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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
67/88

王の実力 &本選一回戦の相手は…?

 予選ブロックも残すところあと一つ。次はこの国の王が出場する。


 実は私はこの王様が嫌いだったりする。

 理由はルル様とこの国を出ていく直前、ルル様をいないもの扱いしていたからだ。実の父親があんな態度を取るなんて…まだ信じられない。


 そんなルル様の父親は、闘技場の中央で堂々と開始の合図を待っている。


『予選ブロック最終戦。絶対王者・テオフレール・ランペルジュ選手!その優勝オッズは驚異の1,1倍!今回も当然のように優勝してしまうのか!それとも誰かがこの王を止めることが出来るのか!?まもなく予選開始です!』


 会場も王様が勝つことが当然だと思っているようだ。誰も今までの予選の時のように、誰が勝ち上がるかという予想を話してはいない。話している内容は既に本選の話題にシフトしていた。


 隣で大量の串焼きを頬張っているリリにも尋ねてみる。


「リリも王様が勝つと思っているの?」

「ほほへ」

「そんなに強い?」

「ごくん…ええ。これまでの予選を見る限りだと…父様に勝てるのはあたしくらいじゃないかしら」

「え?それホント?」

「うん。もぐもぐ…これ美味しいわね!トト。追加の串焼きを用意してちょうだい」

「わかりましたぞ」


 どんだけー。


「そうだルル様。お父さんが苦手なら見なくてもいいですよ」

「苦手というか…お話したことが無いので親戚のおじさんのような感じなんですよ」

「あー…」

「だから大丈夫です!」


 なんていい子なのだろう。普通こんな純粋な子に育ちませんよ?

 顎をなでなですると、目を細めて気持ち良さそうにするところなんて愛らしすぎますよ。


「ごろごろ~」

「ふにゃーん…」

「よーしよしよしよし」

「ふわーん」

「何やってるの…もう始まるわよ」


 猫ルル様と戯れていたら試合が始まっていた。


 王様が背負っていた大斧で地面を叩く。すると透明な…闘技場全体を包み込むドーム状の膜が出現した。


「【ガルバテイン】!」

『出ましたテオフレール選手のガルバテイン!魚ちゃん解説よろしく!』

『あのドームの中では全ての魔法が無効化されるうお。だからドーム内では己の実力のみが勝負を決めるうお』

「え…魚ちゃんがとんでもない解説をしているんだけど」

「魚ちゃんの言う通りよ。つまりお父様はクロネの天敵ね」


 リリがドンマイ!と肩を叩いてくる。


 ちょっと待って…ドーム内では魔法を使えない?そんなデタラメな力があっていいの?

 だけどそれを証明するかのように闘技場では誰も魔法を使わずに、肉弾戦が繰り広げられている。




 そんな異様な光景を見ていると、何故この国では魔法が軽視されているのかに思い至る。この国で最強を名乗りたいのなら、魔法を使うという選択肢はないからだ。王の前では何の意味も持たなくなってしまうから。


 そして仮に他国と戦うことになったとき、王様があの魔法無効化を使用した場合の有用な人材は…魔法に頼らないゴリゴリのマッチョだけなのだ。私の結界も、水魔法も風魔法も…何もかもが無用の長物と化す。




 そんな胃が痛くなるような想像をしている間にも、王様が次々と参加者を圧倒的な近接戦で倒していく。斧を一振りすれば数人が吹き飛び、後ろからの不意打ちもまるでダメージが無いかのように無視。


 攻撃力・防御力ともに群を抜いている。


 乱戦になっていた参加者も王様をどうにか打倒するために次第に徒党を組んでいく。

 そしてちらほらと連携も見られるようになっていくが…


 そんなものは無駄だとばかりに王様は1人で薙ぎ払っていく。




 ん…?1人で?


「王様ってペアを組んでいないのかな?」

「ああ…そういえばクロネって王位決定戦を見るのは今回が初めてなんだっけ」

「うん」

「お父様はずっと1人で参加しているわよ」

「それアリなんだ」


 ペアでの出場だけだと思い込んでいたけど違ったらしい。でもソロでの参加だと必然的に1対2になって不利になる。普通はしないのだろう。


「お母様が生きていれば一緒に出ていたのかもね」

「え…それって…」

「お母様はあたしを産んでから死んじゃったの。だからどんな人だったのかもわからないけれど、もしかしたら昔はお母様と一緒に出場していたのかもね」

「そうなんだ…」

「強かったのかはわからないけど。あたしはお母様の顔すら覚えていないし…お姉ちゃんは?」

「私も…覚えていないですね」


 ルル様とリリの母親はリリを産んですぐに亡くなってしまったらしく、それ以来ランペルジュ家で母親の話題を出すことはダメだという暗黙の了解があったようだ。


 だから2人とも母親がどんな人物だったのかはわからない様子。昔リリが母親についてギギ王子やネネ王女にも聞いたらしいけど、2人も覚えていないと答えたらしい。だから母親について詳しく知っているのは王様だけということになる。


