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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
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秘奥義!憑依合体の術!

 決勝戦の試合展開は召喚を成功した私たちが有利だったが、トトちゃんの秘奥義でリリとトトちゃんが合体し、二人を足して二で割ったような女の子が誕生した。


 圧倒的な存在感。それはあの王様以上にも感じるほどだった。


「いっくわよー!」

「「!!」」


 リリが突然消える。

 本当に瞬間移動したかのような…そんな超高速のリリの動きに誰も反応が出来ない。


 そして音も無くコロさんの後ろに移動したリリがとんでもない力の蹴りを放つ。

 無防備な背中に蹴りをもらったコロさんが、声にならない叫びを出しながら倒れる。


「…がっ」

「まずひとーり!」

「近ぁ!?【水弾】!」

「水遊びかしら?二人目!」

「ななな…!」


 リリはミツキさんの攻撃が直撃したにも関わらず、それを無視してそのままミツキさんも忍者刀で倒してしまう。


「ミツキさん!!」

「安心してお姉ちゃん。この剣はトトの魂が宿っているから、手加減してくれているわ」

「はいですぞ。刃は切れ味を落としていますからな」


 あ。そこから声出るんだ。

 トトちゃんの声が忍者刀から聞こえてくる。

 トトちゃんの言う通りミツキさんは倒れ、呻いてはいるけど切り傷は見えない。


 それはありがたいのだけど…問題はその前だ。

 ()()ミツキさんの水魔法を受けて無傷であるという事実。これがマズい。


 ミツキさんは水が無いこの闘技場では十全の力を発揮できないとはいえ、その威力は私たちのメンバーの中でも強力な部類に入る。


 そのミツキさんの攻撃がノーダメージ…?

 スピードは確実に上がっているけど、防御力もアップって…強すぎじゃない?


 あっという間に目の前にいた二人が倒され、動揺して動けないでいる私とルル様のフォローのためにスフィルクスさんが魔法で足止めをしてくれる。


「しっかりしろお前たち。【雷撃雨】」

「よっ。っほ。っほい」

「なに…?」

「空中にいてもあたしたちからは逃れられないわよ!手裏剣!」

「馬鹿な…!」


 …信じられないことに、スフィルクスさんが発動した無数の雷をリリは全て回避して見せた。雷を避けるなんて馬鹿げている。


 しかもリリが懐から取り出した手裏剣が、スフィルクスさんの翼に当たり撃墜されてしまう。



 リリたちが変身して僅か数秒。

 そのたった数秒で…私たちの半分以上の戦力が無力化されてしまった。


 これで残すところは私とルル様。そしてコルナさんとコリナさんだけとなる。


 ルル様は倒れたみんなの心配をして冷静さを失っている。

 そして倒した張本人であるリリは舌なめずりをしながらこちらを笑顔で見ていた。


「さぁ!楽しい鬼ごっこを始めましょ!」

「そんな…スフィルクスさんまで…」

「ルル様。リリが来ます!気持ちを切り替えてください!」

「!!」

「よーいドン!」


 リリが再度私たちに向かってくる。

 私が魔法で何とかするしかない!!


