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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
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ギギ第一王子の実力

『さぁ!Cブロックの試合がまもなく開始されます!魚ちゃんの注目選手は誰かなー?』

『もちろんギギ選手うお。前回の王位決定戦でも準優勝。実力は確実に今大会トップクラスうお』

『そうですねー。どのように予選を潜り抜けるかに注目したいですね!…おっと追加情報です。なんとこのCブロック。ギギ選手の部下が多数出場とのこと!これは下克上も期待できるか~!?』


 お昼ご飯を屋台で買い、客席に戻ってくるとちょうどCブロックの予選が始まるところだった。

 やはりギギ王子は人気のようで周りもギギ王子の話で持ち切りだ。


 そのギギ王子は蒼の槍を持ち、試合開始の合図を目を瞑って待っている。


「待機所では持っていなかったかっちょいい武器を持っています!」

「穂先が三つ又になっている特徴的な槍ですね」

「おっきいフォークみたいです!」


 ギギ王子は三つ又の槍を。パートナーの女性エルフは木で作られた弓を持っている。

 そしてうっちーが言っていたように、ギギ王子と同じ青の甲冑を装着している兵士が何組かいる。彼らがギギ王子の配下なのだろう。


 その兵士の内の1人がギギ王子の前まで行き、片膝をつき話しかける。


「ギギ王子。本日はよろしくお願いいたします」

「ああ。遠慮は無用だ。全力でかかってこい」

「はい。…ですが個人の技量で王子に劣っていることは日々の訓練で重々承知しております」

「…」

「ですが!私たちは勝ちたい。あなたに!どんな手段を使ってでも!」

「ほう。ではどうするのだ?」

「こうします」


 兵士が立ち上がると同時に49組…つまりギギ王子以外の全ての参加者がギギ王子ペアに向かい合うように移動する。


「全員であなたたちを倒させていただきます。悪く思わないでいただきたい」

「構わん。バトルロワイヤルで強者を排除するならその方法は有効だ」

『おっとーーー!?これはまさかの協力プレイかー!?しかもギギ選手はこれを快諾!』

『2対98人の変則バトルうおね』

『どんなにギギ選手が強くても多勢に無勢ではないのかー!?波乱必死のCブロック!バトル開始ーー!』


 開始の合図と共に98人がギギとエルフを囲み始める。


「うわぁ…後ろから叩かれたらギギお兄ちゃんでも負けちゃいそうです」

「エルフがどれくらい強いかにもよりますね」


 いくらギギ王子が強かろうと全方位から攻撃されれば無傷では済まないだろう。

 エルフの実力が高くサポートしてくれるなら…でもエルフっていいイメージがないんだよね。里長とか里長のせいで。


 エルフの里長に全裸にひん剥かれたことを思い出して嫌な気分になっていると不意に後ろから声を掛けられる。


「エリンは強いわよ」

「ですよー」

「あなた方は…」

「あら。ネネ姉様。ルー。さっきぶりね」


 私たちに声を掛けてきたのは先程リリと対戦していたネネ王女とその従者ルーだった。

 彼女たちはエルフが何者か知っているようだ。


「エリンとは…あのエルフの名ですか?」

「そうよ。彼女は私に弓を教えてくれた先生」

「ネネ王女の…」

「ちなみにルーの槍はギギ王子に教えてもらったのですよー」

「あらそうなの」

「ですです」


 つまりギギ王子はルーの槍の師匠。エリンはネネ王女の弓の師匠なのか。


 そのエリンはギギ王子と背中と背中を合わせるような位置取りをしている。あれならお互いの死角をフォローできるだろう。


「ギギ王子。半分は受け持とう」

「頼む」


 エリンが弓を構える。だけどネネ王女のように矢筒を持っていない…?

