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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
74/88

リリとトトの珍道中

投稿が遅れてしまい申し訳ありません!


 王位決定戦本選二日目。

 本日最初の試合はリリ・トトちゃんペアが出場する。


 …だけど、試合開始直前になっても二人は姿を現さなかった。

 ルル様と観客席で試合を見るつもりだったが、探しに行ったほうがいいかもしれない。


「お部屋にはいませんでしたよね?」

「はい。迎えに行きましたが誰もいませんでした。てっきり既に会場へ向かっているのかと思っていましたが…」


 朝、闘技場へ一緒に行こうと思いリリの部屋を訪れたが、もぬけの殻だったのだ。

 張り切って早く出発したのだと思い込んでいたけど…一体どこに行ったのだろうか?


 実況のうっちーも選手入場の合図を出しても現れないリリたちに困惑している。


『リリ選手とトト選手は会場にいないのでしょうか?えーと…こういう時はどうすればいいんだっけ?』

『10分以内に姿を現さなかった場合は棄権とみなして失格うお。リリ選手が棄権するなんてありえないうおが…』

『このままだとラッキーヤマ・ハピオペアの勝利となります!どうなるのでしょうか!?』


 闘技場では相手選手の二人が申し訳なさそうにしている。

 運が良い二人組だと聞いていたけど…リリがまさかここで退場してしまうのだろうか…







 ーーーーーーーーーーーーーー






「トト!起きなさい!朝よ!」

「……もう少し寝ていたいですぞ」

「何を言っているのよ!今日はあたしたちの大事な試合日よ!早く起きなさい!」

「…そうでしたな。ふわぁ」


 いつも通りぱっちり目が覚めたから、トトを起こした後に体の状態を確認する。




 …うん。コンディションは完璧ね!


 それに比べてトトは朝いっつも動きが遅いんだから!

 どうして同じ時間に寝ているのに寝不足になっているのかしら?不思議ね。


 トトがゆっくりと布団から出てきたので、食堂に行って一緒に朝食を食べる。お城のご飯はやっぱりおいしい。


「ほら。トトも遠慮しないで食べなさい」

「むぅ。こんなに贅沢なものを頂いていいものなのか…」

「いいに決まっているじゃない。トトはあたしのなんだから、誰にも文句は言わせないわ。それに、今日は試合があるんだもの。しっかり食べて万全の状態になってもらわないとあたしが困るわ!」

「それもそうですな。いただきます!」


 まったく、いつもトトは遠慮するんだから。早く慣れてほしいわ。


 それより、今日の相手はどれくらい強いのかしら?予選では戦ってなかったからわからないのよね。せっかくなら同じブロックで戦っていた剣帝ってのと戦ってみたかったけど。凄く強そうだったし。


 クロネの話だと運が良い相手らしいけど、それって勝負に関係あるのかしら?

 あたしだって運はいいから問題ないわね!




 それからしっかり朝食もとり、部屋に戻って戦闘服に着替える。

 あたしはいつもの動きやすい服で、トトは忍者服だ。


「さあトト!出陣よ!」

「早くないですか?ルル殿とクロネ殿もまだ寝ていると思いますぞ」

「そうかしら?とりあえずお姉ちゃんのお部屋に行ってみましょ」


 姉ちゃんのお部屋に行き、ドアを開ける。


「リリ殿。静かにドアを開けるのですぞ」

「わかったわよ。そっとね…あら。やっぱり寝ているみたいね」


 部屋に入ると甘い匂いがしてくる。お姉ちゃんの匂いだ。

 ベッドの中で枕を抱いて幸せそうに寝ているお姉ちゃんが目に入る。きっと戦闘の夢でも見ているのだろう。


 クロネも熟睡している。


「仕方ないわね。あたしたちだけで行きましょ」

「そうですな」


 部屋を出て城門に向かう。


「リリ様!行ってらっしゃいませ」

「「「「「行ってらっしゃいませ」」」」」

「優勝してくるわ!」

「今日は一回戦だけですぞ。…それにしても、リリ殿は相変わらず慕われておりますなぁ」

「挨拶されたら慕われてるの?よくわからないわね」


 城の中では誰かとすれ違う度に御辞儀をされるし、中には長話をしてくるのもいる。正直面倒よね。その挨拶の時間で少しでも強くなれるかもしれないのに。


 街でもあたしは有名だからよく声を掛けられる。


 でも今日は朝早いからか、あまり人もいなくスムーズに移動できた…わけではなかった。

 酒場の前で数十人が喧嘩していて道を塞いでいる。

 それを遠巻きに見ていた一人があたしたちに気付いて駆け寄ってくる。


「リリ様!?おはようございます!」

「おはよう。面白そうなことやってるわね」

「騒がしくてすんません。あいつらさっきまでずっと飲んでて…」

「どんな理由で喧嘩しているの?」

「いやぁ…それはちょっと…」

「なによ?あたしに言えないことなの?」

「そう…ですね。ルル様のことでちょっと…」

「お姉ちゃんの話題?どれどれ?」


 喧嘩している連中に耳を傾けてみる。


「やっぱあれは卑怯だろ!あんなつええ魔物を何体も召喚しやがって…俺は王様に一年分の給料賭けてたんだぞ!」

「俺だって王様に賭けてたけどよ。ルル様言ってたじゃねえか。優勝したら賭けた分返してくれるってよ。そんなこと言ってくれるなんて、凄い人じゃねえか。今まで馬鹿にしてたけど見直したぜ」