「お父様にも聞いたんだけど、はぐらかされちゃったのよね」

「リリはぐいぐい聞きすぎなんだよ。もうちょっとそれとなーく会話の流れを見極めながら話を進めないと」

「そんな面倒くさいことをいちいち考えたくないわ!」


 リリはもう少し空気の読める女の子になってほしい。もし女王になったら苦労しそうだ。




 さて。そんなやり取りをしている間に闘技場ではほぼほぼ決着がついていた。もちろん王様の圧勝だ。


『やはり今年も強いテオフレール選手!最後の1組も撃破し予選突破だー!』

『これで予選ブロック全日程が終了したうお。お疲れ様うお。本選は明日からの予定だったうおが、闘技場の修復の関係で3日後開催になったうお。ご了承してくださいうお』

『ですが今日のうちに本選トーナメントの戦う順番をくじで決めるので、本選出場者は1時間後に闘技場へ集合してくださーい!』


 本選は3日後か。確かに闘技場は予選で使われた大技とかでボロボロだ。応急処置をしつつここまでやっていたけどこの3日で本格的に修復するのだろう。


 あと本選の戦う順番ってくじで決めるんだ…なんかしょぼい。

 ともあれこのくじ引きは大事だ。魔法を使えなくされる王様とは絶対に当たりたくないし、リリや新くんとも戦いたくはない。



 ちなみに本選のトーナメントは32組で行われる(本来ならA~Sブロック…つまり20ブロックあり、各ブロックで2組ずつ勝ち上がりなので最大40組出場できるのだが、1ブロックで1組だけの勝ち上がりが多かったために32組しか出場権を得られなかった)。


 またトーナメントは左側(1番~16番)と右側(17番~32番)に別れ、左右の勝者同士で決勝戦が行われる。


 だから仮に私達のくじが1番でリリ達が17番だった場合、リリと戦うのは決勝戦ということになる。


 そしてくじの1番と2番が1回戦の相手、3番と4番が一回戦の相手…と決められていくので、数字が離れていればいるほど戦うのが後になる。



 私の目的はルル様に活躍してもらい、ルル様の国での評判をよくすることだから、なるべく弱い相手と当たりたい。


 つまり何が言いたいのかというと…このくじ引きは重要なのだ。運の悪いルル様には任せられない。


「ルル様。くじは私が引いてもいいですか?」

「私もくじやってみたいです!」

「でもルル様って運悪いですよね?」

「くじは引いたことが無いので、運が悪いかはわからないですよ!」


 …どうしてルル様は自分に運が無いことを頑なに認めないのだろうか?謎だ。

 妙にやる気だから任せてもいい…のかな?


 もし私が引いてルル様にとって不利な対戦相手を引いたら申し訳ないし…いいか。


「わかりました。よろしくお願いします」

「任されました!」




 ~そして1時間後~




「予選を勝ち抜いてきた人達だけあって迫力ありますね~」

「ふふん。優勝はあたしのものよ!」

「リリ殿。周りに喧嘩を売らないでくださいですぞ」


 闘技場には本選に出場する32組が勢揃いしていた。リザードマンに竜騎兵、ネクロマンサーにロボットと予選を勝ち抜いただけあって強そうな人…人?がたくさんいる。


 その中でもランペルジュ家はやはり一目置かれているようだ。なんとルル様も結構注目されている。本人は気付いていないが。


 そして四角い箱を持ったうっちーと魚ちゃんさんが闘技場に現れる。


『皆さん!これより本選のくじ引きをしたいと思いまーす!Aブロックの勝者から順番にくじを引いてください!玉に番号が書かれているので、引き終わった選手は数字を魚ちゃんに教えてくださいね!』