 どうするのか?と見ていると、いつの間にかエリンの手元に矢が出現した。しかも3本。


「あれ?矢はどこから現れたのでしょう?」

「エリンはエルフだけあって魔力適性が高いの。だから彼女は魔力で矢を作る。つまり彼女の矢は尽きることがないわ。しかもその射撃は正確無比。見なさい」

『おっとーー!!エリン選手の矢が同時に3本!敵を貫いたーー!』

『一度の発射で3人を射抜くとは…素晴らしい技量うお』


 エリンは最初に飛び掛かった3人の参加者を正確に射抜きリタイアさせた。

 そのまま流れるように矢を再び3本生成し射出。瞬く間に6人が脱落した。


「矢筒から矢を取り出す動作がない分、次に放つ矢の間隔が短いですね。まるで連射しているようです」

「そうね。それもエリンの強みだけど…まだまだあんなものじゃないわよ」

「他にもまだあるのですか」


 9人…12人…15人…次々と参加者が減っていく。

 倒された選手の中には矢を弾くであろう甲冑を着ている兵士も何人かいた。

 しかしエリンは甲冑を着ていてもまるで無意味だと言わんばかりに繋ぎ目を正確に狙い戦闘不能にしていく。


 そうしてついに誰もが恐怖感からかエリンの前に出られなくなってしまった。


「あら。もう終わりですか?」

「くっ…」

「お前が行けよ」

「無茶いうな…」

「中々やるなエルフの戦士!だがこの盾の前にはそんなちっぽけな矢など無意味!!がっはっは!」


 誰もがエリンに打ち抜かれることに恐怖を感じている中、大盾を持った巨人が自信満々に前に出る。


「体全身を覆える盾ですか。厄介そうですね」

「そうね。普通の弓術師なら手も足も出ないでしょう」


 エリンが今まで通り3本の矢を放つが…全て盾に弾かれる。


「がっはっは!このまま押しつぶしてやる!」

「…【緑の矢(ツリーアロー)】」

「なんだぁ?どこを狙っているぅ!」

『エリン選手!大盾のガイドギッシュ選手の周囲に矢を放ったぞ!何か意味があるのかーー!?』


 エリンが放った()()()は大盾を持っている選手の周囲の地面に刺さり、その矢が木に変化して急速に成長。そのまま大盾ごと選手を木に絡ませてしまった。


『矢が木に変わって成長しているうお!』

「な、なんだーー!?ぐおおお!!」 

「あれは…魔法の矢?」

「そうよ。エリンは様々な魔法の矢を放つことが出来るの。火矢とか雷矢とかね」

「…強いですね」


 あの速射に加えて複数同時発射。更には魔法矢まで使用してくる…とんでもない弓使いだ。


 対してギギ王子も巧みな槍捌きで着実に敵を減らしている。

 そしてエリンの相手が完全に逃げ腰になり、ギギ王子の周りも数が減ったところで…ギギ王子が槍を地面に突き立てる。


「流石だなエリン。ならば私も」

『おっとおお!?ギギ王子が何かする気だ!エリン選手がギギ王子の構えを見て空高く飛びあがる!』

「風よ!水よ!暴れ狂え…【狂嵐瀑布】!」

「皆さん!私の近くに!」


 ギギ王子の槍が光り始めた途端に天候が荒れ、闘技場のみならず会場中がまるで台風の中に入ったかのような喧騒に包まれる。私の周りは結界で守られているが会場全体に結界を張る余裕はなかったので観客は大パニックになっている。


 そんな中をうっちーが大声で観客を宥めている。


『皆さん落ち着いてくださーい!こんな嵐は海の上だと日常茶飯事ですよー!シャワーだと思ってポジティブにいきましょー!』

『それはさすがに無理があるうお…』

『さぁ大雨で闘技場がよく見えませんが、嵐が発動する前にギギ王子を中心に津波が確認できました!闘技場の参加者は何人が無事なのでしょーか!』

『段々嵐が止んできたうお』

『さぁエリン選手が地面に着地して~?…なななんと!誰もいません!全員リング外に押し流されたしまった模様~!決着です!勝者ギギ・エリンペア~!』

「「「「「おおおおおお」」」」」


 ギギ王子の大技で決着がついた。終わってみれば圧勝だったけど、あの最後の技は発動までかなり時間がかかるようだ。だから2人掛かりで近くにいた参加者をある程度排除しなければならなかったのだろう。


