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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
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ポンコツ娘VS王 ガルバテインの能力

「ぐお…」

「グッ…」



 コロさんと王様は見ているこっちが痛くなるような殴り合いを飽きもせずにひたすら続けていた。

 あんなに顔が腫れて絶対痛いはずなのに、なぜか二人は笑っていた。脳筋の考えていることは理解できない。

 

 そんな凄惨な殴り合いをルル様は「わっ!」とか「きゃ!」とか悲鳴を上げながらも見守っていた。

 

「コロさんに加勢したら、怒りますかね?」

「そうですね。最悪私たちに攻撃してきそうですね」

「むぅ。やっぱり二人の気が済むまで待つしかないですか」

「はい」

 

 今なら後ろに回り込むだけで優位になるだろう。だけどきっとコロさんがキレる。

 それならいっそコロさんの好きなようにやらせて、私たちは疲弊した王様と戦ったほうがいい。

 

「ぐはっ」

「むぅ」

『テオ選手と竜人の殴り合いが終わらないッ!!お互い一歩も後退せずに!お互い一撃もガードせずにパンチの応酬が続いています!』

「やるじゃねえか。あのやんちゃ娘の親なだけはあるぜ」

「…リリのことか?」

「そうだ!あんな凶暴女に育てやがってッ!」

「うるさいッ!」

「ぐお…」

 

 王様の渾身の右ストレートが綺麗に入った。

 よろけるコロさん。

 

「どうした?そんなものか竜人」

「そんなわけねえだろうが!これから本気出す…っておいミツキ!引っ込んでろ」

「もう十分でしょう?私も加勢しますぅ」

「必要ねえ」

「時間掛かりすぎなんですよぉ」

「っち…しゃあねえ。悪いなリリの父親ぁ。一気に決めさせてもらうぜ」

「それはどうかな」

 

 王様が斧を構える。コロさんとミツキさんは素手だ。

 ミツキさんも本来なら水魔法を中心として戦う魔法タイプなのだが、修業したから接近戦も多少はできると言っていた。

 

「パンチやキックは苦手なんです…がぁ!」

「…くっ…どこがだ…」

「オイオイやるじゃねえかミツキィ」

 

 ミツキさんの蹴りを斧でガードした王様だが、衝撃で後退る。

 流石は水龍神の娘さん。

 

「私たちも行きましょう!」

「そうですね」

『我はここで決着を見届けさせてもらおう』

 

 スフィルクスさんは後方で待機するようなので、私とルル様で戦闘領域に向かう。

 

『ここでルル選手とクロネ選手が動いた!!1対4の不利な状況となったテオ選手大ピンチだ!!』



「しゃあねえ。こうなったら速攻けりつけて後で再戦してもらうぜ!」

「悪く思わないでくださいぃ」

「お父様!御覚悟!です!」

「むぅうううう…!!」


 四方向からの苛烈な攻撃で王様をリタイアに追い込もうとする…が、中々倒れない。ガードしていないところもどんどん攻撃しているのに、なんて耐久力…!


「こ奴本当に人間かえ?実は怪物なんてオチはないだろうね?」

「だったら娘の私も怪物になっちゃうんですけど…」

『王様がかつてここまで追い詰められたことがあったでしょうか!?絶体絶命大ピンチ!しかし屈さない!王の意地なのか!?倒れません!』

「…まだまだ」


 …いやいや、おかしいでしょ。竜二体と九尾二体にタコ殴りにされて立っていられるとかどう考えても変だ。


 耐久力とかそんな問題じゃない。何かカラクリがあるはずだ。

 考えられるとすれば…やっぱりあの斧が怪しすぎる。光ってるし。


 王様の斧【ガルバテイン】の能力は指定した空間の魔法無効化…だと勝手に思っているけど、本当にそうなのだろうか?もしかしたら他の能力もあるのかもしれない。


 違和感を見つけ出すんだ…


「はぁ…はぁ…ん?私何もしてないのに疲れてる?」


 私は今コリナさんに騎乗していて全く運動していない。にもかかわらず疲労を感じている。

 慣れない戦闘を体験しているから…?いや、ちょっと違う気がする。この疲れ方は…


「魔力石に魔力を吸われている時と同じ?」

「ほう。気づいたか」

「!!」


 王様が笑う。


「そうだ。この【ガルバテイン】の領域では俺以外の生命から魔力を吸収し、俺の力になる。つまり、相手の魔力量が多いほど都合がいいってわけだ」

「な…」


 それは…非常にまずいのでは…?

 ここにはスフィルクスさんをはじめ魔力量が多い味方が大勢いる。自慢じゃないけど私も多い部類に入る。


 どれくらい吸収されたかはわからないけど…王様と戦うときは短期決戦じゃなきゃいけなかったのか…!


 ミツキさんがコロさんをいじっているけど、気持ちを切り替えて一致団結しないといつまで経ってもこのウサマには勝つことできない!


「コロさんが一人で戦うぅ!とかイキがるからこんなことになったんじゃないですかぁ」

「俺のせいかよ!?」

「まぁまぁ皆さん。反省は戦いの後でお願いします」

「…だな。いくぞリリの父親ァ!」

「我も参加しよう。我の魔力を奪われるのは不快だからな」

「スフィルクスさん!」


 後ろからスフィルクスさんもやってきた。これで5対1だ。


『空中で静観していた圧倒的なオーラを纏っていた魔物もついに参戦した!テオフレール選手の隠された能力も明らかにされましたが、依然として厳しい戦いが続きます!』

「ぐぉおおおおお」

「イケます!このまま押し切りましょう!」


 ルル様の号令で更に攻撃の手を増やしていくチーム・ルルだが…


 あと一息のはずなのに…王様は倒れない。

 そして徐々に…徐々に私たちは疲弊していく。


 本来ならばそれぞれが回復手段を持っているのだ。だがそれは魔法が使える前提。


 私も回復魔法が使えないから回復薬を用意していた。

 しかしそれはケガを治すものであり、疲労を回復させる効果はない。王様の【ガルバテイン】の力を見誤っていた…!




