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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
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第一次ルルショック

 魔法が使える上空で色々試してから地上に戻る。

 スフィルクスさんにゆっくりと降ろしてもらい、再度王様と対峙する。


「上空で何やらやっていたようだが」

「はい。上空なら魔法が使えたので。雷を落としてみましたが…無駄でしたね」


 自然現象なら通用するだろうと思って試してみたが、【ガルバテイン】の領域に入った途端掻き消えてしまった。


 やはり魔法が介在しているものは無効化されるようだ。

 他にも一応身体強化の魔法を施してから戻ってきたけど、当然のように解除されていた。


「どうやら無駄だったようだな。それで、また殴り合いでもするか?私は一向にかまわんが」

「魔法が使えないのでそれしかできないですが…今までの私たちとは一味違いますよ!」


 今までは個々人の実力に頼って王様を攻撃していた。しかしそれでは王様を倒すまでには至らない。


 だから私たちは連携をすることで一気に王様を倒す作戦に出ることにした。


 協調性のないコロさんには好きに動いてもらって、それをミツキさんがサポート。

 私たちは常に裏取りを意識して強烈な一撃を加えていく。


「オラオラァ!」

「これで倒れちゃって下さいぃ~」

「…なるほど…確かに先程よりも厄介だ…!」

「確実にダメージは入っています!このまま押し切りましょう!」


 明らかに王様はやりづらそうにしている!このまま勝てるかもしれない。




 だけどこちらは時間が経てば経つほど魔力を吸収されて疲弊していく、そんな思いがあるためどうしても戦闘を早く切り上げようと攻撃が大雑把になっていく。


 特にその行動が顕著だったのがコロさんだった。徐々に空振りが多くなっていくのが傍目からでもわかる。


 …そして王様は初めからスピードが速いコルナさんやコリナさんは無視してコロさんだけに意識を集中させていた。


「これで…終わりだァ!…ナニ!?」

「ここだ!!」


 コロさんの大振りの右フックを王様はキレイに躱し、無防備になったコロさんに斧による強烈な一撃を与える。


「がああああ!!」

「「「コロさん(ちゃん)!」」」

『ああ!遂にテオフレール選手が牙城の一角を崩したぁ!』


 コロさんが場外まで吹き飛ばされてしまう。しかもその光景に動きが止まってしまったミツキさんまでダメージを負う。


「コロさん!」

「隙だらけだぞ」

「!!っう…」

「ミツキさん!」


 王様の攻撃でダウンしてしまったミツキさんを見て、思わずといった様子でルル様がコロナさんから飛び降りてケガの状態を確認しに行く。


「ミツキさん!大丈夫ですか!!」

「ルルちゃん…後ろ…」

「え?」


 そんな行動を王様が見逃すはずもなく、ルル様の後ろにはすでに攻撃モーションに入っていた。

 私もコリナさんから飛び降りて2人がいるところまで走っているけどこのままだと間に合わない!


「甘いぞルル。今は戦闘中だ。…安心しろ。この斧は不殺の斧。死にはしない」

「きゃ…!」


 王様がルル様に向かって斧を振りかぶる。


 だが娘に攻撃するのは躊躇いがあるのか、斧を振りかぶったまま動かない。

 そんな時…



 斧が宙を舞い、王様の手から離れる。


「なんだと!?」

『一体何が起こったのでしょうか!?斧がひとりでに宙を舞っているぞ!?』

『それよりも、テオフレール選手から斧が離れたことで【ガルバテイン】の魔法無効化領域が解除されたうお!』


 宙を舞っていた斧はそのまま場外に落ち、闘技場全体を覆っていた【ガルバテイン】も消滅する。


 そして…


「ミツキさん!」

「クロネちゃん!」

「「【大瀑布】!」」

「ぐおおおおお!!」


 私とミツキさんの水魔法の合わせ技を即座に発動。

 王様は為す術もなく奔流に押し流された。


『決着!決着です!最後は魔法を使えるようになった瞬間、まるで狙っていたかのようにクロネ選手と竜人の少女が水魔法の大技を発動!動揺しているテオフレール選手に何もさせずに場外負けを決めました!』

「嘘だろ…王が負けるなんて…」

「じょ、冗談だよな…?俺、王様に全財産つぎ込んでるんだぜ?」

「俺の1か月分のお小遣いがあああああ!!」

『ああっと!?観客席から王様の優勝に投票していた券が舞う!!そして辺りから様々な悲鳴が聞こえてきます!これは…第一次ルルショックと名付けましょう!今私が命名しました!』


