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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
ポンコツ姉妹と異世界旅!
8/88

ポンコツVSゴブリン

評価してくれた方。

ありがとうございます。

 焼き魚の香ばしい匂いに吸い寄せられるように3体のゴブリンが近づいてくる。


 相手の戦力を確認する。2体が手に棍棒を持ち、一回り小さいゴブリンは何も持っていない。他に敵影は見えず、脅威はさほどないことがわかる。


 ちなみにゴブリンとはこの世界における最弱の魔物の代名詞でもある。ゴブリンとスライムを比較すると…単体ではスライムのほうがやや上。だが集団行動する分ゴブリンのほうが若干脅威は高いと言われている。


 この程度の相手であればルル様の練習相手にはもってこいだろう。今後旅をする上で、ルル様だけ弱いままだと支障がある。ゴブリンに勝利することは自信にもつながるはずだ。


 あと魚はもう少し焼いたほうが美味しいだろう。


「ルル様。リリ。私は魚の焼き加減を見なければなりませんので、ゴブリンの相手はお任せします」

「…あんた護衛よね?一応」

「護衛です。ルル様は小さい個体を、リリは残りの2体を処理するといいと思います」

「…まあいいけど。あんなザコ」


 護衛とは…ただ護るだけの存在ではないのだ(?)


 それに私はまだリリの実力を知らない。

 王国にいた頃の噂では実力はトップクラス。次期王女の有力候補とまで言われていたが…ゴブリンでは戦闘能力を測るには物足りないけど、一端でも実力が垣間見えればよし。


「ギィギィ!」

「人の食事を邪魔した罪は重いわよ!」


 リリが素早く移動しゴブリンにハイキックを見舞う。リリの速度についていけずに直撃したゴブリンはそのまま吹き飛び1体は戦線離脱。リリはその勢いのまま回し蹴りをし、残りの1体も瞬殺する。


「ざっとこんなものね」

「リリちゃんすごーい!」

「流石は第4王女」

「ふふーん。もっと褒めなさい!」


 想像以上の強さだ。リリに護衛の必要はないな。

 残った小さいゴブリンは何が起こったのか理解していないのかキョトンとしている。が、ようやく味方が全滅したことに気づいたのだろう。周りを見渡している。


 普通ならここで逃げ出すのだが、ゴブリンは知能が低いためそのまま近くにいたリリに襲いかかる。

 それをリリは相手にせず、優雅にこちらに戻ってくる。


「私の分は倒したわ。クロネ。差し出すものがあるのではなくて?」

「やるね。リリ。はい魚。美味しいよ」

「ふふん。いただくわ!」

「あの~。クロさん。私にも一匹お魚を…」

「ルル様はあのゴブリンを倒してからです」

「なぜ魚を前にして戦わせようとするんです!?」


 ルル様が涙目で抗議してくる。お腹がぐうぐう鳴っている。かわいそうだが…ここは心を鬼にしなければならない。ならないのだ!


「ルル様。この先ゴブリン一匹倒せないで旅を続けられるでしょうか。いえ無理です。ですからこれは試練なのです!それに、運動した後の食事は格別ですよ」

「う~!わかりました…やってやるです!」


 意を決してゴブリンに向かい合うルル様。お互いに警戒しながら近づき…ついに戦いの幕が上がる。


「はあああ!」

「ギギィ」


 先ほどのリリの真似をしたかったのだろう。ハイキックを選択したルル様。

 高さはゴブリンの身長が小さいこともあり顔に届いてはいる。


 だが速さが致命的にない。へろへろ~っと効果音が付きそうなくらい遅い。達人の拳法家は型が流麗すぎる為逆にゆっくり見えるらしい。がそれではない。すっとろいだけである。

 当然余裕で回避される。


「やりますね!ゴブリンさん!」

「ギぃ?」


 それから一進一退の攻防が続いた。

 ルル様のしつこいハイキックを余裕を持って躱すゴブリン。

 一方ゴブリンが攻撃しようとすると「わぁーーー!」と叫びながら脇目も振らず全力で逃げるルル様。そんな不毛な戦いを肴にしながら魚を食べるリリ。


「お姉ちゃんが魔物と戦うの初めてみたけど…思った通りへっぽこね」

「でも一応戦いが成立している。これは凄いことだよリリ」

「あんたどんだけ甘いのよ」


 リリがジト目を向けてくるが気にしない。


 さて戦いの行方だが…ついに変化が訪れた。

 ルル様の脚が疲れて上がらなくなったのだろう。ハイキックがローキックに変わった。

 だがそれが絶妙なフェイントのようになり、初めて攻撃がヒットする。


「ギぃ?」

「当たった…!?」


 だが悲しいかなゴブリンはダメージが全くない様子。そのまま攻めに転じるゴブリン。すかさず逃げようとするルル様だが…


「あ…!」

「マズいわね」


 連続で足を上げるのが大変だったのだろう。疲労からか足をもつれさせて転倒してしまう。

 これは…勝負あったか?


 好機と捉えたのか、ゴブリンが必死で襲い掛かってくる。

 ルル様には出来れば勝って自信を付けてもらいたかったのだが…そう思いつつ魔法を発動しようとすると、ルル様とゴブリンの間に割って入る影が!


「あ、あれは…!」

「ギギィ?」

「ラムちゃん!?」

「(ぷるぷる)」


 そう。前日にルル様がテイムしていたスライムのラムちゃんがゴブリンに悠然と立ちふさがったのだ!

 誰もがその存在を忘れていただろう。そう誰もが。

 だがラムちゃんは一生懸命私たちの後を追いかけていたのだった。

 そうして今、ご主人様のピンチにこうして間に合った!


「ギギィ!」

「…」

「ラムちゃん!」


 ゴブリンがラムちゃんに向かって棍棒を振るう。

 だがラムちゃんは動かず棍棒がそのままラムちゃんのボディに吸い込まれていき…なんとゴブリンの腕ごと自分の中に入れてしまった。


「「おお!(むしゃむしゃ)」」

「ギギィ!?」

「…」


 ついにはゴブリンの全身を吸収し…あとにはラムちゃんだけがぷるぷると佇んでいた。


「ラムちゃん!」

「(ぷるぷる)」


 そしてルル様とラムちゃんの感動の対面。ラムちゃんはルル様の使い魔なので、実質ルル様の勝利と言えるだろう。

 二人(?)で仲良く戻ってくるのを拍手で出迎える。


「お疲れさまでした。ルル様」

「やりました!私のラムちゃんが!」

「お姉ちゃん本当にスライムを味方にしたんだ」

「そうだよ!ラムちゃんって呼んであげてね」

「なかなかやるわねラム!褒めてあげるわ!」

「(ぷるぷる)」


 ルル様は無事ゴブリンに勝利できた。

 そして、今後のルル様を鍛える方針も固まった。

 ぶっちゃけルル様が直接戦うのは無理だ。ポンコツすぎる。


 それよりはテイムで使い魔を増やし、使い魔に頑張ってもらうほうが建設的だろう。そのためにはどうすればテイムできるのか、どこまで言うことを聞くのか、何体まで同時に使役できるのか…などを検証していく必要があるだろう。そこら辺は追々考えるとして今は…


「ルル様。お待ちかねの魚です」

「わーい!おいしそ~!私が釣ったのはどれかなぁ?」

「ちょっと!それ私がキープしてるやつだから!」

「ルル様。私が釣った魚も食べてください」


 ルル様を甘やかそう。


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