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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚  作者: 綿あめ真
最強はだれだ!?王位決定戦!
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王位決定戦

「で?何で俺についてくるんだよ!?」

「コロがどんな所に住んでいるのか見たいのよ」

「誰がおまえらなんかに俺の家を…」

「はぁ?」

「ひっ…まぁ減るもんじゃねえしいいけどよ…」


 私たちは竜谷で竜と戦い勝利し、その竜をコロと名付けてテイムした。

 そしてリリとルル様がコロの住んでいるところを見たいと言い出したのでコロに付いて行くことに。


 竜人のコロは長身で強面だけど、リリにビビりまくっているので不思議と怖くはない。

 あとコルナさんとコリナさんも面白そうだからと同行している。


「竜の住処を見学できるなど滅多にないからのお」

「興味あり」

「ったく。マジで来るのか…」


 心底嫌そうなコロと渓谷をしばらく歩き、青と緑の美しい景色を堪能していると洞窟が見えてきた。

 どうやらあの洞窟がコロの住処らしい。竜が入るだけあって巨大な洞窟だ。コロが何も言わずに入っていく。


「楽しみですね!」

「竜の洞窟といえば金銀財宝ですが…」

「散らかってたらお説教ね!」


 意気揚々と洞窟の中に入っていく。

 洞窟の中は暗くはなく、壁に蝋燭が立てかけてある。


 そうして洞窟の奥にある少し開けた空間に出ると…

 そこは金銀財宝ではなく、生活感溢れる人が住むような部屋だった。ベッドやタンス、テーブルまである。


 更に目を引いたのが所狭しと並んでいる人形やぬいぐるみだ。コロのイメージに合わない可愛らしいぬいぐるみを見て早速リリがいじる。


「何よコロ。意外にいい趣味しているじゃないの」

「ちっげーーよ!!それはあれだ。そこら辺の村から貢がれてんだよ!」

「またまた~」

「いやマジだから!食物がほとんどだけどそういうのも入ってんだよ!」


 コロの証言によると一定間隔で近くにある農村から貢物が洞窟の前に置かれていくらしく、稀に子どもの人形やらも貢物の中に入っているようだ。


 それらを捨てるわけにもいかないので自分の家に仕方なく置いているらしい。仕方なく。


「でもね~」

「それにしてはしっかり保存しているのね~」

「バランスよく配置しちゃってまぁ」

「竜にもモノを愛でる感情があるのじゃな」

「親近感」

「うるせええええええ!!もう帰れや!!」


 人形やぬいぐるみはタンスの上や棚の中に綺麗に並べられている。

 あと私は見逃さなかったけどベッドの中にクマの大きな人形が一緒に寝ていた。


 全員がにやにやしている中、コロはテーブルの前で顔を赤くしながら胡坐をかいている。

 そろそろかわいそうだから話題を変えよう。


「普段は人間の姿で生活しているのですか?」

「ああ。洞窟の中は竜の姿だと窮屈だからな。…家具も増えてきたし」

「全部貰い物なのかしら?」

「俺が買い物できると思うか?っはは」

「あ?」

「なんでもないです」

「ところでコロ?ご主人様が来たのにお茶の一つも出ないのかしら?」

「お前らが勝手についてきたんだろうが!?招待した覚えはねえぞ!」

「…(パキポキ)」

「ああ!最近高級茶葉を貰ったっけなぁ!?ちょっと待ってろ!」


 リリが手を鳴らすと急いでお茶の準備を始めるコロ。

 もう完全に舎弟なんだけど…


「リリ。それくらいにしてあげて」

「そうですよ。コロちゃんをイジメちゃダメです」

「ちょっとやりすぎたかもしれないわね。でもコロみたいな生意気そうな奴を見ると…どうしても屈服させたくなるのよね」


 コロの見た目はリリのS心をくすぐるらしい。

 そんなかわいそうなコロはご丁寧に全員分のお茶を用意してテーブルに並べてくれる。


「それ飲んだら帰れよ」

「次はどこに行くのですか?」

「行ったことがないのは獣人国と魔国領ですね」

「獣人国はお主等では入れぬぞ」

「そうなんですか?」

「トト以外は入国不可」


 コルナさんとコリナさんが獣人国について教えてくれる。


 そもそも獣人国はかなり昔に崩壊しており、現在は各獣人の縄張り争いの真っ最中で、とても人間が入っていけるような治安のいい場所ではないらしい。


「キャロッツが解散してからは群雄割拠じゃな」

「キャロッツ?」

「兎人のアイドルユニットだ。彼女たちが獣人を纏めていたようなものだったのだが、解散してからは殺伐としているのう」

「わっちたちも遊びに行きづらい」


