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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
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王位決定戦 完全決着!

 ルル様の底知れない魔力。

 その魔力をどう使うのか…?


 ルル様の右手が光り輝く。

 あれは…みんなと契約した時の紋様?


 全員分の契約時の紋様がルル様の右手の周囲に出現している。


「皆さんに私の魔力を供給します!」

「!」


 ルル様の魔力を供給!?


 そう言ってルル様が右手を掲げると、倒れ伏していた味方の身体が光りだす。

 最初に立ち上がったのはコロさんだ。


「うお!?傷が消えた…?しかも絶好調だぜ!」

「これは…ルルさんの力なのでしょうかぁ?」

「…感謝するぞルル」

「クロネ。乗って」

「怪我は大丈夫なんですか?コリナさん」

「ルルのおかげで元気」


 コリナさんが私に近寄り、背中に乗せてもらう。

 背中越しにコリナさんの身体を確認してみるけど、本当に傷一つ無くなっていた。


 それどころか常に身体が光っている。


 満身創痍から一転。全員が立ち上がったのを見てリリが目を輝かせる。


「凄いわねお姉ちゃん!そんなことが出来るなんて知らなかったわ!」

「ととと、当然です!お姉ちゃんは凄いんです!」


 ルル様の目が泳ぎまくっている。

 私も知らなかったから、本当に初めてやったのだろう。


 ちなみに私の怪我は治っていない。契約を交わしていないからだ。

 

