ポンコツチームの脱衣ブラックジャック!2
「さぁ三回戦だ。そろそろ決着をつけようか」
脱衣ブラックジャックは引き分けが続き、まさかの三回戦まで続いた。
そろそろ終わらせて魔力を増加してくれる魔吸石を2つ貰ってさっさと帰りたいところだ。
里長がカードを配る。
里長 「2」「?」
リリ 「A」「K」
ルル 「6」「6」
私 「A」「3」
トト 「5」「4」
リリはブラックジャックが既に確定。ルル様は相変わらずで、私とトトちゃんは将来的に良い手になりそうな手札だ。配牌よし。
「さすがはあたしね!3人とも頑張りなさい!」
「今回はルルさんからだね。どうする?」
「12点なのヒットしたいところなのですが…」
今までの流れ的にルル様は10点を引く可能性が高い。ってか引く。
でもスルーしたとしても私に10点が回ってきた場合、14点になるので二回戦のように上手くはいかない。
それならルル様が10点以下を引く可能性に賭けたほうが建設的だろう。
…いや、そもそもブラックジャックには同じ数字のカードを持っているときに別々に勝負できるルールがあったような?
「里長さん。同じ数字を引いた場合2つに分けて勝負することができますよね?」
「スプリットと呼ばれるルールだな。可能だ」
「ルル様。スプリットして別々に勝負しましょう」
「そんなことができるのですね!わかりました。やってみましょう!」
「ではカードを配るよ」
里長が2枚カードを配る。
ルル様の手は「6」「6」、「6」「5」だ。
「お姉ちゃんが2つの手でそれぞれ勝負するってことは、これで決着するってことね」
「そうでござるな」
リリとトトちゃんが言う通り5人分の勝負になるため、これまでのような引き分けはもうない。
「責任重大ですね…12点と11点ですか…両方ヒットしたいところですが…」
「ルル様。1個目をヒットすると絶対にバーストします。ルル様は運が悪いので絶対です」
「嫌な信頼感!」
「ですが、もしそうなら1個目をスタンドして、次にヒットすればブラックジャックが完成しますぞ」
そう。ルル様の悪運を逆手に取る作戦は今回も有効だ。
「どうするんだい?」
「1個目はスタンド、2個目はヒットでお願いします!」
「オーケー」
里長が「6」「5」のところにカードを一枚配る。
配られたカードは…Qだった。
つまりルル様のスプリットは1個目が12点。2個目は21点のブラックジャックだ。
あとやっぱりこの子10点引いたよ。
「…逆に私凄いですね!」
「そうですね」
もし1個目をヒットしていたらバーストしていた。おそらく2個目も悲惨な結果になっていただろう。
ともあれこれで3個中2個がブラックジャックだ。あとは私かトトちゃんのどちらかが良い手を作ることができれば勝ちは固い。
「やるなぁ。君たち」
「次は私の番ですね」
「クロさん!頑張ってください!」
私の手札は「A」「3」だ。Aは1点か11点かを選ぶことができるが、どちらを選んでも点数が足りないからヒットする。
「はいどうぞ」
「5か…」
「え~と…何点ですか?」
「19点ですね」
かなり良い点数だ。仮にAを1点と数えた場合は9点になりもう一度勝負できるが、9点から20点や21点を狙うことは難しい(最高が10点だから2回は引かないといけない)。
だからここでストップするべきだ。
「スタンドで…」
「ちょっと待ちなさい」
お願いしますとコールしようとする直前にリリから待ったをかけられる。
「クロネ!私たちは2人がブラックジャックしてるのよ!クロネも勝負してブラックジャックを決めて気持ちよく終わりましょうよ!」
「…いやいやいや。この手札でヒットするのはありえないから」
「どうして?Aが手札にあるんだからブラックジャックのチャンスが二回あるのよ?」
「どういうことですかリリちゃん?」
「まずはAを11点と数えるとするでしょ?そしたら次のカードが2でブラックジャックよ」
「うんうん」
「で、もし違うカードが出たら今度はAを1として数えてもう一回ブラックジャックを狙うの!ほら。二回チャンスがあるでしょう?」
「なるほど~」
確かにそうだけどリスクが高すぎる。それに2のカードは既に里長が1枚握っているからデッキにはあと3枚しか眠っていない。確率が低すぎる。
「やってみましょうよクロさん!」
「ルル様までそんなこと言う…」
「里長さんが引くまでに勝負を決めたほうがスッキリするじゃないですか!」
「それはそうですけどね…」
「トトと合わせれば3回は勝負できるのよ!やりましょうよ!」
ポンコツ姉妹がうるさい。
でも隣でイケるイケる言われ続けたらイケる気がしてくる不思議。
仕舞にはトトちゃんまでやってみましょうぞ!とか言い出した。
「…ああもう!じゃあヒット!」
「あはは。いいのかい?」
「いいですよもう」
これで決められるなら文句はない。頼むから2を引いて!
