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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
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波乱のSブロック! 四つ巴の攻防

 王位決定戦の予選ブロック最終日。

 Sブロックには新くん。Tブロックには王様が出場する。新くんは私と戦ってから何やら強くなったようだし、王様は特別な強さがあるらしい。昨日うっちーたちが王様についての情報を渋っていた原因がもう少しでわかる。


『さぁ!残す予選もあと2つ!本選への出場者も出揃ってきました!』

『残るS、Tブロックも注目すべき選手がたくさんいるうお。要チェックうお』

「アラタくんって北の街でピーチボールを一緒にした女の子の格好をしている男の子ですよね?」

「世間では男の娘と呼ばれているそうですよルル様。あとピーチボールじゃなくてビーチボールです」

「そうなんですねー」


 ルル様が観客席でポップコーンのようなお菓子を幸せそうに食べてながら呑気に頷いている。


 その新くんはSブロックの中でも孤立していた。原因はたぶん…おじいちゃんのせいだと思う。とんがり帽子に黒のローブでいかにも魔法使いですと言わんばかりの服装に、他の参加者は殺気を振りまいている。


 そのことに関して新くんが苦言を呈しているようだ。聴覚を魔法で強化して会話を聞いてみる。




「じいさんさぁ。だからその魔法使いの格好で来ないほうがいいんじゃない?ってあれほど言ったのにどうしてその格好なわけ?」

「だってしばらく着てなかったんじゃもん!それに昨日の大会を見る限りかなり魔法が活躍しておったぞ?じゃから大丈夫かなって」

「そう簡単に人の意識は変わらないさ。それこそこの大会で魔法使いが優勝でもしない限りね」

「魔法使いが嫌いな国の王位決定戦で魔法使いが優勝するのか!それは痛快じゃのう」

「ボクも身体強化の魔法使うしさ。そろそろこの国にも魔法の有用性を知らしめようよ」

「じゃな」


 …会う度におじいちゃんが可愛く見えるのは気のせいなのだろうか?

 ともあれ、あの二人は大丈夫そうだ。


「クロさんクロさん!やっぱりクロさんは新くんに勝ってほしいのですか?」

「いえ。負けてほしいですね」

「ふぁ!?」

「私はなぜか新くんに目の敵にされているので…出来れば関わり合いたくないです」

「異世界人同士仲良く出来れば一番ですね~」

「そうですね。あまり戦いたくはないです」


 新くんは異世界人最強を決めると言って突っ掛かってくるけど、私はそんなことどうでもいい。そんな称号は新くんに譲って私はルル様と魔法に没頭したいのだ。


 だからできれば新くんにはここで敗退してもらって接点を減らしたい。それに昨日聞いたうっちーの情報ではsブロックは強者揃いらしいし。

 ちょうど実況をしているうっちーと魚ちゃんさんもその話題に入っていた。


『試合開始の前にSブロックの注目選手を紹介しましょう!まずはこの国では知らないものはいないであろう王国の最強の盾と最強の矛!王国騎士団第一部隊隊長と第二部隊隊長のハルハイム&ナプティスペア!』

『彼らは王国騎士団の中でも特に優秀な2人うおね。試練の逆さ塔も両名140階まで到達しているトッププレイヤーうお』

『攻守のバランスが非常に良い注目ペアだああああああ!』


 試練の逆さ塔での到達階層がこの国でのステータスに繋がるらしい(私とルル様は挑戦したことがない)。


 ギギ王子が現在最下層の160階。リリが155階。その次が紹介されたあの騎士2人組のようだ。


『お次もかなりの有名人!剣士を志す者ならまず最初に聞く名前!剣帝ローランスゥゥゥゥゥ!そしてその弟子レイナ!』

『最強の剣士と唯一人の弟子レイナ。伝説の剣技を生で見られるのは感激うお』

『さらにさらにぃ!裏の有名組織「黒手」のメンバー、ケイ&ティーペア!』

『【嫌いな人、殺します】のキャッチフレーズで有名うおね。奇襲、暗殺、毒殺なんでもありで、裏組織では珍しく堂々と中央広場に事務所を構えている組織うお。騎士団でも手を焼く強者ばかりで、噂では検挙するために押し入った自警団が誰一人帰って来なかったとか』

『子どもの体格に騙されたらダメ!彼らが王になったら国がヤバい!誰か予選で止めてくれえ!そして最後はルーキーアラタと魔法使いガンド!』

『アラタ選手は最近試練の逆さ塔でメキメキと実力をつけている期待の新星うお。パートナーのガンド選手は人間国では有名なあの【老師】うお。だから観客の皆さんはガンド選手にゴミを投げるのをやめるうお』

