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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
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帰ってきたポンコツ姉妹!~それぞれの生活~

 2対2の模擬戦はドローに終わった。決着は次回に持ち越しになったけど、ルル様以外は満足いく内容だったようだ。


「むー。また私は何もできませんでした…」

「いつものことじゃないですか」

「そうね」

「ですな」

「みんなひどい!!うわーーーん!!」


 ルル様が泣きながらどこかに行ってしまう。ルル様はここ数週間召喚や騎乗の練習を頑張っていただけに全く勝負に活かせなかったことが悔しかったのだろう。

 放っておくと迷子になりかねないので追いかける。


「ルル様を追いかけるから2人はいつも通り特訓してていいよ」

「わかったわ」

「よろしくお願いしますぞ」


 ルル様の足はとんでもなく遅いから、のんびり会話をしていても余裕で追いつける。

 あ。倒れた。ルル様のもとに向かうと、うつ伏せになって微動だにしていない。


「ルル様。そんなところで倒れたままだとお洋服が汚れますよ」

「いいんです。私は汚れみたいなものですから」

「馬鹿なこと言ってないでほら。起こしますよ」


 すっかりマグロ状態になっているルル様を立たせてほこりを払う。


「ルル様。ルル様が上手いこと出来るはずないじゃないですか」

「相変わらず慰めてくれない!?」

「それよりも反省会をしっかりして、次に同じことをされても大丈夫な手を考えましょう」

「そうですね。日々反省!」

「ルル様の座右の銘にしましょう」

「嫌な座右の銘ですね!?」


 思ったよりも元気そうだ。

 ルル様と草むらに座り込んで反省会を行う。


「さっきはトトちゃんに右手を固められたから召喚できなかったんですよね?」

「そうです。腕を上げることもできませんでした」

「ふむ…」


 ルル様はいつも召喚を行うときに右手を上げる。それはこれまでの旅でみんな知っているからトトちゃんは右手を抑えにいったのだろう。


「左手で召喚はできないのですか?」

「やったことないですね」

「練習してみてください。あと…私はこんなこともできます」


 手の平に火の玉を出す。

 ルル様は何がいつもと違うのかわからないようで首を傾げている。


「火魔法ですか?」

「はい。ですが私は何も詠唱せずに魔法を発動しました」

「!!」

「私の場合は無詠唱だと威力がかなり落ちてしまいますが…召喚も練習すれば無詠唱でできるかもしれませんよ」


 私が言葉に出してから魔法を発動するのは、イメージがしやすくなるからだ。だから無詠唱だとイメージが弱いので威力も落ちる。


 けど召喚に強いも弱いもないのだ。もし無詠唱で発動できるなら出来るに越したことはない。


 早速ルル様は私の話を聞いて無詠唱召喚に挑戦しているようだ。目を瞑って手をわちゃわちゃ動かしている。ちょっと面白い。


「ぬぬぬぬ~ん…」

「…」

「ぬぬぬ~」

「…ふっ」

「笑った!今笑いましたね!?」

「笑ってません」

「嘘をつかないでください!あとコツ教えてください!」

「そうですね…心の中で強く念じることと…絶対出来ると信じること…ですかね」


 魔法はイメージだ。イメージさえ強固ならどうにでもなる。


「絶対に出来ると信じる…」

「そうです!ルル様なら出来ます!」

「私ならできる…私ならできる…?私なんかが…私ごときがぁ…うぅ…」

「ネガティブすぎです」


 まだまだ無詠唱は難しそうだ。


 ともかく今後の目標は無詠唱!ということで纏まり、そのままコルナさん達を交えて最後の特訓を日が暮れるまで行った。




 模擬戦ではコルナさん達を召喚できなかったけど、本番ではルル様の華麗な騎乗が見られることだろう。


「今日でこの練習も終わりかの。中々楽しませてもらったぞ」

「がんば」

「ありがとうございました!」

「王位決定戦でもよろしくお願いします」

「うむ。では楽しかったお礼にこれをやろう」

「これは?」


 コルナさんから葉っぱを受け取る。一見ただの葉っぱのようだけど…?