 一昔前には5人組の兎人が獣人のトップだったようだ。

 でも理由はわからないけどもうずいぶんと活動を停止しているとのこと。


「となると魔国領しかないけど」

「怖いですね」

「あ。あたしとお姉ちゃんはもうそろそろ国に帰るわよ」

「「え??」」


 てっきり魔国領に行くことに決まると思っていたが、突然リリが国に帰ると言い出した。

 その言葉を聞いて固まるルル様。


「え?どうして?リリちゃん」

「だってそろそろあれが始まるじゃない」

「あれ…ですか?」

「お姉ちゃん忘れちゃったの?王位決定戦よ」

「王位決定戦」


 ルル様はピンときていないようだ。私も初耳なのでよくわからない。


「王様不在なの?リリ」

「はぁ?クロネまで何言ってるのよ」


 リリが呆れた様子で王位決定戦についての説明をし始める。




 王位決定戦とは、ルル様とリリの国で定期的に行われるらしい。期間は3年に一度。オリンピックみたいな。


 ノウキングダムでは王様が崩御したとかそんな理由では王は変わらないようで、王になる条件はその時代最強の者。だから王位決定戦には現王(ルル様の父)も参戦し、負ければ王座は奪還される。


「ちなみにお父様は30年間王の座を守っているのよ」

「それは…凄いな」


 つまり10回王位決定戦を勝ち続けていると。半端ない。


「そんなすごい人物に勝てるの?そもそもリリは王様になりたいの?」

「王様には興味ないわ!でも最強には興味あるわ!」


 3年前の決定戦にはリリがまだ幼かったこともあり参加できなかったようだ。でも今年は絶対参加したいと。


「正直お父様にも負ける気はしないのよね。一番あたしが怖いのは…クロネ!あんたよ!」

「私?」


 ビシッとリリに指をさされる。


「あたしが負けるかもって思ったのはあんたが初めて!だからあんたも王位決定戦に出なさいよね!」

「いやだよ。そもそも私王族じゃないし」

「安心なさい!これは誰でも参加できるわ!もし優勝すれば王族よ」


 どうやらこの王位決定戦は一般参加オッケーらしい。強ければ王族でなくとも資格はあると。


 更に聞いてもいないのに追加の情報をどんどん教えてくるリリ。

 まず参加方法は2人まで参加登録していいようだ。理由は王の素質の一つは優秀な配下がいることだから。王になるのは一人だけど、自分の絶対の信頼を置ける配下を一人用意してもいいとのこと。


 そして方式はトーナメント。相手が降参、もしくは戦闘不能になった時点で勝利。

 優勝=3年間王となる。


「クロネはお姉ちゃんと出なさい。あたしはトトと参加するから」

「無理ですよ~」

「そうですよ。ルル様にはまだ…早すぎます」


 ルル様は今でこそ明るいが…城にいたころは()()()()()扱いされていてずっと孤独に生きてきたのだ。国民にも評判は悪いみたいだし。


 現にリリの話を聞いてルル様は青ざめている。

 そんなルル様を見てリリは真剣な顔で話す。


「いい?お姉ちゃん。お姉ちゃんは国ではガラクタだの、いらない子だのさんざん言われているわ」

「ぐはっ…」

「でももしお姉ちゃんが王位決定戦で優勝したら?評判はひっくり返るわ!まぁ優勝はあたしだから準優勝だけど…それでもインパクトは十分よ!」


 なるほど。リリの言うことももっともだ。説明を聞く限りこのトーナメントには国中の力自慢が参加するのだろう。その中でいい成績を残せば誰もルル様を罵る権利なんてなくなる。だってあの国は力こそすべてなのだから。


 しかもペアでの参加だから私もルル様をサポートできる。




 私の最終目標はルル様と愛し合うことだが…

 ルル様の国での評判を良くすることも目標の一つだ。


 でもそれは簡単には実現しないと思っていたので、まずは旅を通じてルル様に自分に自信を持ってもらい、のんびり実現しようと思っていた。


 けどこのトーナメントに出れば…うまくいけば一発で評価が変わる。


「…アリですね」

「クロさんまで!?」

「やりましょうルル様。いつまでも自分の国に帰りたくないこの状況は嫌でしょう」

「それはそうですけど…」

「ルル様はテイムという素敵な力を手に入れたじゃないですか」

「そうよ。お姉ちゃんはもうガラクタなんかじゃないわ」

「…そうですか?」

「そうそう」

「お姉ちゃんは変わったよ」

「…じゃあちょっと考えてみます」


 ちょろい…けどすぐには納得できなかったか。急な話だったし。

 でももしルル様がやると決意するなら…私は全身全霊を持ってルル様をサポートしよう。


コロ「話に入っていけねえ…俺の家なのに…」

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