き、筋肉痛が~!!
旅を始めて3日目の朝。ルル様に異変が。
「全身が痛いです!動けません!」
起き上がるなり「ぴぎぃ!」と叫び、そのままぱたりと倒れてしまったルル様。昨日も一昨日もテントに入り込むなり眠りについていたのでよほど疲れていたのだろう。かなりの運動量だったからなぁ。疲労が一気にきたか。
「恐らくですが、筋肉痛だと思います」
「筋肉痛…ですか?」
「はい。運動した後、使った筋肉に痛みが生じることですね。ルル様が一生懸命頑張ったから筋肉痛になったのです」
「頑張った勲章なのですね!」
「普段運動してないからよ!クロネもお姉ちゃんを甘やかさないで!」
「まぁまぁ。ともかく筋肉痛は次第におさまりますので、それまで私がおんぶします」
「ごめんなさい…よろしくお願いします」
ということでルル様をおぶって移動開始。
旅も3日目。そろそろ村や町があってほしい。久しぶりにぐっすりと寝たい。森を抜ければ近くに集落があると信じてひたすら歩く。
途中ゴブリンやスライム、カエル型のモンスターなどが出てきたが、リリに処理をしてもらう。
「雑魚モンスターしかいないわね!」
「リリがいて助かる」
「ありがとうリリちゃん!」」
「ホント?ふふーん。どんなモンスターが来てもあたしが倒してあげるわ!」
リリは調子に乗せると本当に強い。武器は持っていないが素手で魔物をボールのように吹き飛ばす。
この森の魔物のレベルは低いようなのでリリ無双で切り抜けられそうだ。
そのまま歩くこと数時間。ついに森を抜けることが出来た。
「かなり広い森だったわね」
「そうだね。さて、近くに集落はあるかな…」
森を抜けた先は見渡す限り草原だ。裸眼だと何もないように見えるけど、視覚を魔法で強化することで微かに建物らしきものを見つけることが出来た。
「あっちに人工物らしきものが見える。行ってみよう」
「あっち?どれどれ…本当ね。建物が見えるわ」
…どんだけ視力良いんだリリは?無駄にスペックの高い少女である。
そして建造物に向かって歩くこと更に数時間。近づくにつれそれが物見やぐらだとわかるようになってきた。途中森に向かう狩人のような人たちとすれ違ったので確認したところ、小規模の村らしい。宿泊施設もあるようだ。
「今夜は宿で眠れますよ。2人とも」
「久しぶりにベッドで寝られるのね!」
「テントで眠るのも楽しかったですけどね」
私はここ数日しっかり寝ていないので助かる。本当はリリにも夜の見張りをしてもらいたかったのだが…この2人は寝るのが早すぎる。テントを張ったらすぐに寝袋に潜ってすやすや寝やがるのだ。
無理やり起こしてもいいのだけど…リリに命を預けるのが怖すぎるので仕方なく私が夜も見張りをしていた。
この村で一緒に旅をしてくれそうな人がいれば誘いたいのだが…そう上手くはいかないだろう。だけど早めにこの問題は解決しないといけない。じゃないと私が過労で倒れる。
「着きました~」
「ご飯を食べられるところを探しましょう」
「そうね。お腹ペコペコ」
村の中に入って食事が出来そうなところを探す。
ちょうどお昼時だったからか、お肉の焼ける匂いがする建物があったのでそこに3人とも吸い寄せられる。
「いらっしゃい。3人でいいかい?」
「はい」
「好きなテーブルに座ってくれ。今メニュー出すからよ」
壁際の目立たない席に座る。
全員ステーキを選んで待つことに。
その間にリュックから帽子を取り出してリリに手渡す。
「リリ。村にいる間はこの帽子をかぶって」
「なんで?」
「リリは王国の王女で人気者だから。本物だって知られたら騒ぎになるでしょ」
「確かにそうね!気が利くじゃないクロネ!」
リリに帽子をかぶらせる。ここは王国から離れてはいるが、それでもリリの容姿を知っている人がいないとは限らない。念には念を入れるべきだ。
リリに帽子を被せてから周りの様子を伺う。私たちに注目している人はいない。ただルル様がジト目でこちらを見てはいるが。
「どうしましたルル様?」
「私も王女なんですけど?」
「ルル様は大丈夫です」
「なんでですか?」
「ルル様を知っている人がいるはずありませんから(ニッコリ)」
「ひどい!!」
「お姉ちゃん人気ゼロだからねー」
「ゼロじゃないよリリ。マイナスだよ」
「追い打ちやめて!!」
暇つぶしにルル様をいじっているとステーキがきたので食べる。しっかり味付けされた料理はおいしい。思わず無言でぱくぱく食べてしまう。ルル様とリリも運動部の学生のようにがっついている。
そんな私たちの食べっぷりが面白かったのか、シェフが笑いながら私たちの席までやってくる。
「がはは!いい食いっぷりだな!見ない顔だが、何しにこんな村に来たんだい?」
「北の海を見に行きたくて。その途中にここへ立ち寄りました」