 ギギ王子と戦うときはあの技を発動させないように立ち回る必要がありそうだ。

 どう戦えばいいのかシミュレーションしているとネネ王女が話しかけてくる。


「流石は兄様ね…ところであなた。嵐から守ってくれてありがとう」

「いえ」

「あなたはルルのパートナーかしら?」

「はい」

「ふーん。ルル?」

「ひゃい!」


 ネネ王女が近くに来てから、ずっと借りてきた猫のように縮こまっていたルル様が突然名前を呼ばれてビクッとしている。


「あなたたちはEブロックよね」

「ひゃい!」

「…あなたは腐ってもランペルジュ家の一員なの。醜い試合だけはしないでちょうだい」

「わひゃりました!」

「ふん…行くわよルー」

「はいですよー」

「ルル様…ビビりすぎです」

「だって初めて話しかけられたんですよ~」

「そんなんじゃダメよお姉ちゃん。もっと自信持ちなさいよね!」


 まぁオドオドしているルル様も可愛いけどね。

 ともあれ私たちの試合が近づいてきたので気持ちを切り替えてもらわないと。


「ルル様。2試合後に迫ってきたので待機場に向かいましょうか」

「うぅ…胃が痛いです…隕石が落ちて闘技場が壊れて中止にならないでしょうか?」

「バカなことを言ってないで行きますよ」

「応援してるわよ!2人とも!」

「頑張ってくださいですぞー!」


 リリとトトちゃんを残して私たちは待機場に移動する。

 私も試合が近づいてきて緊張しているけど…横でルル様が笑っちゃうくらい緊張しているである程度冷静でいられている。


「あばばばばば…Dブロックの試合が永遠に続いてくれれば…」

「そうしたらずっと緊張しっぱなしになるじゃないですか。さっさと終わらせてスッキリしたほうが良くないですか?」

「そそそそうですね…」


 ルル様は手を震わせながら私の腕をがっしり掴み、キョロキョロと周囲をしきりに確認している。完全に不審者の態度である。


 そんな挙動不審さが目立ってしまったのだろう。騎士然とした男が近づいてくる。


「失礼ですか…ルル王女とお見受けいたしますが?」

「は、はひ。ルルです」

「やはり…」


 ルル様が名乗ると周囲が「あのルル王女…」とか「本当に参加するとは…」とか好き勝手なことを言ってざわめく。うざい。


「私は第八騎士団のエウリアッハと申します。私もEブロックの予選を戦わせていただきます」

「はぁ…」

「僭越ながら意見を申してもよろしいでしょうか?」

「いいですよ。あとそんなに畏まらなくても大丈夫です」

「ありがとうございます。では単刀直入に言います。ルル王女。あなたにはこの王位決定戦を辞退していただきたい」

「はい?」


 何を言い出しているんだろうかコイツは。しかもコイツ…頭下げてるけど笑っている。

 ルル様は状況が掴めない様子でどういうことかと質問している。


「どうもこうも…あなたの噂は聞いています。そしてこの目で直接あなたを見て確信しました。あなたはこの神聖な戦いに出るべきではない」

「……」

「あなたが出場することで今まで培われてきたランペルジュ家の…王の威光が失われることでしょう。城にお帰りなさい。ガラクタ王女」

「……」


 周囲から笑い声が聞こえてくる。目の前にいるエウなんちゃらも嘲笑している。

 まぁコイツと笑ってる奴等はあとで殺すとして…ルル様がどうなっているかが先決だ。


「ルル様」

「あはは。大丈夫ですクロさん。…エウリアッハさん」

「ふふ…なんだ?」

「私は確かに取り柄がありません。他の家族と比べられると見劣りしてしまうのは事実でしょう」

「そうだろう?ならば…」

「でも!私はそんな自分をこの王位決定戦で変えたくてここにいるのです。だから私は逃げ出しません。足はガクガクで手は震えてますけど…私は絶対に逃げません」

「…」

「ですからEブロックでは…お互い良い戦いになりますように」

「ふん。辞退すれば恥を掻かないものを…失礼する」


 エウなんちゃらが私たちを睨んだ後に去っていく。

 周囲からも笑い声は無くなった。


「ルル様はやればできる子ですね。よしよし」

「むぅ。バカにしないでくださーい!」

「あはは。さぁ。Dブロックの試合が終わったようです。行きましょう」

「頑張ります!」


 ルル様の手を取って闘技場へと向かう。

 ルル様の手はもう震えてはいない。


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