里長が笑いながらカードを配ってくれる。
配られたカードはJだった。
「ほらぁ!こうなるからぁ!」
「もう一回!もう一回!」
「ワンモアチャンス!」
「イケるイケる!」
「ヒットォ!!」
「はいどうぞ」
二回目のチャンスは7だった。はいバースト。
「ダメやんけ!!」
「あちゃー」
「クロネも運悪いわね」
「ドンマイですぞクロネ殿」
「なんで私が悪いみたいになってるのかなぁ!?」
乗せられた私も悪いけどさぁ。どうすんのこれ!
これで2つブラックジャックで1つ12点、1つがバースト。トトちゃんがバーストしようものならほぼほぼ負けだ。有利だった状況が五分五分になってしまった。
「頑張ってトトちゃん!」
「トト!あんたにかかってるわ!」
「拙のカードは「5」「4」で9点ですな。とりあえずヒットしますぞ」
「はいよ」
カードが配られる。これで決着がつくのかと思うとついつい緊張してしまう。
全員の視線が集中する中…開かれたカードの数字は8だった。
「8…つまり17点ですな」
17点…良くもなく悪くもない。でも実質この手札で里長と一騎打ちになるので少し心許ないか?
「難しいですね…」
「里長のカードが2なのがネックですな」
確かに里長のカードが8~10、あるいはAなら次のカードが10点の時点で負けなので勝負をかけたくなる。
でも今回は17でも勝てる可能性が十分にあるので無理に勝負しないほうがいいかもしれない。3人の意見も聞いてみたいところだ。
「リリは当然…」
「ヒット一択!」
「ルル様は?」
「私も…ヒットですね。クロさんが2回失敗したので3回連続で変なカードが来ることはないという鋭い読みです!」
「二度あることは三度あるって諺があるんですけどね。トトちゃんは?」
「拙は…ヒットですな。この手札で勝負しないのであれば、どうしてさっきクロネ殿の時に止めなかったのかという話になりますからな」
「まぁ…そうだね」
19点で勝負してるのに17点はビビるとかわけわからんものね。
「クロさんはどうですか?」
「…皆ヒットしたいでしょ?もうこうなったらやけ!やっちゃおう!」
「そうよ!攻めの姿勢は大事よ!」
「決まったのかな?」
4人で顔を見合わせて頷く。
「「「「ヒット!」」」」
「素晴らしい!勝っても負けても文句はナシだ!」
里長がゆっくりとカードを配る。
隣でルル様が生唾を飲む。テーブルの下で4人が手を握り、カードを見守る。4ならブラックジャック。5以上ならバーストだ。
「「「「「………」」」」」
ゆっくりとオープンされるカードは…7。
肩に入っていた力が抜ける。負けか…隣でルル様が手を使いながら数を数えている声だけがクリアに聞こえてくる。
「7?えとえと…18、19、20、21、22、23、24…ダメじゃないですかー!」
「さて。私の番だね。ルルさんの12点を越えれば私の勝ちだ。裏返しのカードは…8。合計は10点だからヒットしてと…4だから私の勝ちだね」
「ダメじゃないですかーーー!!!」
「さ。全員服を脱いでね。持っている替えの服も全部出してね」
「鬼ですかーーー!!!」
「文句は受け付けません。ほらほら」
里長が催促してくる。
あの手札で負けるとか…ないわー。
19点の時点でスタンドしてれば…
たらればを言ってもしょうがないけど…
リリは潔くばばっと全裸になる。あの子は露出癖があるからいいだろうけど、私たち三人は人前で裸になることになれていないので手間取ってしまう。
「うぅ…下着だけは…下着だけはーーー!!!」
「君は下着を着た状態のことを全裸だと言い張るのかい?却下だ」
「ダイエットしておけばよかったーーー!!!」
ルル様のぽっこり出たお腹が目に入る。でも自分も裸にならなくてはいけないので楽しめない。
恥ずかしいけど…ここで粘っても里長は妥協しなさそうなのでおとなしく服に手をかける。
ボタンをはずし上着を脱いでからスカートを下ろし、下着の状態になってからブラを外し里長に渡した後パンツを脱ぎ手渡す。くっ…どうしてこうなった…
