表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
77/88

未来之矢

 遂にこの時が来ましたのね…お兄様とエリンを叩き潰す日が!

 別に二人のことは嫌いではないのだけど…


 お兄様はいつもいつも試練の逆さ塔のことばかりで全く政務を手伝ってくれないし、エリンは「これも修行の一環だ」などと言って身の回りの家事を私にさせたり…背中を洗うことと弓に何の関係もないじゃないの!


 これまでの鬱憤…晴らさせていただきますわ!


「ルー?準備はよろしくて?」

「はいですよー」


 隣で暢気にしている私の一番の配下であるルーを見る。相変わらずのんびりしている子だ。


 だけど今日は緑のマントに白銀のブローチ。五尖槍を携えている。ルーが本気の時の正装だ。いつものおちゃらけは控えてくれることだろう。


『それでは試合開始ー!』


 開始の合図が聞こえる。

 私は前には出ずに、下がる。弓術師は冷静な立ち回りが要求されるのよね。


 ルーとお兄様は早速槍での攻防を繰り広げている。

 まだお互い探りを入れている状態だ。


「…視える。視えますわよぉ」


 お兄様の姿がブレる。

 お兄様の残像が動き、その後を追うようにお兄様が移動している。


 残像とは、未来のお兄様の動きだ。


【数秒先の相手の動きが見える】


 これが私の強み。だから秒数を計算して残像に向かって矢を放てば…お兄様に必中するのだけど。


「【青の矢】」

「ちっ…」


 エリンが私の一挙手一投足を監視しているため矢で牽制されてしまった。

 しかもエリンの【青の矢】は彼女の最速矢だ。躱すことに専念しないと当てられてしまう。


「相変わらず先読みの力は群を抜いているようだな。ネネ」

「呼び捨てにしないでちょうだい」

「しかしいいのか?ルーにギギを任せていても?彼は強いぞ?」

「あなたこそ私のルーを舐めないでちょうだい。ルーを甘く見ているなら…お兄様でも危ないわよ?」


 ルーは非凡だ。それはこの試合で証明されるだろう。

 だけど、()()()()()()だとお兄様に軍配が上がってしまうみたいね。


「あわわ」

「………」

「上手すぎですよー!」

「しゃべっている余裕があるのか?ルー」

「わぁ!」


 ルーの槍が三つ又の槍に搦め取られ、槍が空中に舞いルーが無防備になる。

 その隙を見逃すお兄様ではなく、止めを刺しに来るけど…


「終わりだ」

「まだですよ!フラガラック!」

「!!」


 ルーがフラガラックと叫ぶと、ルーのマントの中から緑の柄の剣が飛び出し、お兄様の槍を防ぐ。

 のみならず、お兄様の手を切りつける。しかも、()()()()()()()()()()()()だ。

 奇怪な現象にお兄様が後退する。その間もフラガラックはルーの周りをくるくる回っている。


「なんだ?それは…」

「ルーの武器は槍だけではないのですよー?」

「ほう」

「ふふん。これが私のルーよ!」

「ネネ様のでもないのですよー」

「【白の矢ホーリーアロー】…!?回復しないだと」

「なに?」


 エリンが回復用の白の矢をお兄様に放ち、お兄様の身体が白く光るけど…肝心の手の怪我は回復していない。その様子を見てお兄様とエリンは怪訝な表情を見せている。


 そんな二人の様子を見て思わず私たちはニヤニヤしてしまう。


「あー。そです。ルーのフラガラックで切った傷は治らないのですよー」

「…ほう。厄介だな」


 お兄様がハンカチで切り傷を縛る。


「そうと分かれば二度と攻撃を貰わなければいいだけのこと」

「ギギ師匠。それはルーのことを甘く見すぎですよー」

『ルー選手がギギ選手相手に大奮闘!弓術士同士の睨み合いが続いている今、勝負の行方は二人が握っていると言っても過言ではな~い!』

「ふ…勝つのはギギだ。比べるまでもない」

「…」


 エリンはお兄様をかなり信頼しているようですわね。私さえ押さえていれば勝てると思っているのでしょう。


