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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
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初体験をすれば自信がつくのでは?

 エルフの里の近くにある村に来てから2週間が経過した。

 なぜ長期間滞在しているのか…それはルル様が引きこもってしまったからだ!


 今も借りた宿のベッドで布団を被り、こちらを威嚇している。


「がるるる…」

「ルル様。そろそろお外に出ましょう」

「いやです!私はここから動きません!」

「お姉ちゃん?お家に帰りたくないからって引きこもりすぎよ」

「そうですぞ。お身体にも悪いですぞ」

「うう~!!」


 なぜこんなことになったのか…それはルル様の妹のリリがそろそろ国に帰ると宣言したからだ。ルル様はそれを聞いて渋っていたが、みんなでルル様を説得して帰る雰囲気は出していた。

 その時に帰っておけばよかったのだが…一日ベッドの上で冷静に過ごしてしまったせいで帰るのが嫌になったようだ。


 そして時間が経つごとにルル様の意志は固くなっていき、トイレ以外でベッドから離れなくなってしまった。


 結局今日も一日ルル様を外に連れ出すことが出来ずに終わってしまう。

 明日こそは何とかしなければ…ん?ルル様が服を畳んでいる。しかし洗濯したものはすでに畳み終わっているはずなのにどうしてマジックバックからわざわざ取り出しているのか?


「何をしているのですか?ルル様」

「これは明日着る服です!この服を布団の中に入れておけば、明日ほかほかで気持ち良く着ることが出来ます!」

「シワになるのでやめてください」


 無駄な知識を…ん?今度はバックから空の瓶を取り出している。

 

「それは?」

「これを使えばトイレにわざわざ行かなくて済みます!これでベッドから離れなければいけない要素はなくなります!えっへん」

「それをやってしまうと人間としてアウトです」


 ルル様の長年培われた引きこもりスキルが厄介すぎる。

 トトちゃんは頭いいですな~となぜか感心し、リリは呆れている。


「もうお姉ちゃん?いい加減にしないと。ご飯食べに行きましょ」

「大丈夫です。乾パンがあるのでお姉ちゃんのことは心配しないでください」

「えー…」

「いいんですか?私たちだけでおいしいもの食べちゃいますよ?」

「いいんです。ここが私の聖域サンクチュアリなんです!」


 このポンコツ王女め…

 とりあえずルル様は放置して3人で夕食兼作戦会議を開くことに。

 リリが骨付き肉に被りつきながら質問してくる。


「もぐもぐ…どうするの?ああなったお姉ちゃんは面倒よ」

「そうだね。家から出ないことに定評があるからね」

「いっそあたしが気絶させて運んじゃうのはどうかしら?」

「リリ殿は乱暴ですなぁ」

「私はルル様には自分の意志で帰ってもらいたいな」


 強引に国に戻しても解決にはならない。それではきっとルル様は変わることが出来ない。


「私が説得するから、2人はちょっと外で遊んでてもらえるかな?」

「しょうがないわね。それじゃコロのところに遊びに行ってくるわ。朝には帰るわね」

「うん。ありがとう」


 1対1ならルル様も心を開きやすいだろう。

 そんなわけで今夜はルル様と二人きりで過ごすことに決まった。


 食事を済ませてリリとトトちゃんと別れる。


「明日もあの調子なら強引に連れて行くわよ」

「わかった」

「頑張ってくださいクロネ殿!」


 コロ(竜人)のところに向かうと言っていたけど…コロには申し訳ないことをしたかもしれない。





「ルル様。開けますよ」

「どうぞ」


 宿に戻りルル様の様子を確認すると、相変わらず布団にくるまって顔だけ出している。


「あれ?リリちゃんとトトちゃんはどこですか?」

「2人はコロさんのところに遊びに行きました」

「そうですか…では今夜は2人ですか?」

「ですね」


 ベッドに腰かけてとりあえずルル様の布団をはぎ取る。


「ぎゃあああ!!何するんですか!!」

「ルル様。大事な話があるので布団は邪魔です」

「やっぱり国に帰る話ですかぁ?」

「そうです。どうして帰りたくないのですか?何度も言いますがルル様はテイムの力で強くなりました。もう馬鹿にされることはないと思いますが…」


 むしろキメラのスフィルクスさん、水龍神の娘のミツキさん、九尾のコルナさんとコリナさん…戦力だけで見ればこの世界でも最強の部類に入るだろう。


 それなのにルル様の顔色は晴れない。

 そして小さな声で呟く。


「…私は変わってません」

「え?」

「私自身はちっとも変わってないです。何もできない弱いまま…もしスフィルクスさんやミツキさんが敵を倒したとしても、それは私の力じゃなくて彼らの実力です。私はゴブリンやスライムにも勝てないポンコツなのですよ…」


