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三番目の淫魔姫  作者: 素浪臼
CHAPTER Ⅰ Day One
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004 あのコの中にオレはいた ~Who Lived in~ 3

 ドアが開いた途端、暗い室内へ急に明かりが射したので眩しい。顔が逆光で見えない来訪者は、ベッドルームに入るとドアを直ぐに閉ざしてしまい、室内は再び薄暗くなった。

 そして来訪者は真っ直ぐ此方へと顔を向け――


 やばい!――オレは咄嗟に腰をさっと倒そうとする。

 それはあくまで瞬間のことに過ぎなかったが、オレの主観ではこの一瞬はスローモーションの世界になっていた。

 股を広げて高く上げていた腰が下がって行き、逆さで鏡の方に向けていた状態だった首を上げると、オレの視線の先にあるお腹の、さらにその先の不毛の土手の向こう側から、ひょっこりとキノコが生えるように現れたのはコケシ!……じゃなかった、メイドさんだった。


 床の上で裸で股を開いたままの状態のフィリア(オレ)と、その向こうのドアの前に立つメイドさんの視線がぶつかり……そして、二人の間で時間ときが止まった――



 メイドさんは見た!


 真っ裸で●●ぐり返しをしたフィリア(オレ)の姿を、だ――これは拙い。非常に拙い!! 


 フィリアちゃん絶体絶命! 大ピーーンチ!!

 


 因みにオレがやったポーズは、でんぐり返しではないぞ。その上位互換(大人向け仕様)である、『まん●●返し』だからな。ここ間違わないように!

 

 それは兎も角――後で思い返してみたら、この時のオレの行動はかなり異常だった。そうまともではなかったのだ、オレの精神状態は……。

 実際のところ、さっきからオレのやっていることがゲス過ぎだとか思っているだろ? 或いはフィリアが可哀相過ぎだろ、とか思われるかも知れない。

 いやオレの性根がゲスいってことを認めるのはやぶさかではない。その上で言わせて貰うと――当のフィリアもなかなかの淫乱娘(ビッチガール)なのだよ。


 フィリア(コイツ)の過去の記憶を見てしまった今、そのことをオレはよーく知っているのだ。故に本来であればこの程度のゲス行為などフィリアにとっては朝飯前、児戯に斉しい痴態に過ぎない訳である。

 この時のオレは、そのフィリアの爛れた記憶とこの体に影響されて酔っていたというか、オレの精神が汚染されていたような状態だったのだ。

 しかしながらそんな異常な高揚感に浮かれていたオレも、メイドさんに目撃された衝撃で一瞬にして素面に戻った次第である。


 冷静になって考えてみれば生粋のビッチであるフィリアであろうとも、一人で真っ裸になって●●ぐり返しだなんて痴態、フィリアほどの美少女がやっていいことではない。

 ましてそんな姿を他人に見られるだなんて末代までの恥じであろう。そしてそれは今やオレ自身の恥じでもあるのだ。フィリアよ、スマン!――



 さてメイドさんの方に話を戻そう。メイドさんは――もうメイドでいいや。そのメイドは所謂アキバ系ウェイトレスのそれではなくて、ホワイトプリムを被り、過度な装飾を排した黒いワンピースとその上の白いエプロン、ふわっとしたスカート丈を膝下まで伸ばした、それはまさに絵に描いた様な正統派(英国式)の品のある装いをしたメイドだった。

 但し正統派(英国式)とは言ってみたものの、普通のメイドさんは腰に刀なんか佩いたりはしないだろうけどな……。


 凛々しいたたずまいが様になったそのメイドは、青い髪をボブカットにした少女で、見た目は人間(ニンゲン)で言うところの十五、六歳といった感じだろうか。

 同じ綺麗系でもフィリアとはまた違った魅力があり、大和撫子という言葉がぴったりくるような少女だった。

 そのメイドは髪の色以外は、一見すると人間(ニンゲン)とそう変わりがない外見のようにも見えたが、一点だけ異なる部位……暗闇の中で金色に輝く、その眼は明らかに人外のものなのだ。

 しかも光っているだけでない。眼のさらにその奥にある瞳孔が縦に伸びていた――それは蛇眼だった。


 ん? はて――この子、なんだかとても懐かしいと言うか、遠いどこかで会ったことがあるような……?


(そのコはホノカ。私たち・・・のいいコよ)


(そーそー、ともだち? オモチャ?)


 フィリアの記憶を探って思い出して・・・・・みる。ああ、なるほどねぇ、フィリアの記憶によく現れる子だな。だから既視感があるように錯覚してしまった訳か。


 彼女の名前はホノカ――本名をミカヅチ=ツクヨミ・シノヒ・ホノカという。

 【淫魔族(ルッスリアーニ)】と同じ七大支族の一支たる、【蛇媧種(ラミア)】の雷蛇(ミカヅチ)氏族首長(ナーガ)の四女である。 

 ホノカは由緒ある種族の姫なのに、理由までは分からないが何故か今は専属メイドとして、或いは信頼する側近としてフィリアに仕えている、らしい。さらにホノカはフィリアの大切な友人であり、妹分的幼馴染みであり、そして――遊び相手・・・・らしい……。



    ★★★LAST-PRINCESS or LUST-PRINCESS★★★



 オーケー状況整理は終わった――この拙い状況をどう言い訳すればいいのだろう。

 蛇っ子メイドのホノカが寝室に入って来てから、オレと見つめ合うこと、その間僅か数秒ばかりのことにすぎない。

 なおオレはホノカと目が合った直後、●●ぐり返しを咄嗟に止めた為、あの痴態を見られたのは一瞬だけのハズだ。因みに現在、フィリア(オレ)は手足を床に投げ出して、仰向けで大の字状態になっている。


 何と言い繕うべきか――余談だがこの世界の現地語は、基礎知識(スターターキット)にちゃんと組み込んでおいてくれた為、言語の聴き取りや話すことは元より、文字の読み書きも可能な状態……らしい。とは言え本当にちゃんとオレが喋られるのかどうか自信が無いのだが。

 あれっ?……でもさっきオレがアレな一人言を言っていた時って、無意識にこの国の言葉を口にしてた気がするぞ?