 会場中から白い券が降ってくる。まるで紙吹雪のようで綺麗な光景なのだが、至る所から阿鼻叫喚が聞こえてくるため感動できない。全員王様の優勝に賭けてたのね…




 こうして私たちは無敗の王に勝利したのだった。






「おめでとう!まさかお父様に勝てるなんて思ってなかったわ!お姉ちゃんがこんなに強くなってたなんて嬉しい!」

「えへへ。ありがとうございます!」


 観客席に戻りリリとトトちゃんに合流する。

 2人とも勝利を喜んでくれて、特にリリはお姉ちゃんにべったりだ。


「お姉ちゃんの面倒をずっと見ていた甲斐があったわ!むふー」

「ありがとうねリリちゃん」


 リリがルル様の膝の上に座り、頭を胸に押し付けている。

 私はトトちゃんの隣に座ってその様子を眺める。


「いいな…私もルル様のおっぱいをすりすりしたい」

「クロネ殿が変態っぽい発言を…それより拙は聞きたいことがあるのですぞ!」

「そうよ!あたしも聞きたかったの!どうして最後お父様の斧が手元を離れたのかしら?」


 リリとトトちゃんが興味津々な様子で聞いてくる。

 そう言えばまだ誰にも説明していなかった。


 事の真相はこうだ。

 まず、私たちは【ガルバテイン】の効果が及ばない上空まで移動して召喚魔法を行った。


「まだ召喚してない子なんていたかしら?」

「ルル様には透明カメレオンを召喚してもらったんだ」

「「!」」


 そう。まだ召喚していなくて、且つ奇襲に最も適した魔物。それが透明カメレオンだった。


 透明カメレオンは自分を透明にするだけではなく、触れている相手も透明にすることが出来る特殊な魔物だ。


「それでこっそりスフィルクスさんの背中に透明カメレオンを隠しておいて、私たちに注意がいっている間に透明能力を発動。スフィルクスさんには透明のまま王様が斧を振りかぶるのを待ってもらって、その時が来たら斧を奪ってくださいって頼んでおいたんだ」

「なるほどね~」

「ルル殿がピンチになってハラハラしながら見ていたので、上になんて意識が向いてなかったですなぁ」


 そう。上手い具合に私たちがピンチになり、王様の意識がこちらに集中してくれたおかげで作戦を成功することが出来た。


「ルル様が攻撃されそうになった時は本当に肝が冷えましたが…スフィルクスさんが見事に斧を奪ってくれて助かりました」

「その後のクロさんの魔法も凄かったです!」

「ずっと魔法が使えなくて鬱憤が溜まっていましたからね。全魔力を使い切るつもりで放ちました」


 ミツキさんとの合作魔法だったからいくら強靭な肉体であっても場外に押し出すことくらいはわけない。


 30年間無敗なだけあってとんでもない相手だったけど…場外負けというルールがあってよかった。


「ともあれ、これでお姉ちゃんの評判はますます上がるわね!」

「どうかな…むしろ恨まれそうな気がしてならないんだけど…」

「え?どうしてですか…?」

「ほらあそこ」


 前の席に座っている夫婦の会話を聞く。


「どうすんだいあんた!へそくり全額使ったのにパァじゃないか!」

「仕方ねえだろ絶対勝つと思ってたんだから!今まで王様に賭けて儲かってたんだからいいじゃねえか!」

「よくないわよ!このお金でドレス買う予定だったのに!!」

「ふざけんじゃねえぞ酒買うために決まってんだろうが!!」


 今にもお互いを掴みかかりそうな勢いで言い合いをしている夫婦を見て、リリは冷めた表情をしている。


「…自業自得じゃないの?」

「でも恨みがこちらに向かったら厄介でしょ?」

「そうだけど」

「そうだ!私に良い考えがあります!」

「ルル様の良い考えは悪い考えだったことしかないんですが」

「ちょっと私行ってきますね!」

「あ!ルル様!どこ行くんですか!」


 ルル様が急に笑顔で立ち上がり走り去ってしまう。

 …嫌な予感しかしないので追いかけよう。


「止めてくる」

「お姉ちゃんのお世話も大変ね」

「行ってらっしゃいですぞ」


 ルル様の走った方向に向かうが…人が多いので見失ってしまった。


 今はちょっとした有名人なんだから軽はずみは行動は慎んでほしいのに…

 そう考えながら探していると、とんでもないところから行方が発覚する。


『さぁ!興奮冷めやらぬままですが本選二試合目に移りたいと思います!…ってあれ?ルルちゃん。どしたの?』

『うっちーさん!ちょっとマイク借りてもいいですか?』

『え?さっきの試合の感想とか?はいどーぞ』

『ありがとうございます!』

「なっ…」


 何をやってやがるんですかあのポンコツ王女様は!?

 ダッシュで解説席まで向かう。なおもルル様はしゃべり続けている。


『えっと!さっき戦いましたルルです!えっと皆さん!お父様の優勝に賭けていて、私とクロさんが勝ってしまったのでお金が無くなっちゃったんですよね?だから、私たちが優勝したらお父様の優勝に賭けていた分のお金を渡しますで、私のところまで来てください!』

『ええっと…ルルちゃん。それは立派だと思うんだけど…そんなこと言ったら大変なことになっちゃうんじゃ…』

『え?』


 うっちーの言う通りだよ!もうお口チャックして!


『でも、生活できないほどお金がないのは悲しいことですよ?』

『いや、それはそうなんだけど。でもそれは自分の責任だからね…?』

『うっちーを困らせるなんてルルちゃんはスゴイうお。…あ。クロネちゃん』

『ルル様!思いついたらすぐ行動するのはやめてください!』

『クロさんも良くないことだって思いますか?』

『いや、良くないとは言いませんが…』


 観客席はざわつき、私の言葉に期待するような、縋るような目で多くの人がこちらを見ている。


 やっぱり今のルル様の発言はナシ!というのは簡単だ。

 …だけど、ルル様がここまで公に言ってしまったことを撤回することはかなりのマイナスイメージになる。


『…ではこうします。証明として購入した券を持って来た者にだけお金を返金します。それ以外は受け付けません。王位決定戦終了後にもし私たちが優勝した場合に限りお城までお越しください。…ほら!ルル様戻りますよ!』

『クロさん腕を引っ張らないでください!もげます!』

『…えーと。嵐のように過ぎ去ってしまったけど…みんな、負けた券は大切に保管しておいてね~!』

「「「「「「…うおおお!!券拾え!」」」」」」」

『ケガしないよーにねー』


 それからは各地で暴動が発生。

 試合にならないとのことで休憩が挟まれることになった。


 …やっぱりルル様の良い考えは絶対に信用しちゃいけない。


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