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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
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魔法無効とか…むーりぃー…

 王位決定戦予選の翌日。

 私はルル様の自室で膝枕をしてもらいながら…不貞腐れていた。


「魔法無効化って卑怯じゃないですか?私への当てつけですか?」

「あははー」

「もう降参するしかないじゃないですか」

「諦めちゃだめですよぅ」

「だって私から魔法を取ったらもう何も残らないですよ。ルル様のテイム…召喚魔法だって魔法の一種ですよね?」

「召喚”魔法”ですからねー」

「もうただのか弱い少女2人じゃないですか。女の子2人がかりでゴリゴリマッチョに勝てると思いますか?」

「私とクロさんだと…返り討ちにされること請け合いですねー」

「はー…萎える~。むふー…」

「くすぐったいですよクロさ~ん」


 ルル様の太ももと太ももの間に顔を埋める。はぁ…天国。

 もうどれくらいこうしているだろうか。すっかり王位決定戦のモチベーションが下がってしまったのでずっとダラダラしている。


 だって何度考えても勝てる気がしないからだ。それほど私と魔法は戦闘で切っても切り離せない。


 平和な現代っ子の私がこの世界で何とかやっていけているのは魔法の力のおかげだ。

 魔法が使えないのなら、初めて人間国を出た時に出会ったゴブリンに殺されていただろう。


「私とルル様2人掛かりでも絶対ゴブリンに勝てないですよね」

「ゴブリンさんを舐めちゃだめですよ!力も結構あるんですから!」

「そうなんですか…魔法使って倒していたのでそんなことも知りませんでした…」

「今日のクロさんめんどくさい!!」


 ネガティブが止まらない。でも流石に丸一日愚痴をルル様に聞いてもらったおかげで気持ちは少し楽になってきた。


 名残惜しいけどルル様の膝枕から起き上がる。


「ルル様。膝枕ごちそうさまでした。ずっと部屋にいると気が滅入ってしまうのでお昼ご飯でも食べに行きましょう」

「いいんですけど…足が痺れたのでちょっと休憩させてください~」

「それは…気づかなくて申し訳ありません。では交代しましょう。私の膝の上に頭を乗せてください」

「ええ!?恥ずかしいです!!」

「まぁまぁそう言わずに」


 正座して膝の上をポンポンと叩く。

 ルル様は顔を赤らめながらもおずおずと寝転がる。

 仰向けの態勢なのでルル様と目が合うのだが…なぜかルル様はおろおろとして首をせわしなく動かしている。


「うわー…あわわわわ…」

「さっきまでと立場が逆になっただけなのに、どうしてそんなに慌てているんですか?そもそも、以前も膝枕したことありますよね?」

「そうなんですけど…!なんだか自分の部屋でこういうことをするのが恥ずかしいと言いますか…!わかりますか!?この気持ち!!」

「う~ん…ちょっとわからないですね」


 私は自分の部屋に人を招いた経験が無いからね。

 でも挙動不審なルル様を見下ろすのはなんだか興奮する。それはわかる。


「足は大丈夫ですか?なでなで」

「なんとですね!この姿勢から足を1ミリでも動かしたらぎょわってなるでしょう!」

「えい」

「ぎょわあああああああ!!…悪魔ですか!?ぎょわってなるって予告したのに!」


 ルル様が床をごろごろ転がってから涙目で抗議してくる。


「ぎょわって擬音を人生で聞いたことが無かったので好奇心を抑えることができませんでした」

「悪びれない!この人全く悪びれません!」

「でもたくさん動いたのでもう痺れは取れたでしょう?」

「…本当です!」

「あのままじっとしていたらまだ暫く痺れたままでしたよ」

「そうなんですか!?それは…ありがとうございます!」


 相変わらず喜怒哀楽が激しいなぁ。

 ルル様が元気になったのでご飯を食べに部屋を出る。


「クロさんは何が食べたいですか?」

「そうですね…しばらく何も食べていなかったので…がっつり食べたいですね」

「じゃあ肉ね!肉を食べましょ!」

「あ。リリちゃん!トトちゃんも!」

「やっと部屋から出てきたのね!あたしたちも今からご飯食べに行くところだったから、一緒に行ってあげる!」

「お供しますぞ」


 廊下を歩いていると偶然リリたちと鉢合わせた。そのままいつもの4人で街まで出掛ける。


「…やっぱりリリちゃんが一緒だと注目されますねー」

「ま、それは当然だけど…お姉ちゃんに注目している人も増えたわよ」

「ふえ!?」

「本当ですよ。ルル様」


 ちらほらとルル様の単語を耳にする。それも悪口ではなく、王位決定戦の予選についての話題だ。


