002 あのコの中にオレはいた ~Who Lived in~ 1
鏡の中からオレを見つめる少女はフィリアだった。
つまり、それが今のオレの姿なのだ――
今更慌てることではない。この体が誰なのか最初から分かっていたことだ。とは言え今ここで初めて、転生後の今の自分の姿を改めて見たことで、自分の魂の来世がフィリアなのだと実感が湧いてくる。
因みに今更だが誤解無きように断っておくと、一人称『オレ』のオレは所謂オレっ娘ではないぞ。前世はちゃんとチンコを実装した、女の子が大好きな極普通の男だったんだからな!
さて今の自分の姿を確認出来たところで、オレが今置かれている立場や状況を整理しておかないといけない。
取り敢えず、ふわっと意識の表層に浮かんだ記憶を確認する。
この体の少女は魔族の幼き姫君で名はフィリアといい、正式名称はとても長ったらしいもの……っていうのはオレが目覚める前に確認したし。でオレがいるこの世界、この国、今いるこの場所について――うん、大体分かった。
あと目ぼしい個人情報はっと……近いうちに三十九歳の誕生日を迎えるのかぁ。ふーん。
……って、ちょっと待て三十九歳だって!? 思いっきりアラフォーやん! ロリBBAやん! 前世のオレより二回り近くも年上だったのかよ!
アイツ前にオレより年上だとは言っていた気がするが、まさかそこまで年増だったとはなぁ……まあ魔族は総じて不老の長命種で成長も遅いらしいから、フィリアも見た目どおりのまだお子ちゃまらしいのだが。
フィリアがロリBBAなのはいいとして、最大の問題は一つ。種族が【淫魔族】で……つまり女性淫魔だっていうところだ。そうサキュバスだよ!
サキュバスって言ったらあれだろ。男とヤって精気を吸わないと生きて行けないっていう宿痾を負った性的破戒工作員のことだろ?
女に生まれ変わったってだけでも激しく鬱だっていうのにその上、寄りにも寄って転生先の種族がサキュバスだなんてさ。男相手にアソコにアレを出し入れされたり、アレを握ったり摩ったり、アレを咥えたり舐めたり、アレを浴びたりゴックンしたり……。
「うわーーーーっ無理無理無理、絶ッ対無理! 絶対ダメッ!!」
想像するだけでも気色悪いし気持ち悪い。あまりにも悍まし過ぎる。こんなん想像するだけで何遍でも死ぬるわ!
とは言え――落ち着け、落ち着けよオレ。サキュバスだからと言って、男と今すぐどうこうしないと死活問題になるっていう訳でもないらしい。これ以上深く考えても精神が病むだけだ。取り敢えずこの件も保留にしておく。
一先ず基本的なことはなんとなく分かったので、今度はもっと深く記憶を探ってみるか。
オレの中に送られたばかりのこの見知らぬ記憶に目を瞑って意識を向けて――基礎知識だけに思考を集中させ意識を絞る。さあ長考開始といきますかね。
思考を深く深く沈めていき……んっ?――その瞬間だった。
なっ――――!?
フィリアの過去の記憶が走馬灯のように……いや、これはそんな生易しいものじゃない。情報の洪水が記憶倒敘となってオレの脳裏に押し寄せたのだ!
「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい痛い苦しい――――!!!
オレはあまりの精神的苦痛に耐え切れず、頭を抱えて蹲った。
これは例えるなら、無理矢理にヘッドマウントディスプレイを装着させられ、ジャンルの異なる3D映像を何十本も同時に大音量で強制的に見せられて、さらにそこへバールのようなもので絶えず頭をぶん殴られ続けるような、そんな感じだ。
しかもその記憶の中には、男としてのオレには到底受け入れ難い悍ましい行為のあれこれも散見された……だが数十年にも及ぶフィリアの蓄積された記憶の大洪水に見舞われてしまったオレにとって、その悍ましい記憶ですらも些末な情報でしかない。
初めて触れるそのあまりにも混沌とした情報の奔流に、意識が飲み込まれて押し潰されそうになる。
さっきフィリアたちがオレに記憶を送った時、『一気に記憶情報を送ったら自我が崩壊する』から、全記憶のほんの一部から必要そうな記憶情報だけを『基礎知識としてテキトーに見繕って送った』とか言っていたが――なんなんだこの膨大な記憶量は!!
おまけにこの情報には二人分の記憶が含まれているとかさ……チクショー! なにが『テキトーに見繕った基礎知識』だよ。ざけんなっ!!
ま、ず、い……。
あ…頭がぁ……わ、れる……。
い、意識が、押し潰され、る……っ。
(はい。ストップ――!)
…………。
…………。
…………。
ん? 記憶の大洪水が止まった……?