「それは賭けた券持ってたらの話だろ!?俺は悔しくてすぐに帰っちまったんだ!だから無一文なんだよおおおおおお!!どうしてくれんだよおおおおおお!!!」

「知らねえよ死ね」

「テメエが死ねやああああああ!!」

「…しょうもない喧嘩ねえ」

「すんません。あいつら酔ってるんで…」


 お姉ちゃんに賭けてる人なんていなかったから、みんな試合が終わった後必死に捨てた券を拾い集めてたのよね。


 あたしも面白そうだったから乱闘に参加したけど…そうだわ。


「トト?あの時たくさんお父様に賭けた券を取ったわよね」

「リリ殿が戦利品!と言って奪った券ですな」

「人聞き悪いわね!でもそうね。あれを渡せば解決しそうじゃない?」

「リリ殿の部屋に置いてしまったのですぞ」

「まだ時間はあるし、取りに戻りましょうよ」

「そんな悪いですよ!リリ様は今日試合でしょう!俺たちに構うことなんてないです!」

「いいのよ。時間あるし。行きましょ。トト」

「はいですぞ」


 あたしが優勝するからあの券は紙くず同然だと思うけど、酔っ払いに何言っても無駄だし、全部渡してさっさと会場に向かいましょう。


 トトと城まで競争しつつ券を取りに戻る。


「ぜはぁ…ぜはぁ…リリ殿は相変わらず足が速いですなぁ」

「良い運動になったわね!あいつらのところまでまた競争しましょ!」

「リリ殿は元気ですなぁ」


 走るのは楽しいし、時間の短縮にもなるし、良いこと尽くめよね!

 走ったおかげでさっきの喧嘩をしていた酒場の前まですぐに戻ってくることができた。


 トトに命じて持って来た券を全部渡すと男がその量に驚いている。


「あいつらにも渡してちょうだい」

「こ、こんなに!?いいんですか?」

「要らないわ。好きにして」

「ありがとうございます!おーーーいお前ら!リリ様がすげえ量の券を持って来てくれたぞ!!」


 男が酔っ払いたちに駆け寄り券を見せる。

 すると全員から歓喜の声が上がる。


「うおおお!?金貨100枚分の券まであるぞ!?」

「これがあれば一生遊んで暮らせる!」

「リリ様ありがとうございます!」

「「「「ありがとうございます!!」」」」

「ええ。もう喧嘩しちゃだめよ?それじゃあね」


 朝から良いことをすると気持ちいわね。

 感謝されるのは悪くないわ。



 それからも荷物を重たそうに持っているおばあちゃんを手伝ってあげたり、転んでケガをした子どもをお家まで送り届けたり、ひったくり犯が現れたから懲らしめたりとたくさん活躍した。


「な、なんだか変ではありませぬか?今日だけでこんなに色々巻き込まれるとは…」

「楽しい一日ね。せっかく早く家を出たのにいい時間になってしまったわ」

「これ以上の人助けは試合に間に合わなくなってしまうので自重したほうがいいかもですぞ」

「だ、誰か!!助けてください!お願いします!」

「「………」」


 また何か事件が起こったみたい。

 いつからあたしはこんなに巻き込まれ体質になってしまったのかしら??


 今度は全身にケガを負っている女性だった。

 近づいていくと、あたしが王女だと分からないくらいには錯乱しているみたいだった。


「どうしたの?喧嘩?」

「ああ。キミだとだめ…こんな小さな子じゃヨンジェフを助けられない…」

「む…どういうことよ?詳しく話を聞かせなさい」

「いやだから…」

「へっへっへ。姉ちゃんケガしてるじゃねえか。俺の部屋まで来いよ。たっぷり介抱して可愛がってやるからよぉ…ぶへらっ」

「ほら。あたし強いでしょ?だから話してごらんなさい」

「え、ええ」


 絡んできた酔っぱらいを叩きのめすと納得してくれたのか、女性が何があったの話してくれた。


 彼女は魔物を狩って生計を立てているこの国では珍しい冒険者で、三日前から狩りに出かけていたらしい。この国の周辺はゴブリンやスライムなどの雑魚モンスターしか出ないから遠出しないと報酬の高い魔物には遭遇できないのだ。


「どうして試練の逆さ塔に潜らないの?」

「あれは一人でしか潜れないでしょ?確かに塔のほうがすぐに行けるし稼ぎもいいけど、私はその…彼と一緒に冒険したいの」

「ふーん」

「そう!その彼が帰り道に落とし穴に落ちてしまったの!あんな国の近くに落とし穴が仕掛けられているなんて考えてなくて…!」

「その落とし穴に引っかかった彼を助けてほしいってこと?」

「そうなの…もうどうすればいいかわからなくて…」

「いいわ。行きましょ」

「いいの?」

「ええ。行くわよトト」

「はいですぞ。ただ…試合までの時間がギリギリになってしまいますぞ」

「最強は遅れてやってくるものよ!」


 最後にばばーんって登場するのがかっこいいんだから!


