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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
78/88

ギギVSネネ&ルー

第一王子のギギ視点です。

 準々決勝。私は妹ネネと弟子ルーを相手に戦っていた。

 2対1で戦っている理由は、私のパートナーであるエリンが早々にリタイアしてしまったからだ。


 今も私の後ろで「頑張れギギ」と抑揚のない声で応援している。


 彼女はエルフなだけあって物事にあまり関心がないのだ。だからか少しでも形勢不利と感じたらすぐに諦める癖があった。それさえなければ良きパートナーなのだが…こうなってしまっては私一人で勝利する他道はない。


「うふふふ…どうしましたのお兄様!歯ごたえがありませんことよ!うふふふふ」

「ネネ様は後方で弓を射っているだけだからそう感じるかもしれないですけどね。ギギ師匠のプレッシャーは半端ないのですよー」

「だが…不利なことは確かだな」


 ネネの正確無比な弓による支援。


 そして何より特筆すべきはルーの戦闘力。槍の実力もさることながら、自動攻撃をしてくる剣「フラガラック」が特に危険だ。しかもこの剣に斬り付けられた傷は回復しない。


 よもやここまでルーが強いとは…今まで実力を隠していたな。


「槍以外にも学んでいるとは思わなかったぞルー」

「ルーはこう見えても勤勉で蒐集家なのですよ」

「そのようだ」


 ルーの槍、自動攻撃してくる剣、ネネの弓。三手を同時に捌き切るのは難しい。

 少しずつだが…ダメージが増えていく。


『ギギ選手万事休すかー!?追い込まれているー!』

「このままだと負けるな…だが…!」

「!!来ますわよルー!任せましたわよ!」

「風よ!水よ!暴れ狂え…【狂嵐瀑布】!」

『出ました!予選でも見せたギギ選手の大技!闘技場が嵐に包まれる~!』


 私の武器トライデンツの特殊技【狂嵐瀑布】。これはちょうど闘技場にいる存在を全て波で浚う。


 だが…彼女たちは無事だった。それも…船に乗り大波をまるで航海するかの如く。

 場外に落ちることなく私に向かって突き進んでいた。


『ななな!?いつの間にか船が出現!!??その船でこの凄まじい大嵐を進んでいる~!?』


 信じられない光景に目を疑うが…このまま狂嵐瀑布を発動させていても無駄のようなので解除する。


 するとゴトンと船が闘技場に落ち、中からネネとルーが出てくる。


「ふ~。ぶっつけ本番でしたけど上手くいったのですよー」

「すっごく怖かったわ!でも何とかなりましたわね!」

「…その船はどこから出したのだ?」

「ふふふ~。それはルーのマントからなのですよ~。ルー自慢の魔法船。その名も【静波船】!」

「予選でお兄様のその技は見ましたからね!対策はルーに任せましたの」

「この船は狭いですけど、行き先を言葉で命じれば、そこまで自動的に航行してくれる魔法の船なのですよー。今回は目的地をギギ師匠に設定しました」

「…狭いとは言うが船をそのマントで仕舞えるわけがないだろう。そのマントも特殊なものか」

「そうですよー。乙女の秘密マントですよー」

「…」


 船まで出せるマント…おそらく他にもトンデモアイテムが収納されている可能性が高いな。


 それにしてもこの技まで防ぐとは。

 ネネの未来予知で発動を察知、そしてルーの多種多様な秘密道具でそれを回避…か。



 いいコンビだ。



「お兄様?他に手がないのなら、降参してもいいのよ?」

「諦めてくれると助かるのですよー」

「ふ…私は諦めが悪いんだ。知っているだろう?」

「「………」」

「これは父上対策に用意していたものだが…まさかお前たちに使うことになるとはな」


 懐からある石を取り出す。

 これは試練の逆さ塔の金箱で手に入れた私の切り札。


「それは何ですのお兄様?」

「【竜化石】と私は呼んでいる。…気を付けることだ。これを使って手加減できる保証はない」

「「【竜化石】…」」

「お前たちの力に敬意を表して、私の全力を見せよう!」


【竜化石】を心臓に近づける。

 この石は魔法で発動するタイプではなく、使用者の()()()()()()()発動する。


 石が体の中に入り込み、体中の血液が沸騰する。

 細胞が変化する感覚。自分の身体が自分の身体ではなくなっていくような恐怖感。その恐怖感を乗り越え、絶対的な力をこの手に!!!


「ぐ…うおおおおおおお!!!」

『ギギ王子の身体が変化していきます!その姿はまるで竜だぁ!ギギ王子の蒼の槍、トライデンツをも飲み込んだ影響でしょうか!蒼の竜へと変貌していきます!』

「うおおおう…ラスボス感満載なのですよ~」

「冗談言ってる場合じゃないわよルー。あれは本気で危険なヤツよ」


 ネネとルーを見下ろすことが出来るくらいの大きさまで巨大化したところで身体の変化が止まる。


「………」


 …よし。思考は正常だ。身体のコントロールも利く。


「さぁ。最後の勝負だ。決着をつけよう。妹よ。そして弟子よ」


 肩慣らしに右手での薙ぎ払いをする。

 ネネは未来予知で簡単に避けてくる。ルーは避けるは難しいと判断したのか槍と剣での防御を選択したようだが…


「うわ!」

「ルー!」

「竜化した私の攻撃力をなめるなよ」

『ルー選手が闘技場の端まで吹き飛ばされた~!かなりの大ダメージを受けている様子です!』

「うぐぐ…軌道を逸らすことも出来なかったのですよ…」

「ルー!?大丈夫!?」

「まだまだ。やれるのですよ…!」


 ほう。私の一撃を貰っても立ち上がるとは…だが!