「そうかそうか!海には俺も行きたかったんだ!未知の食材がたくさんあるらしいからな!帰りもこの村によって土産話をぜひ聞かせてくれ」
「そうします」
「おう。これはサービスだ。嬢ちゃんたちの旅が良いものになるといいな」
気前のいいダンディシェフが皿一杯に盛り付けられた果物を出してくれる。その皿とシェフを交互に見てルル様がおよよよと泣き始めた。突然の号泣に慌てるシェフ。
「な、なんで泣いてんだ?嬢ちゃんは?」
「うぅ…見知らぬ人にこんなに親切にされたのは初めてなんですぅ~」
「お、おう…変わった嬢ちゃんだな…」
「情緒不安定な子なんです。罵ると喜びます」
「喜ばないですよ!」
「食べていいの?ねえねえこれも食べていいの!?」
「あ、ああ。まぁなんだ。ゆっくりしていってくれよ」
私たちが残念な部類の人間だと察したのだろう。そそくさと厨房に戻ってしまった。
ともあれ。私たちは全ての料理をぺろっと食べ終え、食事処を後にした。
それから宿に向かい、部屋を取る。
「3人部屋ありますか?」
「すみません。2人部屋なら空いているのですが…」
「それでいいです」
「ありがとうございます。何泊いたしますか?」
「1泊で」
「それでは銀貨3枚いただきます」
「はい」
「確かに頂戴しました。朝食付きですので、9時までに食堂にいらしてください」
「わかりました」
無事部屋を取ることが出来た。ちなみにこの世界の通貨は金貨、銀貨、銅貨、銭貨の四種類から構成されていて、それぞれ…
金貨一枚=一万円
銀貨一枚=千円
銅貨一枚=百円
銭貨一枚=一円
くらいの相場だ。非常にわかりやすい。
取った部屋を見に行く。
部屋の中は広く、ダブルベッドが一つ。私たち三人でもギリギリ寝られる大きさだ。
マジックバッグをベッドの横に置いて二人に話しかける。
「さて、私はもう寝ます。2人はどうしますか?」
「あんたもう寝るの!?探検しましょうよ探検!」
「わ、私も身体が痛くて歩けないので休みます…」
「えー!お姉ちゃんも!?つまんなーい!」
ブーブー文句を言うリリ。子どもか。
だが私はもう限界!ベッドを見た途端睡魔が襲い掛かってきていた。もう意識はほとんどない。
「金貨一枚あげるから…これで遊んできな…お休み…」
「いいの!?わーい!」
「リリちゃん!正体がバレちゃだめだからねー!」
「わかってるわよ!行ってきまーす!!」
リリの遠ざかっていく足音が聞こえるが…
私はそのまま眠りについた。
「…はっ。今何時?」
かなり寝てしまった感覚がある。窓を見ると暗くなっている。いかんいかん。つい熟睡してしまった。
急いで起き上がろうとすると服を掴まれる。
「ん?」
「まってくださぃ~…」
「な…ルル様と一緒のベッドで寝ていた…だと…?」
私の服を掴んだのはルル様だった!
自分で着替えたのだろうか、ジャージを着ている。だがチャックをしっかり閉めていないのでその中のシャツが、更には谷間も見える。
相変わらずの爆乳だ。今日一日おんぶしていた時の背中に当たる柔らかかった感触を思い出してムラムラしてくる。
…多少触っても罰は当たらないだろう。一日おぶってあげたわけだし。うん。
ぐっすり眠っているルル様のジャージのチャックをゆっくり下ろす。
そしてシャツを慎重にめくりあげ豊満な胸を眺める。
「はぁ…はぁ…最近リリがいたからあまりルル様とイチャイチャできなかったけど………ん?そういえばリリは?」
寝ぼけていた思考がクリアになっていく。
そうだ。私たちは旅の途中だ。それで森を抜けて村を見つけて安心感で寝てしまって…?
ベッドから起き上がりリリを探すがいない。そういえばお金を渡してしまった記憶が…まだどこかで遊んでいるのだろうか?
だとしたら探しに行くべきか。リリは強いけど頭が残念だ。どこかでやらかしてしまっているかもしれない。
そう考えていると突然ドアが開く。
開けた人物はリリだった。なぜか息が上がっている。
「はぁ…ふぅ…はぁ…クロネ!起きたのね!すぐにここを出る支度して!」
「?」
部屋に入ってくるなりそう告げ、布団を引っぺがしてルル様のほっぺたをビンタして起こすリリ。おいおい。
「いったいどうしたの?」
「い、痛いです~!何事ですか!!」
「追手よ追手!私を連れ戻そうとしてくる子が村にいたのよ!」
「なに?」
王国からの追手?もう来たのか。思っていたよりも早い。
とにかくここから離れなければいけない。急いでマジックバッグを取り部屋を出ようとしたところでドアから入ってくる一人の女の子が。
「ふっふっふ。逃がさないですぞーリリフレール殿!」
間に合わなかった!
入り口に目をやると…忍び装束のような服を着たイヌ耳が生えている獣人の小さな追手が部屋に侵入してきていた。