 そして5対1の圧倒的な優位は次第に崩れていく。

 まずコルナさんとコリナさんの自慢のスピードに陰りが見えてきて、次いでミツキさん、コロさんの顔に疲労が浮かんできた。


「ハァ…ハァ…ここまで苦戦するとはねぇ」

「はぁ…しんどい」

「コロさん…息が上がってますよぉ?ハァ…ハァ…」

「てめえもなミツキぃ…」

「よもやここまでの男とは…」

「どうした?そんなものか…?まだまだ私は戦えるぞ」

「チッ…ホントに人間かよ」


 取り囲んでいる私たちは肩で息をしているのに対して、王様は仁王立ちで斧を油断なく構えている。


 まさかこんな展開になろうとは…

 更に王様が追撃をかけてくる。


「こんなこともできるぞ」

「あ?まだなんかあんのかよ」


 王様が斧を地面に突き立てる。

 そしてその斧を中心に…!


「何か来ます!?」

「我に掴まれ!」

「うおおおお!?!?」

「【魔力開放マナリリース】」

「きゃああああ!!!」

『王様の必殺技が炸裂ー!あれは一体なんでしょう!?』

『恐らく…テオフレール選手がこの戦闘中にガルバテインで吸収した魔力を解放したうお。ルル・クロネペアの魔力量の多さがそのまま攻撃力に直結しているうお』

『相手の魔力を使用者の力にするだけではなく、攻撃にも使えると!?なんと恐ろしい技なのでしょうか!しかもかなりの広範囲攻撃にして高威力!ルルちゃんたちは無事なのか!?』

『うっちー。上を見るうお』

『上!?…おお!?スフィルクスの足に九尾が掴まり、その九尾の尻尾に竜の2人組がぶら下がっているぞ!!』

「全員無事…ですか?」

「なんとか」


 スフィルクスさんの素早い判断のおかげで九死に一生を得た。

 ただ王様の攻撃範囲が広かったからかなりの上空に私たちはいる。そして私とルル様は必死にコルナさん達にしがみついているものの命綱なんてものはなく、得意の魔法も使えないので落ちたら本当に何もできずに地面に真っ逆さまだ。


 その恐怖は相当なもので…


「ぎゃあああ!!ぎゃあああ!!」

「コラ!ルル暴れるでない!落っこちるじゃろ!」

「手汗!手汗がああああ!」

「スフィルクスよ!はよう地上に降りてくりゃれ!これルル!下を見るでない!」

「クロさーーん!たーすーけーてー!!」

「…わっちに乗ってるのがクロネでよかった」

「あはは。私も怖いんですけどね」


 ルル様を見ているとこんな状況でもなぜか落ち着く。


『まぁ待て。このまま無策で彼奴の前に降りても先程の二の舞になるだけだ』

「そう…ですね」

「みゃああああ!!みゃああああ!!」

「…ルルを寝かせる催眠魔法は…使えないんじゃったか」

「おいルル!テメエが暴れるせえで揺れるからやめろ!俺まで落ちるじゃねえか!」

「…早く作戦を考えましょう」


 ルル様が万が一落っこちたら大変だ。


 だけどあの王様を倒す方法なんてあるのだろうか?こっちはどんどん弱体化していくのにあっちはどんどん強化されていくなんて勝ち目がないじゃないか。


 正攻法じゃさっきみたいにやられてしまう。だから奇策を考えないと…




 魔法は【ガルバテイン】の領域内では使えないし…そうだ。せっかく飛んでいるのだから領域外に出られるのではなかろうか?


 更に上空を見上げると、【ガルバテイン】の天井が見える。案外近くだ。


「スフィルクスさん。【ガルバテイン】の領域の外まで上昇できますか?」

『可能だが…果たして耐えられるかな?』

「え?それはどういう…」

「ぎゃああああ!!にゃああああ!!にょわあああああ!!」

「…ああ。なるほど」


 絶賛パニック中のルル様がここよりさらに上空に行くことに耐えられないだろうってことか。


「ルル様!これからルル様にしか出来ない事をやってもらいたいんですが!!そのためにもちょっと落ち着いてください!」

「わ、私にしかできないことですかー!?滅茶苦茶怖くてそれどころじゃないにょですけど!」

「落ちてもスフィルクスさんがなんとかしてくれますよ!」

「いえそういう問題じゃないです!もう心臓がギュってなって足首がピーンなんです!」

「言いたいことはわかりますが…時間が無いので説明しますよ!」

「できないことはできないって私はキチンと言うタイプですよ!」


 謎の主張をしているルル様に構わず作戦を説明する。それを全員が聞き…


「それってズルくねえか?」

「これくらいしないと勝てない相手です」

『我は構わん』

「私も大丈夫ですぅ」

「まぁ…勝てんならいいけどよ」

「ルル様は?」

「うぅ…ちょっと慣れてきました…なんとかできそうです」

「ありがとうございます。それでは皆さんもう少しです。頑張りましょう」


 打倒王様の一回こっきりの奇襲作戦。必ず成功させる。


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