『ここでギギ王子の追撃だー!ネネ選手には目もくれずルー選手に一直線だ!』

「必中之矢!」

「やはり…効かんな!」

「そんな…!」


 ネネの矢を後ろから受けるが、思った通りダメージは無い。

 ネネの正確無比な矢は厄介だったが、防御力が跳ね上がったことでもはや脅威ではなくなった。


「ルー!逃げて!」

「…!!」


 立ち上がったルーが私の足と足の間を潜り抜けて後方に逃げる。

 今のでルーをリタイアさせたかったが…仕方ない。


 せっかくこの姿に成ったのだ。あれをやってみるか。


「お兄様が飛んだわ!」

『ギギ選手が飛翔したぁ!そのまま口から光が出ています!あれはまさか!?』

「…マズいですわ!ルー!右に全力で走って!」

「はいですよ!」

「【水の息吹ウォーターブレス】!」


 ネネとルーに向けて水属性のブレスを放つ。

 しかし私が攻撃を放つ前から回避行動を取っていたネネとルーには直撃を取ることができなかった。


『ネネ選手の未来予知で何とかブレスを凌いだぁ!』

『だけど、上空にいる以上攻撃手段が限られるからギギ選手に分があるうお。弓での攻撃も効果が薄そううおし』

「空中から一方的にブレスで追い込むのも手か…」


 わざわざ地上に降りてリスクを負う必要はない。ネネの未来予知とて万能ではないのだから、いずれ避け切れない時が来るはず。


 そう考えブレスを吐き続けていたのだが…


『当たりません!ギギ選手のブレスを避ける避ける!ネネ選手には本当に未来が視えているのか!?』

「…やるなネネ」

「大丈夫ですかネネ様」

「ええ。ちょっと目がしぱしぱしますけど…問題ありませんわ!」


 想像以上にネネの未来予知は強力だった。追い込むはずが、逆にこちらの体内魔力が尽き始めてきた。


 魔力を大量に使用したことによる一瞬の酩酊感。その隙を私の弟子は見逃さなかった。


「ネネ様のおかげで隙が出来ました。ここはルーの槍…【アッサルの槍】の本当の使い方をお見せする時なのですよ!【イヴァル】!」

『これはあああ!?ルー選手が槍を投げたああああああ!!』

「ぐ…おおおおおおお!!」


 避けきれる…と思ったが、身体が硬直している。

 く…!咄嗟に身をよじるが槍は私の右足を貫いた。


「まだですよ!【アスィヴァル】!」

「何!?」


 私の足を貫き、上空を飛んでいた槍。その槍にルーが瞬間移動してきた。そのまま槍を掴んだルーがぐるりと半回転。


 再び私目掛けて槍を放つ。


「【イヴァル】!」

「ぐ…ぐあああ!!」


 避け…切れない!なぜか槍は私を追尾し、今度は腹を貫かれた。たまらず声が出る。


「【アスィヴァル】!」


 ルーが呪文を唱えると今度は地上に突き刺さった槍にルーが瞬間移動する。


『な、なにが起こったのでしょう!?魚ちゃん解説お願い!』

『おそらく…【イヴァル】の呪文は相手を貫く呪文。そして【アスィヴァル】は槍の使用者を槍まで瞬間移動させる呪文…うおか』

「正解ですよ。一回見ただけで言い当てられるなんてあの解説者、きっと只者じゃないのですよ」


 ルーの奴、まだここまで強力な切り札を隠していたとは…だが…


「惜しかったなルー。二撃目があと少しずれていれば…竜化石を砕けていただろうに」


 そう。ギリギリ、本当にあと数センチずれていれば私の竜化は解けていた。貫かれた腹の横から竜化石が見えるほどに。



 その石を、私の妹は見逃さない。


「私の矢は鱗に阻まれますけど…体内から穿つことが出来れば…話は別ですわよね?【未来之矢】!」

「…ッく!がああああああああ!!」


 回避不可能の妹の必中矢。

 その矢に槍で貫かれ、剥き出しとなった体内にある竜化石を砕かれる。



 最後の力を振り絞って地上に降りるが…その時には竜化は完全に解け、立ち上がる力もなくなっていた。


「…見事だ。ネネ。そしてルー。お前たちの勝ちだ」

『ここで試合しゅ~りょ~!勝者!ネネ・ルーペア!』

「「やったぁ(ですよ)!!」」


 抱き合って喜んでいる二人を見ながら意識が遠ざかっていく。



 ああ。今年こそは父上に…そしてリリに勝利し栄光を掴みたかったが…私もまだまだ未熟だった…ということか………


ギギは最強の父親の他に、試練の逆さ塔の塔頂記録を最年少で塗り替えたリリにもコンプレックスを抱いています。

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