 さて言語に問題は無いことはなんとなく分かったが……ここは何事も無かったのように、さり気なくいくべきかな――っていうかそもそもオレはどんな風にしゃべればいいんだ? ここはやっぱフィリアらしく振舞うべきなんだよな。いやそもそもどっちの方・・・・・の口調を真似すればいいんだろう?

 

 ええい、ままよ!――


「や、やあホノカ――」


「フィリアお姉さ――フィリア様、やっと目覚めたんですね!」


 とオレが何か言うよりも前にホノカは我に帰って、そう言うとフィリア(オレ)の前に掛け寄って来る。

 

「良かった。無事目覚められて……五(デカード)もの間目覚めないから、私がどれだけ心配したことか!」


 と言いつつ床に仰向けになっていたオレの上半身を抱き起こす。

 ん? 五(デカード)? ああ、一(デカード)=十日間のことか。つまりその五倍だから五十日間も眠り続けていたって訳か……って五十日間!? フィリアはそんなに長いこと眠り続けていたのか?

 まあ十中八九、その原因はオレにあるんだろうけどねぇ……。


「良かった、本当に良かった! フィリア様がこのまま目覚めなかったら、私もう……!」


 ホノカはオレの頭をその胸に抱き締める――おおうっ、顔がボリューミーな胸に、挟まれる、埋まるー! 

 これはEか……いやDだな。爆乳ではないが十分に巨乳だ――やっぱ女の子のオッパイはこれくらい大きくて柔らかくなきゃね。あまりデカ過ぎても手に余るし、この適度に大きくて揉み応えのある、まさにドンピシャなオレの好みのサイズのオッパイだ……ってそれは兎も角として、ちょ、これやばいっ。


 顔が胸に押しつぶされて――お、おう、これは堪らん。幻欲勃起ファントム・エレクチオンしてしまいそう……じゃなくて! 息が、呼吸が、出来ない……く、苦しい! 

 やばい。折角目覚めたばかりだと言うのに、再び永眠してしまう! このままだと腹上死ならぬパイ上死……いやパイ圧死してしまう羽目になる!

 早くパイ圧から脱しないとマジで死ぬ……腕に力を入れて、全力でどうにかオッパイを押しのけることに成功する。


 ほっ助かったぁ……そ、そうだ。まずはアレのこと確認しとかなきゃ。


「あのホノカさっき、わ、私の――」


 『アレ見た?』と続けようとしたら、オッパイ――もといホノカは抱擁を解き身を剥がして、オレを見つめる。


「あらフィリア様、裸でどうされたのですか? それに床で横になって――」


 どうやらここで初めてホノカは、オレが裸で床に仰向けになっていた異常に思い至ったようだ。


「いや、その――」


「ああ、分かりました! お着替えをしようとしたら、立ち眩みをされてしまったのですね?」


 おっ、ひょっとして●●ぐり返しを見てなかった?――そうそう着替えをしようとしたら、立ち眩みしてこうなっただけなんだ。


 こくこくこくっ――全力で頷く。


 決して●●ぐり返しをしでかした結果ではない。よし、その設定で行こう。

 あと全然関係ないが、立ち眩みのことを医学用語では眼前暗黒感と言うらしいぞ(これ豆な)。


「それに五(デカード)もの間眠っていたんですから、足腰も弱まっていたでしょうし……」


 よっしゃあ! いい感じに勝手に勘違いしてくれたようだぞ。


 こくこくこくっ――もう一度全力で頷いておく。


 因みにこれは後で知ったことだが――【蛇媧種(ラミア)】であるホノカは、種族特有の体質で生来視力があまり良くないのだそうだ。しかもオレの方は闇の中にいたワケで……なのでオレの痴態もよく見えていなかったらしい。

 しかしながらその反面、彼女たちの種族は夜行性で――舌先で周囲の温度を感知して、対象を可視化するという特殊な生態をしているらしい……で室内も暗かった訳で。

 オレがあと一秒でも●●ぐり返しを止めるのが遅かったら、暗闇の中でホノカの夜型熱感知器官(サーモセンサー)へと瞬時に切り替わったその眼で、ばっちり目撃されてしまったことであろう。

 つまりオレたち・・のピンチは蛇っ子の体質に救われたっていうワケだ。

 

 だがホッとしたのもつかの間。その直後――


「はあっはあっ……!」


 ん? 頭の上から荒い息が?


「すんすんすんっ、くんかくんかくんか。ああっ……フィリアお姉様が五(デカード)もの間溜め込んだ濃厚な匂い(スメル)……!」


 はっ?……匂い(スメル)――体臭、だと!?



「この濃密で甘美な匂い(スメル)、もう辛抱堪らないっ……私このまま――」

 

 フィリア(オレ)はその身をホノカの両腕でホールドされたまま、フィリア(オレ)の顔は再びオッパイにギュッと埋められる。押し込まれて……ってまたかよ!

 い、息が出来ない。くっ苦しい……っていうかこのコ、ひょっとしてサキュバスの魅了(ファッシノ)に掛かっている!? 


「お姉様を喰愛くらってしまいたいっ……!」

 

 そしてフィリア(オレ)は、押し倒された!――


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