 でもとりあえずコリナさんに乗ることで安全は確保出来たので、回復魔法を使って自力で怪我を治す。


「ふぅ…落ち着けた。ありがとうございます。コリナさん」

「お礼ならルルに」

「そうですね。あとで伝えます」


 痛みが引いていく。



 その間にも試合は動いていた。


 コロさんが再びリリに単身挑みにかかっている。


「今なら負ける気がしねぇ!もいっかい勝負だ!」

「いいわよ!」

「もぅ…またコロさんは好き勝手にぃ」


 コロさんが腕をぐるぐる回しながらリリに近づいていく。

 その後ろでは、呆れながらもミツキさんが援護をしてくれる様子だ。


 この組み合わせはいつもリリに軍配が上がっているけど…今回は様子が違った。


「うそ…コロのくせに強い!?」

「オラオラァ!」

「【水弾】…あらぁ?水のある場所みたいに威力が出ますぅ!」

「!」


 まさかのコロさんがリリと対等に戦っている。

 その隙にミツキさんが水弾を発動するが、その水弾も一発目に放ったものより格段に大きくなっている。


 それでもリリは冷静で、水弾を忍者刀で真っ二つにし、そのまま後退する。

 そこを追撃するコロさん。かなりイケイケだ。


「やれるぞミツキィ!今日こそコイツに勝つぞ!ぐへ」

「前に出すぎですぅ!もっと下がってください!!」

「お、おう…」


 調子に乗って後ろのミツキさんへ振り向いている隙にリリに詰められてボコられる。

 コロさんは後ろに吹き飛ばされ、ミツキさんにも踏まれているけどすぐに起き上がった。


「おお!?思ったよりダメージがねぇ…いや、どんどん回復していくぞ!?」

「ルルさんの魔力供給が常時発動しているようですねぇ」

「ハァ…ハァ…皆さん!どんどん攻めてください!」

「…ルル様の魔力が尽きるまでが勝負です。リリを追い詰めましょう」

「わかった」


 皆は常にブーストが掛かっている状態のようだ。

 コロさんの戦闘を見るに、回復の他に身体能力も向上している様子だった。


「コリナさん。どんな感じですか?」

「身体が軽い。リリの速さにもついていけると思う」

「それはいい情報ですね」


 トトちゃん憑依状態のリリと互角のスピードを得ているのは強みだ。

 ここで攻め立てられればいいんだけど、あちら側も話し合いをしているようだ。


「リリ殿。向こうはルル殿の魔力供給で全員強化されているようですぞ」

「そうね。さっきよりも楽しめそう!」

「…ルル殿の魔力が切れるまで待つという選択肢が有効かと思いますぞ」

「そんな勿体ないことできないわ!」

「…でしょうな。つまり真っ向から対決すると?」

「ええ!気合い入れるわよ!トト!」


 どうやら、あちらさんも時間稼ぎをするつもりはないらしい。

 リリの性格を考えると当然か。


 さて…ここで私も一緒に攻撃に参加したいけど、正直私の魔法は今のリリに全く通用していない。


 結界は時間稼ぎにもならないし、どんな属性の魔法もリリには効果が無い。

 ゲームみたいにダメージを数値化するなら1とか2ダメージしか入らないだろう。


 …けど、私も何か力になりたい。


「…コリナさん」

「なに?攻める?」

「いえ。…ルル様のところに行ってもらってもいいでしょうか」

「?…わかった」


 私たちは攻撃には参加せず、最後尾で支援しているルル様とコルナさんのところまで下がる。

 戻ってきた私たちを首を傾げながら迎えてくれるルル様。


「クロさん?どうしたんですか?」

「まだ大丈夫ですか?ルル様」

「はい!まだまだいけます!」

「そうですか…では一つお願いがあるのですが」

「なんですか?」


 ルル様の顔色を確認する。

 汗は搔いて息も若干乱れているけど…本人の言葉通りまだ余裕はありそうだ。


 このお願い事はルル様の負担を増やすことになるけど…このままでは勝てるかわからない以上、この方法は取っておきたいのだ。


「ルル様。私とも契約してください」

「クロさんと私が契約…ですか!?」

「はい。悔しいですが私の魔法ではリリを倒すことができません。ですが、ルル様のブーストがあればあるいは…」

「…わかりました!やりましょう!」


 よかった。これで私も出来ることが増える。

 

 時間もないし早速契約しよう。そう思いルル様に近づくと、ルル様がなぜか顔を赤らめてもじもじしている。


「どうしたんですかルル様?」

「えとえと…こういう時はやっぱりキスで契約したりするんでしょうか!?」

「はぁ?何を言っているのですかルル様。みんなと同じように右手を重ね合わせるだけです」

「あ、はい(しょぼーん)」


 落ち込むルル様。

 いや、私だってキスで契約とかに憧れはあるけど…こんな大観衆の前でキスできるほど私の神経は図太くない。


 少し脱線してしまったが…

 改めてルル様と契約を交わす。

 右手と右手を重ね合わせてお互いの魔力を流すイメージ。


 この時、ルル様のイメージする形の紋様が右手の甲に現れる。

 そして、私たちの紋様はなぜか唇だった。


「うわぁ…」

「ち、違いますよ!?チューしたかったなんて思ってませんよ!?」

「あとでいくらでもしますから戦いに集中してください」

「!」


 嫌な紋様すぎる。ルル様に呼び出されるとき毎回この紋様が浮かび上がるのか…


 …ともかく、これでルル様とのパスが繋がった。

 すぐさまルル様の魔力が流れてくる。


 私の魔力とは違う、暖かくて優しい魔力を体内に感じる。

 それと同時に、今まで感じたことのない身体の奥底から力が湧き上がってくる感覚。


 …これならリリにも対抗できるかもしれない。


「コリナさん。私たちも攻勢に出ましょう」

「わかった」


 リリとコロさん・ミツキさんの戦闘領域に入っていく。

 丁度コロさんが忍者刀で切り付けられる直前だったので結界を発動する。


「【結界魔法】!」

「え…壊せない!?」

「ナイスカバーだクロネェ!」


 よし。私の魔法がリリに通用する!

 結界が壊せなかったことに驚きを隠せないのか、リリの動きが一瞬止まった。


 その隙を狙ったミツキさんの水弾が直撃する。


「う…!」

「いけるぞ!このまま押し切ろうぜ!」

「はい。決着を付けましょう!」

「勝つのはあたしたちよ!トト!」

「忍法!【影分身の術】!」

「「「!!」」」


 リリの姿が三人に分身する。

 トトちゃんの忍法も使えるのか!


 分身したリリと一対一の戦いを強いられる。

 どれが分身か見分けがつかないほど三人の動きは似通っていた。


 三人がかりでもリリを倒せるかわからなかったのに数的有利を失ってしまった。

 …かに思えたが、上空から極太の雷が落下した。


「落下した」と過去形なのは、リリが痺れて倒れるまで、()()()()()()()()()()()()()()()()()。目の前にいたにもかかわらず。


 スフィルクスさんがゆっくりと降りてくる。


「【無音迅雷】…やられっぱなしは性に合わんのでな」

「「「!!」」」


 雷に耐性があるリリでも声が出せなくなる程の衝撃。

 雷の太さからも相当な威力を秘めた魔法なのだろう。


 影分身が解除され、リリが一人に戻るが…それでもリリは立ち上がる。


「…やるじゃないのスフィルクス。まだびりびりするわ」

「我の切り札を切っても立ち上がるとはな。大したものだ。…我は魔力を使い果たした故ここまでだ。ルルよ。我への魔力供給はもうよい」

「…わかりました」


 スフィルクスさんの身体から光が消え、そのままスフィルクスさんも消えた。



 頼みの綱であったスフィルクスさんがリタイア。それに加えてさっきスフィルクスさんと会話していた時のルル様の辛そうな表情。タイムリミットはもうすぐそこだ。


「リリ。そろそろ勝負を決めよう」

「あら。あたしはまだまだいけるわよ?」

「こっちはそうもいかないんでね」

「ふふん。ま、いいわよ。すっごく楽しかったし!全力出すわよー!」


 リリは持久戦という選択肢を捨て、私たちの望み通り最終決戦を選んでくれた。

 本当にリリは良い性格をしている。




 リリの身体から闘気が迸る。

 コロさんが思わず後退るほどの圧倒的脅威。


「うぉ…」

「コロさんは前に出てくださいぃ」

「は!?死ぬぞ俺!?」

「私とミツキさんで必ず援護します。ここが正念場です」

「…くそ!やってやらぁ!!」

「かかってきなさい!」


 コロさんが前に出ようとしたその時、それよりも速くリリが前に詰め、先手を奪う。


 リリの最高速度に虚を衝かれ、無防備になっているコロさんの目の前に結界魔法を展開する。

 リリなら先手を必ず取ってくる。その読みが当たったおかげでギリギリ展開が間に合った。

  