「その葉っぱをおでこにくっつけてな。頭の中で念じると…念じた人物に変身できるのじゃ!」

「お手軽」

「いいアイテムですね」


 狐ってよりは狸みたいだけど…細かいことは気にしない。

 

 条件は大体同じくらいの体格の人物であること。無機物や魔物には変化できないこと…などの制約はあるようだ。


「誰かを驚かすくらいの使い方しかできんがな」

「いえいえ。貴重なものをありがとうございます」

「じゃあね」

「さようなら~!!」


 コルナさんとコリナさんが帰っていく。

 葉っぱは二つ貰ったので、私とルル様で一つずつ貰うことにした。


「面白いアイテムですね!」

「早速使ってみましょうか」

「え?誰に変身するんですか?」

「それはもちろん…」




 集合場所に少し早めに到着した私たちは野営の準備を始める。

 そしてテントを張り終わったところでリリ達が帰ってきた。


「あら。早かったのね…って私が2人いるわ!?」

「リリ殿も影分身の術を会得したのですか!」

「そんなわけないでしょ!」


 そう。私たちはリリに変身していた。3人のリリが横に並ぶ。


「もしかして…お姉ちゃんたち…なの?」

「そうだよ~」

「ビックリした?」

「いやはや。そっくりですな~」


 見た目では区別がつかないようだ。トトちゃんは匂いで判別できるみたいだけど。


「ルル様。リリの胸はもっとぺったんこですよ」

「そうよ!あたしの体はもっとスレンダーだわ!」

「ごめんなさい!」


 どうやら完璧な変身をするには、しっかり変身する人物を想像しなくてはいけないようだ。


 それからは全員で変身大会をして盛り上がる。

 リリがルル様の姿に変身して、胸を揉みながらつぶやく。


「お姉ちゃんの体って…やっぱりかわいそうね。動くと胸が揺れてバランス崩すし、胸のせいで真下が見えないし」

「私は小さいほうがよかったです~」

「おっぱいのないルル様とか…個性ゼロじゃないですか」

「言われてみれば…お姉ちゃんと話すときおっぱいに話しかけているわ!?」

「私の存在意義おっぱいだけ!?」


 ルル様の体は…確かにおっぱいが邪魔だった。理由はリリが述べた通り。

「胸なんて大きくていいことなんかないよ~」とか言っちゃう女の子の気持ちがやっとわかった。


 その後に変身したトトちゃんの体が動きやすすぎて驚いたくらいだ。


「忍者服って結構体にフィットしてるんだね」

「衣擦れして音を立ててはいけませんからな」


 全員の体に変身したところで思ったことは…やっぱり自分の体が一番だね。






 そんな楽しい夜が明け…翌日。ついにノウキングダムが見えてきた。


「戻ってきましたな」

「早く帰って王位決定戦にエントリーしないとね!」

「うぅ…胃が痛いです」

「ルル様。私がついていますからね」


 私にとっても懐かしの国だ。なんせこの異世界に来て一番滞在していた国だから(ずっと借り家で魔法の研究してただけだけど)。


 外からでもビルがあるのが見える。

 ノウキングダムは魔法が廃れている代わりに機械が発達しているからだ。日本には及ばないけど、生活に困らないくらいには科学が発達しているのだ。




 門の前まで行くと…兵士がリリを見て慌てて門を離れる。

 そして次々と大勢の国民が飛び出してきた。


「リリ王女だ!リリ王女が帰ってきたぞ!」

「いなくなったと聞いて心配しておりました!」

「リリ王女!リリ王女!」


 凄い歓声だ。リリってこんなに人気あったのか。

 リリも満更でもない様子で手を振っている。その姿はまるで王女のようだ。

 トトちゃんはリリの後ろで周囲をしっかり警戒している。


「それに比べてルル様は人気ゼロですね」

「ぐふぅ…」

