのユルい実況観察(コメンタリー)は続く―― 


寝室からようやく出ました……但し主人公は未だに真っ裸です(汗)

そして次からは、お風呂回が始まります(笑)

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