 しかしリリは全く動じない。


「それはさっきので掴んだわ!」

「!!」


 リリが全霊の一撃を結界にぶつける。

 結界は壊れはしなかったもののひびが入り、間髪入れずに放つ二撃目の斬撃で破壊される。


 そのままコロさんにラッシュをかけるリリ。


「ほらほらほらぁ!!」

「ぐは…うげ…おい!援護はどうした援護はぁ!?ぐへっ」

「…もう無理ですねぇ。クロネさん。あの子は見捨てましょう」

「…無念ですが」

「諦めんなよぉ!?ぐっはぁ!!」

「次行くわよ!」


 コロさんを場外の壁に叩きつけ、そのまま私たちに向かってくるリリ。

 ごめんなさいコロさん。あんな簡単に結界を壊されるとは…



 リリの次なるターゲットは私とコリナさんだ。長い戦いだったけど、ここで私がリリを倒す!


「【鏡面結界】!!」

「もう結界の壊し方はわかってるのよ!」


 先程と同じようにリリは二撃で結界を壊し、その後ろにいる私をコリナさんごと斬る。


 ()()()()()()


「な…クロネが割れた!?」

「ミツキさん!」

「えぇ!」

「「【水流激】!」」

「!!」


 鏡を囮にして、リリを挟み込むような立ち位置に移動していた私たちが全ての魔力を使い切る覚悟で放った水魔法。


 その威力は間違いなく過去最高。

 これでリリを倒せないようならもう私たちに打つ手はない。


「ミツキさん!ここに全てを賭けます!」

「わかりましたぁ!」



 長時間の魔力放出。流れ出た水は闘技場を浸水させ、お腹の辺りまで水が溜まるほどの水量。


 そうして魔力が空になるまで続いた【水流激】。

 水浸しになったリリの姿が顕になる。



 リリは…立っていた。



「そんな…」

「これで倒れなんて、お父様でもここまではぁ…」

「今のはあたしでも危なかったわ…息が出来なかったもの。…でもこれであたしの勝ちみたいね。お姉ちゃんも頑張っていたけどね」

「え…ルル様!!」


 いつの間にか私の身体から発していた光が消えていた。

 ルル様の魔力も感じられず、後ろを振り向くとルル様がコルナさんの背中で眠っていた。


「すぅ…すぅ…」

「ルルは魔力切れで気を失ってしまったようじゃ!命に別状はないぞよ!」

「…よかった」


 コルナさんの言葉で冷静さを取り戻す。


 しかし状況は…絶望的か。

 リリが勝利を確信した顔で一歩前に踏み出す。


「クロネ!あとはあんたを倒してあたしの勝ち!…ってあれ?」

「!」


 リリが一歩前に踏み出そうとしたようだが、足が動かずにそのまま前のめりに倒れる。

 そしてぷか~と水上に浮かび、仰向けの姿勢で叫ぶリリ。


「ななな、なんで!?身体が動かないわ!」

『リリ選手ダウーーーン!!勝負あったか!?』

「ちょ!ちょっと待ちなさい!すぐ回復するから!」

『えーと…どうしよう魚ちゃん』

『10カウントでそれまでに立ち上がれなかったらルル・クロネペアの勝利うお』

『だそうなのでカウント取ります!10!…9!…8!』

「ええ!?なんで動かないのよ!トト!?」

「ダメージの蓄積が思っていた以上に大きかったのではないですかな…拙の憑依合体ももう維持できないのですぞ…」

「うそぉ!?」


 カウントが5まで進み、変身が解除される。

 実態に戻ったトトちゃんも水に浮かんだまま動かない。


「痺れて動けないのですぞ…」

『4!…3!…2!…1!…0!試合終了!勝者ルル・クロネペア!!』

「「「「「わあああああああああああ!!!」」」」」

「うっそでしょ!?こんな悔しい負け方であたし負けるのーーー!?」


 少し体が動くようになったのか両手足をバタバタさせながら悔しさを顕にするリリ。



 長かった戦いが終わり…

 こうして王位決定戦はルル様と私の優勝で幕を閉じたのだった。

もう少しで完結します。

最後までお付き合いくれたら嬉しいです!

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