「ハァハァハァ……マジでヤバかった……!」
チビらなかった自分を褒めたいわ――その代わり全身汗塗れになっていた。うわぁ、気持ち悪い……今すぐ風呂に入りてぇ。
どうやら慣れない内は、フィリアの深層記憶にはあまり触れない方が良さそうだな。この件に関する文句は後で本人たちに言うとして……。
頭痛は治まったし、現時点で知りうる身辺情報の確認は完了した訳だし由とするか。
オレは気を取り直すと、次に確認するべきことを考えながら立ち上がった。
「さて次は――」
……ってあれ? 今の声って――これが今のフィリアの声なんだよな? よし、ちゃんと試してみるか。
「……あーーあーーーーっ、テステステスッ只今マイクのテスト中!」
おっなんて可憐で優美な声! うん、確かにフィリアの声だ。よし続いて――
「いっぱつ……ヤってみる?」
うん、いいねいいね! あとは――
「このエロみ地獄へ流します」
うんうん、マジで可愛いぞこの声!
「お姉ちゃんどいて! そいつ犯せない!!」
あ~ヤバい、これクセになりそうだわー。
「チ●コがなければ、お●●コを食べればいいじゃない」
くくくくくっ、面白れぇウケるわー。
…………。
…………。
…………。
ん?……って、いやいや待て待て、ちょっと待てよ。これおかしいだろ? なんでさっきからオレの思考が極端に下ネタ方面へ偏ってしまっているんだよ!? しかも前世のオレ自身は二十歳くらいだったのに、発想が妙にオヤジはいっているのはなんなのさ?
残念なことに自分自身のことはあまりよく覚えていない。だがオレだって元は健康な男子。性欲がそれなりにどころか、エロいことが大好きだったっていう自覚もあるんだけども! だからって前世のオレってそんなにも品性の欠如したゲスい人間だったのだろうか? 自信無いけど多分違うと思う。
これはおそらくオレの精神があの子たちの記憶に汚染されいるせいか、或いは――特殊な種族であるこの体に精神が引っ張られているせいなのかも知れない。
でもまあ、こんなことで悩んでいても仕方ないな。アタマの中について考えるのは後回しにして――
なんかさっきから問題を後回ししてばっかだが、気にしないことにしよう。
いやそもそも冷静になって考えてみたら、暗い部屋で一人、ボソボソとエロワードを呟いている姿っていうのも、かなり間抜けな図だよな……っていうか可哀相な子?
うん、深くは考てはいけない。幸い誰も見ていなかったし、今のは無し! ノーカンで!
次は――さっきからずっと気になっていたフィリアの格好のことだな。
ええとナンデスカコレ? この身に纏っていたのは体を包む布面積が少なくて、透け透けな紫色……という明らかにエロに特化したいかがわしい寝巻き――まあ要するにあれだ、ベビードールのことだよ! それを纏ってやがるのだ……。
★★★LAST-PRINCESS or LUST-PRINCESS★★★
ベビードールとは、なんと破廉恥な!
ちらっちらっ。
げっ、おまけにパンツの方もベビードールとお揃いで紫色の透けパンじゃん。
ジロジロ。
しかも紐パンだし。
ジーーーー。
けしからん、実にけしからんぞ!
え? さっきからガン見しながら何を言っているんだって? ええ、しっかりがっつりガン見していますが、なにか?
これが女子に縁の無かったうぶな中学生であれば、恥ずかしがって両手で目を隠して見ないようにするのかも知れない。だがぁしかぁし! 大人のオレは違う!
だってこの体って歴としたオレの転生体ですし~、それが例え先住人格――フィリアたちがいようと関係ない。これは自分の体ですからどんだけガン見しても無問題!
よしっ自分にいい訳完了!
さて散々に文句を言ってはみたものの、似合っていないのかと言えばそんなことはない。大人びた怜悧な顔と少女らしい無垢な顔を合わせ持った、小悪魔の如き美貌を持つフィリア――細身で華奢な体型にベビードールを纏うことで、淫靡な雰囲気が何倍にも増しているように見える。
相手に例え幼女趣味の気が無くとも、こんな艶姿をした淫靡な雰囲気の少女に誘われたりしたら――或いはサキュバスの魅了を使うまでもなく男なら誰であろうとロリっと、いやコロっと行ってしまうに違いない。因みにオレ自身は幼女趣味ではなかった……ホ、ホントダヨ?
ふぅ~っ。
ベビードール姿のフィリアへの視姦を思う存分愉しんだ訳だが――これはまだほんの序の口に過ぎない。そう真のお楽しみはこれからなのだよ。
それと先に断っておくとだな、さっき全身に汗を掻いたから気持ち悪いのだ。だからこれは仕方ないことなんだよ――よしっ自分にいい訳パート2完了!
くくくくくっ、うふふふふっ、あははははっ……我が心が健全な男子で! そして、そしてこの体が!――女体とくれば! ヤることと言ったらアレしかないだろ? そうアレだよ、アレ!
ってことで……ではでは早速、いざっ!――
「貧乳ご開帳!!!」
以上。ステータスオープンでした(笑)