 召喚魔法は珍しく、しかも高レベルな魔物と言うこともあり話題性は十分だった。

 だから能が無いと噂されていたルル様の評判も実は嘘だったのではないかと言う声も聞こえてくる。


 そして更に嬉しいことに…ルル様の召喚した九尾のコルナさんとコリナさんは子ども受けが良かった。


 今もルル様を見かけた子どもが笑顔で近寄ってくる。


「あ!ルル様だー!」

「え?私ですか!?あの子は私に駆け寄ってきているんですか!?」

「そうですよ。もっと堂々としてください」

「ルル様ー!」

「な、何用でござるか…?」

「トトちゃんみたいになってますよ…」


 子どもに話しかけられたことがなかったのだろう。ルル様が挙動不審になっている。


「えとえと…どうすればいいのでしょうか!?」

「しゃがんで、子どもの目線で話してみるといいそうですよ」

「わかりました!」


 ルル様が近寄ってきた子供に対応する。


「わ、私に何か用ですか?」

「あのね!狐さんが見たいの!」

「コルナさん達のことですか?えとえと、ちょっとここは人が多いので難しいかな~?」

「どうして!?見たいー!」

「ええ…」

「見たい見たいーーー!!」

「どどどどうすれば…!?!?」


 確かにここは人通りが多いからコルナさん達を召喚すると迷惑がる人もいるだろう。

 だけどここはルル様の好感度アップのチャンスだ。出来れば子どもの願いを叶えてあげたい。


「ルル様。少し脇道に移動して召喚してあげてはどうですか?」

「やるんですか!?」

「お願いルル様ー!!」

「…わかりました。ちょっとコルナさん達に聞いてみますね」


 そう言ってルル様は目を瞑り、両手の人差し指をこめかみに当て何やら送信している。

 きっとコルナさんに子どもと遊んでもらえるよう交渉しているのだろう。以前ルル様から契約した相手とは離れていてもお話しすることができると聞いたことがある。これは余談だけど、よく水龍神の娘であるミツキさんと長話をしているようだ。


「…大丈夫みたいです」

「やった!!」

「あっちの人がいないところに行きましょう」

「うん!」


 ルル様と子どもが手を繋いで移動する。それを遠巻きに見ていた子ども達も動き出した。

 そしてルル様が召喚魔法を使いコルナさんとコリナさんを呼び出す。


 召喚されたお二方は既に事情は知っている様子で子ども達と、そして街並みを見て頷いている。


「人間の国を眺めるのも久しぶりじゃな」

「大して変わってない」

「うわぁ!本物だ!触ってもいい?」

「いいぞ。人間の子どもを見るのは久し振りじゃ」

「…もふもふ!もふもふだぁ!」

「お、俺も触りたい!」

「私も!」


 危険がないことを察した子ども達がコルナさんとコリナさんに群がる。

 一躍大人気だ。リリも触りたいのかそわそわしている。


「な、なによ?そんなにもふもふなの?ちょっと気になるわね…」

「リリも触りに行けば?」

「ダメよ。あたしは大人だからちっちゃい子に混ざるわけにはいかないわ」

「…コリナさんに私も何度かもふもふさせてもらったけど、超気持ちいいんだよね」

「………」

「この世のものとは思えないくらいにフワフワで」

「…トト?あんた触りたいわよね?ね?」

「…そうですなぁ。一度体験してみたいですぞ」

「そうでしょ!しょうがないからご主人様の私も付いて行ってあげる!ほら行くわよ!」

「はいですぞ」


 リリとトトちゃんも子ども達に混ざって毛並みを堪能し始めた。すごく幸せそうな顔をしている。




 それからしばらく経ち…


「もういいか?流石に疲れたぞ…」

「毛がぐしゃぐしゃ…手入れしないと」

「ありがとうございました!」

「うむ。ではな」

「ばいばい」


 子ども達にもみくちゃにされたコルナさん達が帰っていく。

 すっかり満足した子ども達が笑顔でルル様にお礼を言ってくれる。


「ありがとうルル様!楽しかった!」

「「「「「ありがとう!」」」」」

「あはは。いえいえ」

「またね!」

「はい。さようならー!」


 子連れの親もルル様に御辞儀をしている。

 …そんな国を出る前では到底あり得なかった光景を見て、思う。


 これは王位決定戦でルル様が頑張ったからだ。

 これでもし王様に勝つことがあれば…もっとルル様は国の民から認められる存在になるだろう。


 正直なところ私は試合開始と同時にリタイアしようと思っていた。だって勝ち目がないし、無意味だと思ったから。


 でももっとルル様が多くの人に認められて、楽しく過ごすルル様を見たい。だから例え負ける確率が高かったとしても…王様に立ち向かってみようかな…


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