「【水弾】【火弾】【雷弾】【風弾】【土弾】!」

「カラフルでいいわね!」


 どれかの属性が弱点に引っかからないか試すために様々な属性攻撃を試してみる。

 しかしすべて等しく左手一本で破壊される。


「苦手な属性とかないわけ?」

「ないわね!」

「ずる…それっていつまで変身できるの?」

「最後の練習では…二時間くらいだったかしら?」

「食事の為に解除しましたからな。まだまだいけそうでしたぞ」


 …ダメだコレ。

 どうしようもない。二時間ってことはこの試合中の変身解除も期待できない。


 しかも、どの属性の弾を破壊する時も時間差は無かった。本当に苦手意識が無いようだ。



 手が付けられないとはこのことか。

 コリナさんの「本気の逃げ」にも笑顔で追いついてくる。


「く…ごめんクロネ。逃げられない」

「仕方ないです。ここで手を打ちます。中央まで行ってもらっていいですか?」

「わかった」


 コリナさんに中央まで移動してもらい、ルル様とリリのポジションが反対になるように調整する。


「まだ何かしようというの?」

「うん。諦めないよ」

「いいわね!」


 リリを正面から倒すのは私の力では難しい。

 だからここは王様に勝利した時と同じ方法を取る。つまり、場外負けでの勝利。


「ふぅ…いきます。【大津波ビッグウェーブ】!」

「!!」


 完全に油断しきっているリリに自然の恐ろしさを教えてやる。



 津波の勢いは本当に怖い。

 横から押し寄せるエネルギーが強すぎるため、ほんの少しの波でさえ身動きが取れなくなるのだ。

 私が過去にインターネットで調べた時、1メートルの津波に巻き込まれた時の死亡率は100%と書かれていた。



 私の魔法で生み出した津波は自分で制御できるためそこまで危険なものにするつもりはない。


 この魔法は危険で安易には使用できないけど、今のリリに勝つにはこの方法しか思いつかなかった。

 圧倒的な水圧でリリを場外まで押し出してすぐに魔法を解除する。これしかない。



 いくら力が強くても、魔法に耐性があっても、どんなに速くても、自然の力の前では無力だ。


「そのはずだけど…私の魔力でリリを感知できない…?」

「クロさん!上です!」

「!?」


 リリの気配が感じられず、魔法を解除しようか迷っていた時にルル様の声に従って上空を見ると、リリが()()()()()()()()()


 何を言っているのか自分でもよくわからないけど、そうとしか表現できない方法でリリはこちらに向かってきていた。


「…うそでしょ」

「これぞ忍法!水走りの術よ!」

「水面上の足が沈む前にもう片方の足で前に踏み出す。これを繰り返せば水上を歩ける、忍者の基本ですぞ」

「無茶苦茶か!」


 波の上を人が走っているという非現実的な光景に思考が停止する。

 そして大波を乗り越え私の至近距離まで来たリリを見て、止まっていた思考が戻り、急いで魔法を唱えるが…


「やば…【結界ま…】」

「遅いわ!」

「クロネ!ぐぁっ…!」

「コリナさん!クロさん!」


 魔法の展開が間に合わず忍者刀での攻撃を貰いそうになる。

 しかしコリナさんが身をよじって私を守ってくれたおかげで直撃は避けられた。

 けどその代わりにコリナさんが大ダメージを負ってしまい、私共々倒れてしまう。


「ぐ…痛い…」

「クロさん!大丈夫ですか!?」

「うぅ…大丈夫じゃないです」


 地面に身体が擦れていたい。

 直接攻撃されたわけじゃないのに、体中が痛くて泣きそうになる。


 魔法が使える私だけど中身はただのもやしっ子なのだ。

 ルル様の為にも負けられないのに…身体が上手く動かない。


「ルル様…」

「クロさん!」

「うーん。やっぱりこの変身は強すぎるわね。クロネをこうもあっさり倒せるとは思ってなかったわ。…さて、あと残っているのはお姉ちゃんとコルナだけだけど、棄権する?」

「…!!」


 ルル様とコルナさん以外の全員が地に伏せられた。

 最後の頼みであった透明カメレオン部隊も、スフィルクスさんの背中に乗っていたために巻き添えで全滅してしまっている。よって奇襲もできない。


『ルル&クロネ選手!今大会始まって以来の絶体絶命!このまま勝負が決まってしまいそうだーー!』


 実況のうっちーの声もどこか遠く聞こえる。


 万事休すか…


 せっかくルル様の夢を聞いて、ルル様の為に頑張っていこうって決意したのに、こんなちょっとの怪我くらいで身体が動かなくなる自分が嫌になる。


 リリがルル様に刀を向ける。

 もはや出来ることは何もなく、コルナさんもリリの凄まじさに諦観してしまっていた。




 しかし…そんな状況でさえ、唯一人諦めていない人がいた。


「リリちゃん。強いですね」

「でしょ?」

「でも、私は最後まで諦めちゃダメなんです。自分の為にも…クロさんの為にも…そして私たちの勝利を期待している人たちの為にも…」

「そうかもしれないわね。でもそれはあたしも同じ。そして勝つのもあたし!」


 自信たっぷりに胸に手を当ててリリが言う。


「…まだ私は全部を出し切っていません!リリちゃん。私の唯一自慢できること、わかりますか?」

「…………………ない!」

「ありますよぉ!」


 リリが考えに考え抜いて出して結論に涙目で反論するルル様。


「私の魔力量です!魔力量だけは底が知れないってスフィルクスさんからもお墨付きです!」

「え?お姉ちゃんまだ魔力残っているの?」

「やるだけやってやるです!」


 ルル様…召喚しても魔力が残っていることは知っていたけど、その魔力の使い道があるの…?


 練習ではそんなことは一切していない。

 正真正銘ぶっつけ本番だろう。


 そんなことはおくびにも出さず、ルル様の身体から魔力が迸る。


 一体ルル様はここから何をしようというのか…私でさえも予想がつかないけど、あと少しで決着がつく。そのことだけは全員が理解していた。


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