「私は目立つのが嫌いなのでルル様に仕えていて良かったと実感しています」

「嫌なフォローですね!」


 リリの周りに人だかりができているので、私とルル様はこそこそと隅っこから入国する。


 そのまま誰にも話しかけられずにお城に到着し、身分を明かすと何も言わずに通してくれる。

 そしてルル様のお部屋に戻り、2人でベッドに腰掛ける。


 ルル様は隣で足をぶらぶらさせながら手遊びしている。この部屋でのルル様の癖だ。


「変わらないですね。やっぱりこの国は」

「ですねー」

「部屋の掃除もされてないので埃まみれです」

「ですねー。埃臭いです」

「換気して一緒に掃除しましょう。ルル様」

「頑張ります!!」


 窓を開けて2人でお部屋を掃除する。

 1年ほど部屋を空けていただけあって埃まみれだ。誰も入った形跡がない。




 改めてルル様に誰も関心がないんだなとしみじみ思う。

 きっとルル様が帰ってきて関心を持つのはコックくらいだろう。それも一人前多めに作らないといけなくなるな…くらいの感想。


 でもそのことに対して私は特に思うところはない。むしろルル様を独り占めできて嬉しいくらいだ。


「…いっそずっとこのままのほうが一生ルル様を独占できるのか?」

「クロさんがヤンデレ入ってます!」

「あはは。冗談ですよ」

「冗談の目ではないのですが…」

「それにしても汚いですね。この際ですから大掃除しますか。ちょっとバケツと雑巾持ってきますね」


 ルル様には引き続き埃掃除をしてもらい、私は掃除用具を取りに部屋を出る。


 すると廊下の反対側から2人のメイドが花瓶を手に持ち歩いて来た。会話が耳に入ってくる。


「リリ様が帰ってきたみたいよ」

「あら本当!?早く挨拶に行かなくちゃ!」

「あとついでにルル様も」

「ふーん。それよりもリリ王女に取り入らないと!次期女王候補の筆頭ですもの!」

「そうね!」

「…(【ウィンド】)」

「きゃあああ!花瓶が!!」

「あんた何やってるの!?それネネ様の大事な物よ!」

「どどど、どうしましょう!?」


 ちょっとイラっとしたのでつい魔法で嫌がらせをしてしまった。

 この城ではこんな会話が日常茶飯事だ。まぁどうでもいいか。




 用具室に入って必要なものを取り出してからルル様の部屋に戻る。すると今度はリリが大勢の取り巻きを引き連れて城に入ってくるのが見える。


 リリの横には小太りな男が笑顔でリリのご機嫌を取ろうとしている。

 リリはその男を見もせずに色々申し付けているようだ。


「王位決定戦のエントリーを頼んでもいいかしら?」

「畏まりましたリリ様。それでリリ様と出場する栄えあるパートナーについてなのですが…申し込みが殺到していまして…」

「あたしのパートナーはここにいるトトよ」

「この獣人の子が?ですが試練の逆さ塔のトップクラスの猛者たちが…」

「これは決定事項よ!あんた…あたしに文句あるの?」

「いえ!!滅相もございません!!」

「あとお姉ちゃんの分もエントリーしておいて。パートナーはクロネという従者よ」

「姉君…ネネ様のことですか?それならばもうすでに…」

「ルルお姉ちゃんよ!あんたバカなの?死ぬの?」

「ひぃ!すぐにエントリーして参ります!!」

「まったく…あら?クロネじゃない」

「や。大人気だね」

「久しぶりだと面倒だわ。お姉ちゃんの部屋に遊びに行こうかしら?」

「今掃除してるから。後でおいで」

「わかったわ!じゃあね!」

「拙も後でお伺いいたしますぞ」

「うん」


 リリとトトちゃんがいなくなる。

 …きっとリリの部屋は毎日掃除入ってるだろうなぁ。


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