 そんなわけで今度は国の外まで出る羽目になった。


「はぁ…はぁ…ここです」

「ふーん。確かにこんなところに落とし穴があるなんて驚きね」

「誰かが仕掛けたのですかな?」

「ヨンジェフ!助けに来たわよ!」

「ジェーン!ありがとう!」

「トト。助けてあげなさい」

「はいですぞ」


 トトがスルスルと落とし穴を降りていき、ヨンジェフを背負って戻ってくる。

 男は驚きで身を固くし、女のほうは何度もお礼を言ってくる、あたしのトトにかかればこれくらい楽勝よね!


「す、すげえ…」

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

「崖登りは忍者の基本ですからな」

「さ。戻りましょ。時間もないわ!」

「ん…?ちょっと待ってくれ…地面が…」


 帰ろうとしたその時、地面から巨大な何かが出現した。


「あれは…!?」

「サンドワーム!?どうしてこんなところに!?」

「知っているの?」

「は、はい。本来なら砂漠に生息している魔物です。ノウキングダムの近くに来ることなんてまずないはずなのに…」


 どうやらこの巨大芋虫がここにいるのは珍しいらしい。落とし穴を掘ったのもコイツだろう。餌を取られて怒っているのかもしれない。こちらを威嚇してくる。


 普段いないような魔物が現れるなんて…よっぽど今日のあたしたちはツイてるみたいね!


「気持ち悪いですぞ」

「トトはああいうの苦手なの?」

「はいですぞ。触りたくないですぞ」

「それならあたしの出番ね!トトは崖登り頑張ってたから、下がっていいわよ」

「危ないわ!サンドワームはBランクの魔物よ!地面に引きずり込まれたら助けられないの!」

「いいから見てなさい!」

「でも!!」

「よせジェーン。あの方に任せておけば大丈夫だ」

「あの方?」

「ああ」


 冒険者が何か言い合っているけど関係ない。このまますぐに芋虫を倒して、闘技場にダッシュで向かうわ!


 今日は色々あったけど、人助けもできたし、珍しい魔物とも戦えるし、ラッキー!






 ーーーーーーーーーーー







「どどど、どうしましょう!?あと二分でリリちゃんが負けになっちゃいます!?」

「朝いなかった時に探すべきでしたか…」


 失格になるまで後二分。既に会場は諦めムードだ。

 今から探しに行っても無駄だろう。無情にも時間はどんどん過ぎていく。


『残り一分を切りました!カウントダウンを開始します!60…59…』

「あわわわわ…絶体絶命です!?」

「…」


 うっちーのカウントダウンが会場に木霊する。まさかこんな形でリリがピンチになるなんて…


『38、37、36…』

「リリちゃーん!来てくださーい!」


 ルル様が必死に叫ぶ。他のリリファンの観客もリリコールを送る。

 リリ…


 ゆっくりとカウントは進んでいき…


『3…2…1………………ぜ…』

「ちょーーーーと待ったーーーー!」

『この声は…!!来ました!リリ・トトペア到着だーーーー!!』

「「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」」

「リリちゃん!!」

「良かったですね。ルル様」

「はい!」


 リリとトトちゃんが時間ギリギリに闘技場に滑り込んできた。

 何があったかは後で聞くとして…無事でよかった。


「ふっふーん。この歓声。最高ね!ギリギリまで入場を我慢した甲斐があったわ!」

「拙はハラハラドキドキでしたぞ…」

「…リリは後でお説教ですね」


 どうやらベストタイミングまで待機していたらしい。なんてことをしているんだ…


 しかしそのおかげか大盛り上がりの会場に手を振って応えているリリに対戦相手が近づいてくる。


「リリ様。トトさん。申し訳ありません。僕たちのせいで不幸な目に逢ったのでしょう?」

「いつもそうなんです。僕たちは何もしていなくても相手が事故に遭ったり、用事ができたり…」

「不幸?むしろ良い事尽くめよ?今日は」

「「…え?」」

「ふっふーん。今のあたしは最高潮に強いわよ?覚悟することね」

『それでは時間も押しているので早速始めたいと思います!リリ選手、トト選手、準備はいいですか?』

「「いいわよ(ですぞ)」」

『それでは始めましょう!王位決定戦一回戦第九試合、はじめー!!』

「ハァ!!」

「「ぐわぁあああああ!!」」

「「「「「「………」」」」」」


 試合開始と同時にリリが目にも止まらぬ回し蹴りを対戦相手に放ち、二人同時に気絶させてしまった。

 会場があまりの出来事に静まり返る。


『…し、試合終了~~!!リリ選手が相手を瞬殺!!リリ・トトペアの勝利です!』

『かなり待ったのにあっけないうお…』

「言ったでしょ?最高潮だってね!」


 さんざん待たせておいて試合を一瞬で決めるとか…リリらしいなぁ。


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