大事なところだけ手で隠しリリと言い合いをしていると里長から替えの服の催促をされる。
「マジックバッグに入っているのだろう?高値で買取してあげるから全部出しなさい」
…私の持っているバッグがマジックバッグであることも見抜かれている。
しかし中身は何が入っているかまでは里長も確認する術はないはず。
何食わぬ顔で一着分だけ残して他は全て里長に渡した。
「…どうぞ」
「うむ。確かに受け取った。…結構あるな。これくらいでいいか?」
「…こんなにもらってもいいのですか?」
「ああ。楽しませてくれたお礼だ」
服と交換で手渡された小袋の中には大量の金貨が入っていた。おそらく100や200枚どころじゃないくらいの量だ。これだけで一生分の服を買えそう。
小袋を覗き込んだ3人も驚いている。
「こんなに大量の金貨見たことありません!」
「よかったわね」
「お金があっても服が無いので買い物はできませんがな」
「どうせ里でお金を使うことはあまりないからね。君たちにあげるよ。…それよりも、クロネさん?まだ服隠し持ってるよね?」
「…なんのことでしょう?」
「とぼけたって無駄さ。私が何年生きていると思っているんだい?嘘かどうか見分けるくらいわけないのさ」
「…」
「…」
「…すみません」
目を見つめられて白状してしまう。鬼か!!
「はは~。クロさんは策士さんですね~。全く気が付きませんでした!」
「嘘はいけないわよクロネ」
「これでホントに身ぐるみ剥がされたわけだけど…」
「はっはっは。服屋の店員が女性だといいね。迷いの森を抜けて西に向かうと小さな村があるからそこで服を調達するといい」
いや全裸4人組が突然村に入ってきたら恐怖しかないわ。
ホントどうしよう…
「ああそうだ。魔吸石も二個上げよう。楽しかったから」
「楽しかったなら服を返してください」
「それはそれ。服の件以外なら他にも要望は聞いてあげるよ」
「それなら…私と契約してください!」
「契約?」
ルル様がテイムの魔法について里長に説明する。
「魔物じゃなくてもいけるものなのかい?」
「契約の形ならたぶん…ミツキさんも大丈夫でしたので…」
「面白そうだからいいよ。早速しようか」
あっさり承諾してくれた里長と契約を行う。
手を合わせ魔力を流し、ルル様の手の甲に弓と矢の模様が現れてすぐに消える。
「上手くいったようです!」
「それはよかった。またいつかヒリヒリする勝負しよう」
「嫌です」
笑っている里長に魔吸石を貰い、家を出る。
全裸にバッグという奇抜すぎるファッションでコソコソとエルフに会わないように里を抜け、迷いの森も通過する。
盗賊とかはこんな気持ちなのだろうか?周り気配がないかどうか慎重に索敵しながら進む。
そんな私とは正反対で気持ち良さそうに走り回るアホ姉妹。
「風が気持ちいわねー」
「癖になりそうです!」
「変な性癖に目覚めないでくださいルル様」
「終わったらコルナ殿とコリナ殿が呼んで欲しいと言っていませんでしたかな?」
「言ってたね。ルル様!そんな恰好で走り回ってないでコルナさんとコリナさんを召喚してください!」
「わかりました!…来てください!コルナさん!コリナさん!」
ルル様が手を高々と上げ手の甲に狐の尻尾の模様が輝く。
するとコルナさんとコリナさんが召喚され、私たちを見て一歩下がる。
「待ちくたびれたぞ…ってお主たちはどうしたというのだ!?」
「…変態共」
「違うんです!話を聞いてください!」
ルル様が事情を説明する。
「なるほど。エルフは厄介な種族」
「それで西にある村に向かえばよいのか?」
「そうですね。とにかく服を入手しないと」
「仕方ない。わっちらが送ってやろう」
「ありがとうございます!」
コリナさんとコルナさんがいてくれてよかった…毛の中に隠れれば移動中誰かに目撃されることはないだろう。
とりあえず一安心だけど…早く服を着たい!!