 そう言いながらいそいそと布団を回収して被り直すルル様。


 なるほど…そんなことを考えていたのか。確かにルル様自身の身体能力は変化してない。未だに長距離を歩くとひぃひぃ言うし、ゴブリンにも当たらないのろのろパンチだし、何もないところで躓くドジっ子だ。


「確かにルル様はずっと変わらずポンコツですね」

「ぐはっ」

「でもルル様には相手を引き付ける魅力があります。だからあんなにも強いスフィルクスさんやミツキさんが力を貸してくれるのです」

「…」

「ルル様だからこそですよ。私だってルル様以外の人のために頑張ろうとは思いませんし。これはルル様の力です」

「むー」

「それでもルル様に文句を言う人がいるなら言わせておけばいいのですよ」


 ルル様の国は個人至上主義というか…チームワークよりも個々人の力を評価する傾向がある。だからテイムの力で勝ったとしても異を唱える輩はいるだろう。でも…


「誰が何と言おうとルル様の力です」

「………」


 ルル様は黙ったままだ。私の気持ちが伝わっていればいいのだけど…

 言いたいことは伝えたのでルル様の様子を窺っていると、何やらもじもじしながら私を見てくる。


「クロさんも私のその…魅力にやられて力を貸してくれるのですか?」

「え」

「…あれ?」


 なぜか見当違いのことを言い出したぞ?この子。

 でもここでふざけてしまうと本格的にルル様が心を閉ざしそうな気がしたので真剣に答える。


「そうですよ。一目ぼれでした。そしてルル様のことを知るうちにどんどん好きになりました」

「まさかの告白!?」

「好きですルル様!愛し合いましょう!!」

「ええええええええ!!??」


 ルル様の布団の中に飛び込む。

 なぜこうなってしまったのか…告白はもっとシチュエーションを大事にしたかったのに!!


 でももはや止まることはできないのでルル様に抱きつきキスする。


「ちょちょちょ!?急展開過ぎて訳が分からないのですが!?」

「ルル様は嫌ですか?」

「嫌じゃないですけど…」

「それでは私に任せてください。安心してください。私も初めてです」

「初めてでこの手際の良さは逆に怖いです~!」


 ルル様の服を手早く剥ぎ取り自分の服も脱ぎ捨てる。

 それからはルル様の体を存分に堪能し…最高の時間を過ごした。





 そして翌朝。


「うぅ…弄ばれてしまいました…」

「ルル様も楽しそうだったじゃないですか」

「怖いです…次からも拒めそうにない自分が怖いです…」


 ルル様がシーツを掴んで怯えている。そんなにめちゃくちゃした覚えはないんだけど…


「とにかく、これでルル様も自信がつきましたよね」

「どんな理論ですか!?」

「え?まだ国に帰りたくないんですか?」


 てっきり経験した人は自分に自信がつくものだとばかり思っていた。でもルル様はどうやら逆のようだった。


「むしろ自分はかなり流されやすい人間だと再認識しましたよぅ。でも…クロさんが隣にいてくれれば何とかなるような気はしました」


 顔を赤くしてそんなことを言うルル様。激カワである。


「私はいつでもルル様の隣にいます。だから国に戻って、ルル様の凄さを国民に教えてあげましょう!」

「わかりました。…ちょっとだけ頑張ってみます」


 ちょっとかよ!と思ったが前向きになってくれたようで何よりだ。

 そしてちょうどいいタイミングでリリとトトちゃんが帰ってきた。


「ただいまー。あら?お姉ちゃんいい顔つきになったじゃない!」

「クンクン…?何やら嗅いだことのない匂いが??」

「ぎゃあああああああ!!トトちゃん!ご飯食べに行きましょう!!」

「お姉ちゃんがベッドから出てきたわ!さすがねクロネ!どんな魔法を使ったのかしら?」

「いいから出ましょう!すぐ出ましょう!」


 犬人のトトちゃんが鼻をクンクンさせているのを見て騒ぎ立てるルル様。私も恥ずかしかったので3人が部屋を出て行った後に換気してから追いかけた。


リリ「コロー!遊びに来たわよー!」

コロ「げぇ!?ヤバいのが来た…」

リリ「殴り合いごっこしましょ!」

コロ「終わった…平穏な時間終わった…」

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