 …実際、ルーには弱点がありますから。

 それが露呈する前に勝負を決めたいところですわ。


『おっとぉ!ここでネネ選手が動きを見せました。戦闘をしている二人から離れるように左へと移動!それに呼応するようにエリン選手も同じ方向へと向かいます!』

「このままでは埒が明かないからね。エリン。あなたをさっさと倒すことにするわ!」

「ふ…やってみろ」

「【必中之矢】!」

「【青の矢】」


 エリンを直接狙った矢も、上空に向けて放った矢も両方撃ち落されてしまった。

 やっぱり…技術はあちらのほうがまだ上…?


「ネネ。お前の必中之矢…確かに目を見張るものがあるが、私とは相性が悪いな」

「相性?」

「そうだ」


 エリンが余裕たっぷりで私に講義してくる。こんな時でも師匠面かしら。


「速く動く相手にはネネの矢は効果的だ。自分の速さに絶対の自信を持っている奴ほどな。だが、私のように動かないような相手に対しては…未来予知をしても意味がない。だってその場から動いていないのだからな。それに軌道も読みやすい」

「…」

「仮に当てる部位を変えたところで…私の最速の【青の矢】なら対処可能だ。故に、ネネでは私には勝てない。勝ちたいのなら、あのルーという少女と協力して私たちにあたることだ」


 悔しいけど、エリンの言う通りこのままだといつまで経っても決着はつかない。いや、私の矢が足りなくなって負けるだろう。エリンは魔法で無限に矢を作り出すことが出来るから。


 でも、エリンが先程から行っている、私の矢に自分の矢を当てるという難易度の高い技。

 普通なら高速で迫ってくる矢をそんな風に対処できない。それくらい難しい技なのよね。


「随分自分の技術に自信があるみたいねエリン。なら、これは捌ききれるかしら?」

「!!」

「出来るものならやって見せなさい!」

『ネネ選手!同時に三本の矢を構えている!そして全く同時の発射だー!これはエリン選手も避けざるを得ないか~!?』

「ふ…やるな」


 エリンは私の矢を矢で撃ち落とすという今までのスタンスをやめて回避行動に移る。

 私はその時を待っていた。そう。エリンがその場を離れるこの時を…!


()()()わね!【未来之矢】!」

「なんだ!?」

『これはどういうことでしょうか!?ネネ選手がエリン選手の回避した方向の少し離れたところに矢を放ったかと思えば!突然エリン選手の手が怪我を負っています!矢は当たっていないはずなのに!?』

「くっ…これは…どういうことかな…ネネ」

「その手ではもうさっきまでのように正確に矢を放つことは難しいわねエリン!…せっかくだから教えてあげるわ。私の【未来之矢】は文字通り、未来のあなたに矢を当てるものよ!そして、その当たった矢は過去のあなたにも影響を及ぼすの!どうかしら?凄いでしょう!」


 私は相手の未来の動きが見える。なら、その未来の相手に矢を放てばどうなるのか?結果はこの通りだ。


 これは回避不能の私の切り札。出来れば決勝まで隠しておきたかったけど。相手はあのエリンだからしょうがないわね。


 エリンは傷つけられた手を見て笑っている。


「とんでもない切り札を隠し持っていたものだ。さっきの三本同時発射もだが…成長したな。だが…」

「動かないで!【白の矢ホーリーアロー】を使うそぶりを見せたら撃つわよ」

「ふ…私の考えはお見通しか」

「ええ。何年あなたに扱き使われたと思っているのよ!あなたのことは何でも知っているわ!」

「ふ。…まいったよ。降参だ。あとは二人で協力してギギを頑張って倒してみることだ」

『ここでエリン選手がリタイア宣言~!残すところはギギ王子だけとなりました!これでかなりネネ・ルーペアが優勢だ!』


 やったわ!遂にあのエリンが私に跪いたわ!

 あとはお兄様を私とルーでボコにすれば…最高のエクスタシーを得られるわ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