『注目選手の多い魔のSブロック!まもなく試合開始でーす!』


 怒涛の解説が終わり改めて闘技場を見る。

 王国の甲冑を身に着けた巨体の2人。そして剣帝と呼ばれていた若い青年と弟子の女の子。なぜか剣帝の弟子なのに鎌を持っている。

 隅でじっとしている、フードを被っていて容姿はわからないけど子どもくらいの体格の2人。


 彼らが新くんを倒してくれるかどうか…勝ち残りはこの中の2組のみだ。





 アラタ視点


 対戦相手の情報は既に調べていた。実況の女性が言っていたように注意すべきペアは3組いる。2組しか勝ち残れないこの予選。中々大変そうだ。


「じいさん。覚悟はいいね?」

「ああ。対策はある程度考えたが…多分ワシ集中的に狙われるから魔法を構築するまではそばを離れんでくれ…コラ!物を投げるなと親に教わらんかったのか!」


 じいさんが観客相手に怒鳴っている傍らで騎士ペアがこちらに向かってくる。

 注意すべき相手の一組だ。最強の盾と矛。その名に恥じない巨大な盾と剣を持った2人が話しかけてきた。


「キミが…ギギ王子が最近入れ込んでいるアラタ君だね」

「確かにギギ王子とは最近話す機会が多いですね」

「私たちもアラタ君と話しがしたいと思っていたんだ。今何階層まで到達しているんだい?」

「120階」

「早いね。リリ王女を彷彿とさせる…」

「塔についてもっと話したいところだが…続きは試合が終わってからにしようか」

「お互いの健闘を祈る。では失礼」


 騎士ペアが去っていく。見た目が巨体で強面だけど穏やかな2人だった。

 でも闘気は凄まじく、近くにいるだけで肌がびりびりした。実力は本物なのだろう。


 そして各選手の解説が終わったようで、いよいよ開幕の合図が出る。


『それではSブロック予選!試合開始ーー!!』

「【絶技・大風剣】」


 開始の合図直後。リング中央にいた剣帝から風が巻き起こり…巨大な竜巻が出現し参加者を襲う。運悪く近くにいた参加者は竜巻に飲み込まれ、離れていた参加者も竜巻をどうすることもできず不規則に動く竜巻から逃げるしかない。


『剣帝が大技を開幕ブッパしたああ!!』

『剣で竜巻を作り出したうおか?原理が謎うお』

『これは竜巻がリング外に出るまで一時休戦か?…いや!竜巻に最強の矛、ナプティス選手が立ちはだかる!』


 じいさんを抱えて竜巻から離れようとしていると、先程話しかけてきた大剣の騎士が竜巻の正面に立ち…


 裂帛の気合と共に竜巻を切り裂いた。


「喝ァッ!!」

『なんと信じられないことにナプティス選手が竜巻を一刀両断!最強の矛の面目躍如だぁ!』

「流石だな。ナプティス」

「ありがとうハルハイム…ぐ…!」

「ナプティス!」

「…」


 ナプティスが剣を振り抜き僅かに弛緩した一瞬。その一瞬に影が動いた。

 ナプティスの後ろに纏わりついたその影はすぐに離れ…ナプティスが膝をつく。背中からは血が滲み地面を汚している。


『な、何が起こったんだ~!?突如ナプティス選手が負傷!』

『恐らく…暗殺者の仕業うお』

『波乱の幕開けSブロック!一体誰が勝者となるのか!』


 竜巻を切り裂いた騎士も凄いけど、技を放った後の空白を衝いた暗殺者も油断ならない。

 竜巻を作り出した剣帝はそれら一連の流れを見て頷いている。


「成程。強者揃いだな」

「剣帝の検定には合格っすね!」

「…黙れレイナ」

「はいっす」

「…ん?貴様のその剣…魔剣か」

「!!」


 油断していそうな剣帝に不意打ちをかまそうとしたら気付かれていたらしい。普通に話しかけられた。

 仕方ないので話を合わせる。ボクの使っている剣は試練の逆さ塔で偶然手に入れたもので、どんな剣か知らずに使っていたので興味もあったし。


「…知ってるの?この剣のこと」

「なんだ。知らずに使っているのか?」

「偶然手に入れたものだから」

「教えてやろう。その剣は魔剣。魔を払い、魔物を切り裂く剣。無名のようだが…よければ俺が名をつけてやろう」


 魔を払う剣か。ボクのライバルである黒音と相性がいいんじゃないかな?

 手に持っている剣を見る。金の宝箱に入っていた、黄金の柄に美しく光る刀剣。防御力に秀でていた100階層のボス・キングシェルクラブを容易く両断できたのは魔剣の特性故だったのか…


「剣帝…この剣の名前。ボクに教えてくれ」

「いいだろう。黄金の柄のバルムンクなる魔剣あり。類似していることからバルハルクと名付けよう」

「バルハルク」

「ああ。そして魔剣を持つ少女よ。俺と手合わせしてみるか?」


 ニヤリと笑う剣帝。

 ボクは無言で剣を構え…剣帝に向き合った。


アラタ「いくぞ剣帝!」

ガンド「アラタ~!守ってくれといったじゃろう!めっちゃ襲われてるんじゃが!!聞いとんのかーーー!!」

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