「Aブロックから!?あたしからじゃない!」


 リリが嬉しそうに前に出る。同時にAブロック勝者であるネネもツインテールを揺らしながらうっちーの前まで悠々と歩いていく。


「リリ?本選で当たったら、次こそ私の矢で貫いてあげるわ」

「ふふ。楽しみにしているわ。ネネ姉様」


 リリとネネが箱から玉を取り出す。

 それを魚ちゃんさんが確認して、トーナメント表に名前を書き込んでいく。


『リリ・トトペアは18番!ネネ・ルーペアは32番でした!それではBブロックの勝者は前に出てきてください!』


 リリペアとネネペアは右側のトーナメントか。もし2人が戦うなら準決勝の舞台となる。

 そしてBブロックの選手が引き終わり、Cブロックのギギの出番になる。


「む…」

『25番うおね』

『ギギ・エリンペアは25番!つまり準々決勝で兄妹対決が実現してしまうかもしれません!!』

「ネネとルー…か。久しぶりにルーに稽古をつけてやるのも悪くないな」


 ギギペアも右トーナメントか。戦いたくない相手でどんどん右側が埋まっていく。

 つまり、私たちが1番~16番を引き当てることが出来れば、決勝戦まで彼らと戦わなくてもいいことになる。


 そして私たちの番がやってくる。


『それではEブロックの勝者の方。前にどうぞー』

「はいはい!クロさん!頑張りますね!ふんす」

「ルル様。1番~16番ですよ。絶対その間のどれかを引いてください」

「わかりました!」


 ルル様が手を上げながらうっちーに近づく。信号渡るときの偉い小学生か。


 ルル様の運の悪さには定評があるからなー…17番だけは引いてほしくない。17番は1回戦がリリペア。準決勝もギギペアかネネペアに当たるという地獄のような位置だからだ。


 神様!ルル様に加護を!

 魚ちゃんがルル様の引いた番号を読み上げる。


『2番うおね』

『初めて左側が埋まりましたー!では次、Fブロックの勝者、前へどうぞー』

「やった!やりましたよクロさん!」

「ルル様!天使ですか!」


 2番…つまり左側のトーナメントだ!これでリリとはしばらく戦わなくていい!

 走って戻ってきたルル様をそのまま抱きしめてくるくると2人で回る。


「あはは」

「うふふ」

「恥ずかしいからやめてよね」


 リリに白い目で見られたのでルル様を地面に降ろす。

 まさかルル様にくじ運があるなんて…疑ってごめんなさいルル様。


「ルル様にも得意なことがあるのですね」

「そうですよ!どんなにダメダメな人でも1つくらい取り柄があるものです!」

「くじ引きが唯一の取り柄ってかわいそうですけどね」

「上げて落とす!クロさんの悪いところ!」

「あはは。ごめんなさい」

「えへへ。許しますー」


 いやー。これで安心して本選までの3日間を過ごすことができそうだ。


 あとは1回戦の相手…つまり1番を引いた人を確認して気持ちよく帰ろう。




 しかしその後も次々と参加者がくじを引いていくが、1番を引き当てる人がなかなか現れない。

 …ちょっとコレまずいのでは?


『Rブロックの勝者の方は前へどうぞ』

「ここで1番を引いてもらわないとマズイことになります」

「へ?そうなんですか?」

「はい」


 ここまででまだ出ていない番号は1番、11番、14番、17番、31番。

 1番は私たちの1回戦の相手、17番はリリたちの相手となる。


 そしてもし、このRブロックの2ペアが1番を引かなかった場合…残っているSブロックとTブロックには新くんペアと王様が控えているのだ。


 そのことをルル様に説明すると、ルル様も状況の悪さに顔を青くしている。


「1番…1番…1番…」

「あわわわわわ…」

『14番と31番うおね』

「「ぎゃあああああ!!!」」

『ん?悲鳴が聞こえたけど…お次はSブロックの勝者の方前へー』

「ボクの番か」


 ルル様と抱き合いながら悲鳴を上げる。これホントにヤバい!

 1番じゃなかった!もうあとはSブロック勝者の新くんペアと、幸運ペア、王様しか残ってない!


 まず新くんが引きに行く。残っているのは1番、11番、17番だ。


「ドキドキ」

「もう新くんが1番でも最悪いい!王様とだけは当たりたくない!」


 魔法を無効化してくる王様にはどうやったって勝てないからまだ新くんと戦ったほうがマシだ。


 しかし無情にも…


『11番うおね』

「「oh…」」


 これで王様と戦う確率が50%になってしまった…

 続いてハピオがくじを引く。


「残っているのは、私たちの相手かリリたちの相手か…」


 まさに天国と地獄。リリは王様にも勝てるって豪語してたし、リリと王様が戦ってくれればWIN-WINなのに!(意味不明)


 ハピオの玉を魚ちゃんさんが確認する。お願いします!1番であって!!


『17番うおね』

「「いやあああああああああああああああああああああああ!!」」

『ではもう決まっていますが、王様も引いてください』

「…」

『はい。1番うお』

『さぁ!トーナメント表が完成しました!本選は3日後で、第一試合はルル・クロネペアと王様の対決からスタートします!皆様の実力を存分に発揮してください!』

『今日はこれで解散うお』

「終わった…」

「お父様と…」


 本選1回戦の相手は魔法を無効化する王様が相手に決まった。

 ルル様…やっぱりくじ運ない!!


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